捨てられΩはどう生きる？

同棲編

記憶喪失なΩのお世話

事務所
「琉架に頼みたいことがある」
「なんですか？」


「一緒に来て」と事務所を空けて向かった先は3階の端の部屋だった。
表札には【瑠那るな】とあった。

「るな……」
表札を読んだ。

「うん、この部屋にはね比嘉さんのお友達がいるんだ、まぁ会ってみた方が早いかな」
ドアを開け中に入ると右側のベッドに寝ている人がいた。
部屋は殺風景だけどところどころに折り紙で折った鶴があった。


点滴をして重い病気なのかと思ってしまう。

ベッドの近くまで移動した。
「瑠那、入るよ」
「だ、……誰？」

「日暮要だよ、比嘉さんの友達の」

あれ？　要さん初めましてなのかな？


「かなめ？」
「そう、比嘉さんの覚えてない？」
瑠那は起き上がりふるふると首を振った。

「じゃぁこれから友達になってくれる？」
え？　どういうこと？

「うん、比嘉さんの友達なら安心」
「よかった、でもう1人友達になってほしい子がいるんだけどいいかな？」
「誰？」


僕は要さんに腕を引かれ横に立った。

「この子は琉架っていうんだ、瑠那と少し名前が似ているね」
「うん」
目が合いぺこりとお辞儀をすると

瑠那は

「初めまして、瑠那です、琉架くんよろしく」
と挨拶してきた。


「る、琉架です、よろしくお願いします」
なんとも緊張してしまった。

「琉架、彼は42歳の記憶喪失なんだ」
「え？　記憶喪失？」

「そう、俺と瑠那はもう何回も会ってるでも彼の記憶は18歳から新しい記憶はどんどん消去されてしまう」
「消されるってことは今日あったこともですか？」

「そうだよ、だから最初は自己紹介から始めてるんだ」
「……」

「琉架、大丈夫？」
「うん、どうしてこうなってしまったんですか？」


「少し前は副作用効果で脳をやられてしまってね、その研究が進んで今のΩの抑制剤はだいぶ進化して来てるんだけど100人に1人は副作用でこうなってしまう病気がやっと公開されたんだ」
要さんはどこか遠くを見つめ悲しい顔をしていた。

「……」
「それと瑠那は薬が合わなくて抑制剤と避妊用のピルを何度も服用していた」
「避妊用のピルって……」

「彼も君と同じで性虐○にあっていた子だよ」
「っつ……」

「特にこの子はΩだし回されては休むことなく体を痛めつけられたらしい、比嘉さんが殴り込む前までの話なんだけどね」


「殴り込むって？」
「比嘉さん元ヤンキーだから」

「そ、そうなんですか」
「うん、でも優しい人だから」
「うん」


それでも助かった命とはいえ、瑠那さんの記憶障害はきっと比嘉さんの心も傷つけたんだろう、想像するだけでぞっとした。


「だから琉架には瑠那のお世話係り任せてもいいかな？」
「どうして僕なんですか？」
「琉架がβで心優しいからだよ」
にこっと向けられた。

断るなんてできないけどでも要さんに信頼されていることが一番嬉しかったのかもしれない。
「分かりました」

「うん、じゃぁよろしく、これやることリストね」
「はい」
要さんは部屋から出て行ってしまった。

「よし、やるぞ！！」