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【本編】5さい
27話 呪われた子リス獣人sideハビー・ラエリス
しおりを挟む隣国からの依頼がかなりややこしく、そして危険があるという事で魔導師ギルドのギルドマスターである僕も他の冒険者と共に魔獣討伐遠征に同行することとなった。
我が王国であるオルビセリア王国。
そして、その隣の国がカハム王国。
オルビセリア国とカハム国は他の国と比べて比較的大きい国で、隣に面していると言っても移動時間にかなりの日数を要する。
オルビセリア国とカハム国は王族同士の仲も良く、商工業や貿易、そして今回のような危険な討伐要請依頼も率先的に協力し助け合ってきた。
……問題は今回の依頼内容にもあった、カハム王国の隣国であるボル国に関する事だった。
この国は獣人差別が激しく、奴隷のように扱う者が多いと有名だった。
その為多くの獣人達はボル国から出て、オルビセリアやカハム国に移住するのだ。
国王も大層自分勝手で性格の悪いジジイだとか。
まぁ、そんな事はどうでもいいけど、今回の依頼がそのボル国方面で、魔獣が著しく増加した為であった。
カハム国は、魔獣を使って自分の国を滅ぼそうといているのではないかと、国民に被害が及ぶのを危惧していた。
……少々面倒ではあるが、魔獣は僕も色々と調べたい事があるし良しとするか……と苦笑を浮かべたのだった。
ーーーある程度魔獣の討伐を終えて帰還の準備をしていると、久しく会っていない友人であるカオングラニードから何やら会ってほしい獣人が居るとの連絡が来た。
あの堅物のカオンが僕に頼むくらいだから、きっと凄く面白い事なんだろうとワクワクしながら、通常よりも早いペースで書類仕事を終えると同行した冒険者たちを置いて1人、我が国へ移動魔法を唱えたのだった。
グラニード公爵家へと着き、カオンに親しげに挨拶すると、今回の詳細を聞いた。
獣人化出来ない5歳のリス獣人……そして、本来竜人しか持つ事のないブロンドの瞳を持っていて、けれど魔力は何も感じないーーーと。
……控えめに言っても面白い!!
ただそれだけを思い、僕は心を踊らせていた。
……しかし状況は僕の想像を遥に超え、小さく幼いリス獣人が持つにはあまりにも重く、不可解なものだった。
カオンの息子の肩に乗って来たリス獣人……リツちゃんの瞳は紛れもなく純粋なブロンドの珍しい瞳で、輝く綺麗なその色に僕は暫く目を離せなかった。
既に絶滅しているのか、それともまだ種族は途絶えていないのかすら分からない竜人族。
僕でさえ、会ったことは幼少期の1度だけ。それも本当にそうだったのかは不明だけど。
その時は綺麗なブロンドの瞳だけを覚えていて、後になって知ったことだった。
魔力の流れを確認しようと僕はリツちゃんに微量の魔力を流す、だがリツちゃんが苦しみ出すと同時に感じた、リツちゃんの内にある禍々しい程の呪いに僕は息を飲んだ。
……リツちゃんの身体に起こっていた現象は全てこの呪いが原因で、そしてこれ程までに強い呪いを抱えていたにも関わらず、症状が外的なもののみと言うのにも驚かされる。
普通なら死んでいてもおかしくない……寧ろそれが当たり前なのに、この子は何でもないかのようにケロリとしている。
見た目は最弱獣人の一種であるリス獣人なのに、この子は内に秘める潜在能力が異常な程高いと見れる。
こんなことは今まで生きてきた中で初めての事だ。
様々な文献を読んで、様々な場所に行き、様々な事を学んだ。
そして、全てを知り尽くした……と思っていたのは僕自身だけで、目の前にこんなにも興味をそそられるものが待っているだなんて誰が想像出来ただろうか。
もしも、リツちゃんが自身の力で呪いを解いて、魔力が解放したなら、一体どんな力を見せてくれるのだろうか……。
そう考えるとワクワクが止まらない。
見た目は小さなリスで、内に秘める力は竜の血が流れているかもしれない子供。
なかなかにアンバランスな状態の子リスに僕は笑みを浮かべながら、夢中になる予感を今から感じるのだ。
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