短編集

ずっと笑っていてほしいから

陽だまり

小さい頃、たまに行く公園に天使がいた。

ギーコギーコとブランコを漕いでいる少年を見つけると駆け寄った。

「瑠架！！」
僕のことを見るとぱぁぁぁと笑顔になる、まるで花が咲いたように。
その顔に僕はうっとりと心が安らぐ感じがした。

「祥真、砂場であそぼっ」
「うん」

あの頃の僕は瑠架の境遇をなにも知らなかった。

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高校生になり、横を歩く瑠架を上から眺めるのが好きだった。
瑠架は通常の男性よりも背が低い、160cmらしい、伸び悩んでると言っているのをよく聞く。

俺は175cmだから15cmくらい差はあるが、喋りずらいなど感じたことがない。
それにクラスでは運がよかったのか後ろと前の席、前に瑠架で後ろが俺。

うなじを見るのが好きだ。

冷たい手で触ったときは「ひやぁぁぁ」といいクラスの目線がこちらに注目したことを覚えている。

「なんだよ～」と怒ってはいたがいつもみたいに笑っていた。

こんな日々がずっと続くのだと思っていた。
高校3年最後の年で、瑠架に無視されるようになってしまった。

理由を聞くのに追いかけるが追いつかずな感じであっという間に受験シーズンだ。
瑠架と話しができないまま大学推薦が始まり、受験も終わってしまった。

瑠架は大学に進むのかそれとも仕事をするのかそれも聞けない。
俺の前には大きな溝ができてしまった。

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大学生→社会人とあっという間にすぎ、23歳神木会社に入ることになった。
同期からは御曹司扱いを受けるが、1歩ずつ前に進みたい。
昔撮った瑠架との写真を密かに財布に入れていることは秘密だ。

これが俺のお守りだから。

朝
雨で電車は混む。

俺の時間帯は椅子取りゲームが開始される前なのでゆらゆらと今日の新聞を見る。
電子書籍になってからは大きく広げなくていいので助かる。


さてといっぱい乗ってくる駅だな。
ドサーと流れ込むように人が乗ってきた。
椅子取りゲームする者もいれば俺の足元に立つ者もいた。


見上げると栗色の少年？が目の前に立つ。
気分が悪そうに見えた。

「変わりましょうか？」と声をかけたが
「いえ、大丈夫です」と返ってきた。

この身長懐かしい、瑠架に少し似ている。

じっと見てるのも変に思われるのでスマホに目を戻した。
「はぁはぁっ」と息苦しそうな声が聞こえる。
やはり具合が悪いのか…。

よく見るとじわりとズボンのチャックあたりが濡れていた。
もしや尿意を我慢している？？


『次は～次は～』と降りる駅だ。