リス獣人の溺愛物語

天羽

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【本編】5さい

10話 お風呂

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「準備完了!じゃあリツ、ゆっくり入れるからね」


そう言って俺を持ち上げるとゆっくりと桶に入ったお湯の中へ入れ、ラディは優しくお湯を俺の身体にかけていった。


「ピピ!」
(ふぁ……あったかー……それにしてものどかわいたなぁ)


俺はお湯をじぃーっと見つめ、お湯を口の中に少しだけ含んでゴクリと飲み込む。

お湯が喉を通っていく。
カラカラの喉が少し潤うと、1口飲んだことで意識的に抑えていた喉の乾きが一気に頂点へと達し、俺は豪快に顔全体をバシャリとお湯の中につけごくごくと飲んでいく。


「わぁ!ちょ、リツ何やってるの!?」


慌てた様子で俺をお湯からあげるラディ。
口をお湯でパンパンにした、俺の間抜けな顔を見たラディは一瞬驚いた表情で固まりーーーー。


「ぷっ!はははははは!!!」


瞬間、俺の顔を見て笑ったラディにちょっとムカついて口に含んだお湯をラディにかけてやる。


「ちょ、ま、リツ!ごめん、ごめんって!」


「ピ!」
(ひとのかおみてわらうのはいけないってかあちゃんいってたぞ!)


笑いすぎて出た涙と、顔にかかったお湯を拭いながらラディは俺に話しかける。


「でも、そうだよね。少なくともあの時から何も飲んでいなかったもんね。もしかしたらそれ以前から……。
リツ、ちょっと待ってて!」


濡れた俺をタオルに包んでまた何処かえと消えたラディは今度は小さくて底の浅いカップに水を入れて戻ってきた。


「ほら、これをお飲み。冷たくて美味しいよ。気付けなくてごめんね」


そう言って俺の前に差し出す。

カップに入った水を飲むとすごく冷たくて美味しかった。
お湯を大量に飲んでいたこともあって1杯で充分足りた俺は、ラディによってもう一度お湯の中へ入り、ボディミルクのいい香りのする石鹸で洗われる。


「あ、リツは男の子なんだね!僕と一緒だ」


ラディは俺の下半身を見ながらそう呟いた。


「ピ!ピィ!!」
(かってにみるなよ!へんたいだぞ!)


俺は短い両手で秘部を隠す。


「ふはは、リツは本当に人間みたいだよね。僕の言葉が全部分かってるみたいだ」


「ピピピー」
(おれはじゅうじんだぞ!……じゅうじんかできないできそこないだけど……)


自分で言って途端に悲しくなる。
母ちゃんは自分のペースでいいって言ってくれてたけど、やっぱり俺が出来損ないだから……。


そんな事を考えていると、俺の小さくて丸い耳と尻尾が力なく垂れ下がる。


「ん?どうしたの?心配しないで、綺麗にするだけだから」


ラディは俺の頭を優しく撫でる。


「それにしても、リツのその賢さと言い珍しい瞳の色と言い、本当にただのリスなのかな?……普通の動物でそんなに綺麗な瞳見た事ないよ。人間でも見た事ないのに」


ラディが俺をわしゃわしゃと洗いながら俺の顔を覗き込む。

俺はくるりと丸まる尻尾を洗われて正直擽ったい……。


「もしかして、リツは獣人とか!」


「ピ!!」
(そう!おれじゅうじん!)


手を挙げて大きく返事をする。


「あーでも、獣人は産まれて数ヶ月のうちに獣人化が出来るようになるって先生が言ってた。獣化のままでいると色々と危険みたいだし」


「ピ……」
(う……)


何気なくそう言われ、俺はまた自己嫌悪に襲われる。
何故俺は獣人化出来ないのか……何故皆のように出来ないのか……分からない。


またもや落ち込む俺に気づいたラディは、手で俺にお湯をかけ泡を流すと、サッとタオルで水気をとってそのままタオルに包む。


俺を持ち上げ自身の鼻を俺のお腹にくっつけると「んーいい香りになった」と満足気に呟いた。


「リツ、僕はリツが何者でもずっとリツの事好きだよ。どんな事があってもリツが僕の側が嫌になるまでずっと一緒にいるから」


綺麗な顔で微笑むラディ。


「ピィ……」
(ラディ……)


俺はくるまっていたタオルから抜け出しラディの肩へ飛び移る。


「ピ、ピィー!」
(お、おれもラディすきだ!)


ラディの頬に擦り寄ると「ふふ、擽ったいよリツ」と言い俺の背中と尻尾を撫でるのだった。



その後、スカーフを綺麗に洗ったラディは風魔法で俺の身体とスカーフを乾かして俺の首元に巻いてくれた。


「ふー、リツふかふかだ!もうちょっと健康になったらもっともふもふするのかな」


そう言いながら俺にスリスリするラディは少し可愛い。


「ピィ!ピピピ」
(おれのさわりごこちにはまったな!ごはんたくさんくれたらいくらでもさわらせてやる!)


ポン!と胸を張って叩くと、ぷっと吹き出したラディが「可愛い」と言って俺を軽く突く。


「さぁ、ダイニングルームに行こうか!ご飯にしよう」


「ピピー!」
(まってました!!)


俺はラディの両手に乗り、俺を待つご飯ちゃんたちの事を考え心躍らせるのだった。
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