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バース王国物語編
Episode.3
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そして夜会に行く日
昼頃から僕は男に捕まり
今日着ていく服を選んでいた。
「うーんこれだと幼く見えるからな」
などさっきからこういう台詞しかきかない。
僕は体つきが華奢ということもあり男性の正装がないことが当日わかり仕立屋を呼んだがすぐには作ってもらえず小さめの服をなんとか着せられた。
「アベル、君は夜会の庭園で男を誘惑するんだ、βや底辺な貴族ではなく金持ちそうな貴族や伯爵を狙うんだぞ」
「はい」
といっても僕には違いが分からない。
今日訪れる夜会にはβもいる。
うまく立ち回らないとハズレを引くこともあると男に教わった。
そして夜会パーティーが始まった。
僕はΩでしかも身分なんて動物以下ということもあり見つからないように庭園に忍び込んだ。
警備員に見つかれば男達にまわされるか死の場合もある。
命がけになる。
もう酔いがまわったのか数人の男性が庭園に来ていた。
あれは……。
「おい、なにか香りがしないか?」
「そうか?」
「酔っ払ってるんじゃないか?」
これはきっとβだ、αは紳士が多いと聞いたから。
屋敷の主はもちろんαだ。
そんな感じの人を見つければ……。
しかし僕は木の傍を離れられないでいた。
なぜかというと怖いからだ、会いたくない。
犯されたくないという気持ちがずっと頭の中を巡っている。
それにもし僕を番にしてくれる人が現われたとしても本当にそれでいいのか、αで男性のΩをお見初めたなんて話、今までに噂でしか聞いたことがない。
もし出会って警備員を呼ばれたら一環の終わりだ。
「うん、君の匂いだ」
と男が背後に立った。
腕を掴まれ首元に鼻を埋め、嗅いでくる。
ゾクゾクと悪寒が走り呼吸が荒くなる。
「っつ……」
「君はもしかして……」
僕は慌てて腕を振りほどき逃げる。
「待ちなさい!!」
その大きな声で僕は複数の男に追われている。
これは普通にまずい!!
姿を隠しても匂いで見つけられ僕は追い回される。
「どうした、なにやら外が騒がしいな」
「ラムスール伯爵、大変申し訳ございません」
「なにがあったのだ?」
「噂によりますとΩらしき者が庭園に忍び込んだというのです、ああ気持ちが悪い」
「なんておぞましいことだ」
「その者は女性なのか?」
「いえ、男だそうです」
男……それは珍しい。
私は庭園に足を向けた。
綺麗な満月が庭園からは見えた。
そして噴水に飛び込む1人の若い男。
バシャーンと潜り出てきた。
「くしゅん……これで大丈夫かな?」
私の姿を見ると驚いていた。
「君はなにをしているんだい?」
「あ……えっと、ワインをこぼしてしまったので水浴びを……」
変な言い訳をする男の子。
びしょ濡れで滴り落ちる水はなんとも美しいのかと思ってしまった。
幼い君はなにをしにここに来たのか。
私は近づき彼の肩に着ていたジャケットを着させた。
とそこに数人の男達がきた。
「ラムスール伯爵、その者をこちらにお渡しください」
「この子が一体なにをしたのか申せ」
ぎゅっと裾を掴んでくる弱々しい力の君は一体……。
「いえ、私はその者にアプローチをかけられなぜここにΩらしき者がいるのかと思い」
「ほぉーそんなことで追い回していたのか、まさか私の庭園で盛るなど言語道断だ」
ビリっと空気が重く冷たく感じた。
「も、申し訳ございません」といい男達は逃げていった。
後ろを振り向くといたはずのその子もいなかった。
やはりΩだったのか。
ジャケットに残った香りを嗅ぐが強めの薬を飲んでいたため匂いが分かりづらかった。
世界情勢として男性Ωは数年しか生きられない、もし仮にあの子がΩだったらなぜ生き残れているのか。
とても興味深い。
「はぁはぁ……」何度も転んで立ち上がって庭園を抜け塀をよじ登り僕は屋敷から逃げた。
屋敷の主であるノエル様は招待され今も夜会を楽しんでおられる。
下ろしてもらったここで待つしかない。
