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12/1開催!〈文学フリマ東京39〉試し読み
第3作品「奇妙なこと。」
しおりを挟む❁あらすじ
俺の本業は学生だ、家の事情で裏家業は殺し屋だ。
そんな中とある暗殺依頼が入ってきた。
ターゲットは奇妙な行動をとっていた。
それは街中にひっそりとあるガチャガチャだ。
そのガチャガチャには女の子の人形が入っていた。
だがしかしその人形は特徴的で……。
❁登場人物
×
❁試し読み 10ページ
東京渋谷
いろんな人種・老若男女が街を訪れる。ひときわ変わった場所。
そこに今回のターゲットがいる。
俺の名前は無名、
どこの組織にも所属しないことから殺し屋からのコミュニティからはそう呼ばれるようになった。まぁ俺も少し気に入っている。
渋谷センター街のビルの屋上からスクランブル交差点を見下ろす、写真が風になびき、揺れる。
ターゲットの男は暗めの表情だ。なぜこの男がターゲットなのか俺も分かっていない。殺しに私的を含むこと、感情を含むことはあってはならない。
「見つけた」
ぽつりと声を漏らすとその男の後を追うためビルから降りた。殺し屋と言っても暗殺者に近い。
静かに忍び寄り首元を狩り取るのが俺のやり方だ。
だが、この男はあらゆる殺し屋からの攻撃をかわしているようだ。
なぜ? 考えるだけ無駄だ。
前を歩く男は止まった。今その瞬間、こいつの首を狩り取る。袖からナイフを取り出した……。
「え!?」
狙いは正確だった。
首が一瞬にして下に下がったから俺は思わず声を出してしまった。見つかったら殺し屋としての名が汚れる、後ろにとびのき、姿を隠す。
男は目の前にあった、ガチャガチャをするために下がったということなのか。
俺にしては珍しく心臓がバクバクと鳴り響いていた。
情報屋、こういうことは書いておけよ。
……。いや俺の情報収集も甘かった。
男はガチャガチャの前で出てきたカプセルを子供のように嬉しそうな顔で見ていた。
カプセルの中身は小柄な女の子の人形だった。
そういうのは小さい女の子がするものだろう!!
とツッコミを入れたくなってしまったが、感情はいらない。
深呼吸して再度男に狙いを定める。男はきっと可愛らしい人形が好き。
となるとガチャガチャには要注意だな。
俺のポイントに誘い込んで殺すのが手っ取り早いか。
男に追跡用の小型マシンを、すれ違い様につけ、さきほどのガチャガチャに向かった。
ガチャガチャをよく見ると可愛らしいのか
??
人形にはどこかおかしい点があった。
足が血で染まっていたり、腕が切断されていたりと、正直な感想としてこれはグロテスク人形だ。
殺す目的で俺もガチャガチャをまわしたが、これはシークレット。心臓に包丁が刺されていた……。
ぞくっと身の危険を感じた。
こんな製品売るなよなと殺し屋の俺でも思ってしまった。
スマホで男の位置を確認する。
一点に留まり動く気配がない、この場所は……。
やはりオタクが集まるアヌメイトだった。
そろりと入り、男の正確な位置を確かめる。
いた。
やはり先ほどのグロテスク人形のグッズ売り場にいた。
しかしその光景は周りの人から目を引いていた。
高身長でかつ黒服、黒髪、髪はぼさぼさと寝起きか!
とまたツッコミを入れてしまいそうなほどに目立っていた。
カプセルのおもちゃよりもぬいぐるみのほうが大きく、
そして口から血を流していた。
うぐっ。
とりあえず情報収集なため男の近くまで移動する。防犯カメラがある中殺しはさすがに難しいし、平日とは違って人が多い。
だが、グロテスク人形人気なのか男以外にも何人かの女子が見ていた。俺が近寄ると男はこちらを向いた。
へ?