草陰に隠れ、馬車が行き交うのを待つしかなかった。
びしょ濡れの体が冷えて凍える寒さだ。
昼頃から僕は男に捕まり
今日着ていく服を選んでいた。
「うーんこれだと幼く見えるからな」
などさっきからこういう台詞しかきかない。
僕は体つきが華奢ということもあり男性の正装がないことが当日わかり仕立屋を呼んだがすぐには作ってもらえず小さめの服をなんとか着せられた。
「アベル、君は夜会の庭園で男を誘惑するんだ、βや底辺な貴族ではなく金持ちそうな貴族や伯爵を狙うんだぞ」
「はい」
といっても僕には違いが分からない。
今日訪れる夜会にはβもいる。
うまく立ち回らないとハズレを引くこともあると男に教わった。
そして夜会パーティーが始まった。
僕はΩでしかも身分なんて動物以下ということもあり見つからないように庭園に忍び込んだ。
警備員に見つかれば男達にまわされるか死の場合もある。
命がけになる。
もう酔いがまわったのか数人の男性が庭園に来ていた。
あれは……。
「おい、なにか香りがしないか?」
「そうか?」
「酔っ払ってるんじゃないか?」
これはきっとβだ、αは紳士が多いと聞いたから。
屋敷の主はもちろんαだ。
そんな感じの人を見つければ……。
しかし僕は木の傍を離れられないでいた。
なぜかというと怖いからだ、会いたくない。
犯されたくないという気持ちがずっと頭の中を巡っている。
それにもし僕を番にしてくれる人が現われたとしても本当にそれでいいのか、αで男性のΩをお見初めたなんて話、今までに噂でしか聞いたことがない。
もし出会って警備員を呼ばれたら一環の終わりだ。
「うん、君の匂いだ」
と男が背後に立った。
腕を掴まれ首元に鼻を埋め、嗅いでくる。
ゾクゾクと悪寒が走り呼吸が荒くなる。
「っつ……」
「君はもしかして……」
僕は慌てて腕を振りほどき逃げる。
「待ちなさい!!」
その大きな声で僕は複数の男に追われている。
これは普通にまずい!!
姿を隠しても匂いで見つけられ僕は追い回される。
「どうした、なにやら外が騒がしいな」
「ラムスール伯爵、大変申し訳ございません」
「なにがあったのだ?」
「噂によりますとΩらしき者が庭園に忍び込んだというのです、ああ気持ちが悪い」
「なんておぞましいことだ」
「その者は女性なのか?」
「いえ、男だそうです」
男……それは珍しい。
私は庭園に足を向けた。
綺麗な満月が庭園からは見えた。
そして噴水に飛び込む1人の若い男。
バシャーンと潜り出てきた。
「くしゅん……これで大丈夫かな?」
私の姿を見ると驚いていた。
「君はなにをしているんだい?」
「あ……えっと、ワインをこぼしてしまったので水浴びを……」
変な言い訳をする男の子。
びしょ濡れで滴り落ちる水はなんとも美しいのかと思ってしまった。
幼い君はなにをしにここに来たのか。
私は近づき彼の肩に着ていたジャケットを着させた。
とそこに数人の男達がきた。
「ラムスール伯爵、その者をこちらにお渡しください」
「この子が一体なにをしたのか申せ」
ぎゅっと裾を掴んでくる弱々しい力の君は一体……。
「いえ、私はその者にアプローチをかけられなぜここにΩらしき者がいるのかと思い」
「ほぉーそんなことで追い回していたのか、まさか私の庭園で盛るなど言語道断だ」
ビリっと空気が重く冷たく感じた。
「も、申し訳ございません」といい男達は逃げていった。
後ろを振り向くといたはずのその子もいなかった。
やはりΩだったのか。
ジャケットに残った香りを嗅ぐが強めの薬を飲んでいたため匂いが分かりづらかった。
世界情勢として男性Ωは数年しか生きられない、もし仮にあの子がΩだったらなぜ生き残れているのか。
とても興味深い。
「はぁはぁ……」何度も転んで立ち上がって庭園を抜け塀をよじ登り僕は屋敷から逃げた。
屋敷の主であるノエル様は招待され今も夜会を楽しんでおられる。
下ろしてもらったここで待つしかない。
草陰に隠れ、馬車が行き交うのを待つしかなかった。
びしょ濡れの体が冷えて凍える寒さだ。
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