「あ、ルーガちゃん」
「え?」
思わず知らぬ名で声をかけられた。
「見て、このルーガちゃんと君の髪色そっくり」
ブロンドに染めた髪がお気に召したのか言葉を交わしてしまった。
「あ、はぁ……」
そのルーガちゃんというぬいぐるみを見ると先ほどシークレットでひいた心臓に包丁が突きささっている人形だった。
……。 ぞわっと寒気が押し寄せた。
「君もこのぬいぐるみ好きなの?」
どう答えるべきなのか迷ったが
「あ、はい」と答えた。
男はここ最近で見たことのない顔になる。顔は赤らみ、にまっとした笑顔でぬいぐるみに話かけ始めた。
「いいよね、ああ、食べちゃいたい」
……。こいつ俺より危ないやつなのではと身の危険を感じ、その場を後にした。
男に見つからないようグロテスク人形のグッズを数点購入して店を出た。
「あれ? 柚月?」と声をかけられた。
? 振り向くと幼馴染で同級生の大樹(たいき)がいた。
「お前、今アヌメイトから出てきたよな、いつの間にオタクになったんだよ」
「いや、これには少し訳があって」
「まぁいいや、これからダチと合流してゲーセン行くんだけどお前もどうだ?」
「いや、やめとく、行くとこあるから」
「そっか、んじゃ学校でな」
大樹と別れた。
学校……。
実をいうと職業学生だ。
渋谷近くにある、高校に通っている。
家が殺し屋の一族でそうなってしまったから仕方がなく、少し高校生に憧れもあったから今の生活に不満はない。
報酬金額はたんまり貰えるし、好き放題できるなら特に問題はない。男がアヌメイトから出てきた。
後を追いながらも慎重に男を誘導した。
一般人では見つけにくい箇所に例のグロテスク人形を置き、男を誘導していく。
廃墟ビルに男を誘導でき、ナイフを取り出す。
ここなら俺のテリトリーだし、グロテスク人形のガチャガチャもない。
アヌメイトで顔がバレてしまったので、顔がバレないように目出し帽を被り、男の背後に立った。
だが、思えば身長差がありナイフが首に届いていないことに気が付いた。
平均身長以下の162センチ。22センチ差はどうにかしないと、と考えていると男が振り返りこちらを見た。
やばっ。
ぱしっと手を捕まれ、身動きが取れなくなる。なっ力つよっ。
「君、誰? このナイフはなに??」
ずいっと顔が近寄る。!?
どうにかして抜け出さないと。
体を浮かせ腕の軸で男の顔を足で蹴りうまれた隙でどうにか逃げられた。
男は膝をつき、なにやら地面を触っている。
……。
俺は逃げるようにその場を後にした。
平日を迎え、学生の職業に戻る。
だが、男の殺し方について悶々と考えていた。
問題は背の高さ、力も強かったし、組み敷いたとしても簡単にひっくり返されそうだ。どうするべきか。
「柚月、なに考えてるの?」と大樹が話かけてきた。
「大樹、問題」
「え!? 突然」
「大きな熊と森で出会いました、背も高く力が強く、熊を倒すことができません、そういう時はどうする?」
「え、それは逃げればいいんじゃないか?」
「……逃げ道がない場合は?」
「うーん、むずいな、道具とかはあるのか?」
「道具は……ナイフと縄と閃光玉」
「んじゃ閃光玉投げて、目くらまししたところを縄でうまく熊に巻いて最後トドメでナイフってのは?」
「大樹お前ナイスすぎる」
「いや、簡単だろ」
実行は今日の夜だな。
男の居場所を調べるとまた渋谷に出没している、昼間から暇なのかガチャガチャを漁っているのか……。
カバンにしまってある。
シークレットの人形。最後男をシークレット人形のようにしてやる。
帰宅道
俺は思わぬ人物と再会してしまった。
男は俺と目が合うとズンズンとこちらに歩いてきた。
「君……ルーガちゃん」
ひぃ…………「あ、また会いましたね……」
続きは文学フリマ東京39またはDLsiteまたはBoothにて!
発売に関しては12月1日以降になります。
詳細などはXまたはnoteに掲載してます。
どちらとも枝浬菰と検索を
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