上 下
2 / 50
バース王国物語編

Episode.1

しおりを挟む
「君と番になりたい」
「でも……」
満月が綺麗な夜、僕はとある人からアプローチを受ける。
でもこれはご主人様たちが望んだことだ。
僕はこの人を巻き込みたくない。

ふっと目を覚ますと

「はぁーよかった、夢で……」
藁を被せて寝ていたが急に大きな物音がして目が覚めた。

馬舎のエリザベートが息んでいたからだ。

「大丈夫、エリザベート??」

これはもう子馬が産まれてくる。
「エリザベートもう少しだよ、もう少し踏ん張って……」
朝方 霧に包まれる馬舎に明かりがついていた。


「ヒヒン……」
母体から子馬の体が出てきた。


「大丈夫、ジョンも一緒についてるから」

「はっはっ」
母体の馬は呼吸を荒くしていた。


「せーの!」と声を出しどうにか子馬を出産することができた。

「エリザベート、頑張ったね」
抱きつき喜んだ。

ジョンが寄ってきて僕のことを舐めてくれた。


しかしその喜びもつかの間馬舎に入ってきたのはガタイのいい男達だった。

「朝からなんだ、うるさいな」
僕の腕を引くと大きな拳がお腹に炸裂した。


「うっ……ゲホゲホ……」


お腹を抱え丸くなっていると背中を踏まれさらには腰掛けてきた。

「うっ」


「あー子馬が産まれたのか」というと
こちらを睨んできて

「登録、早くしないとだろ? なにもたもたしてるんだ」
「うぐぐ…も、申し訳ございません」


「とはいえ、兄貴まだ朝早いですよ、ご主人様から私どもが怒られてしまいます」

「そうだな……なら」



首を掴まれ男の笑った顔が見えた。

そのまま出て行こうとするとジョンが男に体当たりしてきた。
「ヒヒーン!!」

「おっとと……」
僕は地面に倒れ、他の男たちがジョンの綱を引いて大人しくしていた。


「いてーな……お前は競技が終われは馬肉として喰ってやるよ」
ジョンは怒っていた。

「ぎゃははははっ」


男達は笑いながら馬舎と僕を後にした。

「ジョンありがとう、助けてくれて、僕はどうなっても構わない、でも君には今産まれてきたシャルの面倒を見ないといけないだろ」

顔をすりあわせ大人しくさせた。


屋敷に明かりがついたころに僕は競技場の門までいき、産まれた馬の登録にいった。

「汚らしいΩですわよ」
「さっさと売り飛ばしてしまえばいいのに……」


僕を蔑む声はどこに行ってもある。

僕が醜いΩだから。


Ωの扱いは酷い。
産まれてすぐは5歳になるまで育てられそこからは奴隷として市場に売られ
売れ残りは道ばたに捨てられ男たちに犯され死んでいく。

αが絶対的な存在で産まれてすぐに貴族やいい屋敷に引き取られる。
そこからは英才教育で世界を支配する。


βはΩよりはまだいい地位にいるが労働面からしたらβが一番多い。
煌びやかな世界にいれるのはαだけと決まりがあった。


しかし女のΩは貴族との交流があり、見初められることもある。
男のΩは奴隷として男の下の世話をしている。


僕もずっと奴隷市場で売られていた。

街から街へ移動していく中
病気になった、馬がいた。

医者はこれ以上は無理だ、と言っていたのを聞いた。
しかし僕がその馬を見ていて、触れるとみるみるうちに馬は元気になりと言われた。
奴隷役人は驚いていて僕だけ違うところに運ばれ高値で売られた。


それが今いる屋敷の馬の世話をする仕事だ。

でもそれを分かっているのはそこの主のみだ。


「おい、アベル主がお呼びだ」
「はい」


登録をしたあとにすぐに主の元に行ったが屋敷に入るにはそれなりの正装をしていかなければいけない。
こんなヨレヨレの破れた服と汚い体……。
どうしよう。


「あれ、アベルくんどうしたんだい?」
屋敷前に現われた男は僕に声をかけてきた。

男が僕のようなΩに声をかけてくるときの目的はだいたい分かる。

でも早く屋敷に入ってご主人様の元に行かなければいけない。


「あの、ご主人様にお会いしたくて」
「そうか、ならその身なりじゃいけないね、おいで」

と背中に手をおかれ連れ行かれたのは男の寝室だった。
「あの……」


「大丈夫だよ」
といい男は服を出してくれた。

「これに着替えようか」

「……はい」


こんなのただで貰えるわけない。

ガタガタと震える。
こわい。


男が服に手をかけ脱がしていくと先ほど殴られた青あざをなぞる。

「うっ……」
「可哀想だ」
腕を引かれ耳元で

「お風呂に入ろうか」
ごくり……。

きっとなにかされる。

全部脱がされ風呂に一緒につかりぎゅっと後ろから覆い被さってきた、体を洗われる。
隅々まで触られたくない場所まで

「あっ……」

「どうした?」
「……なんでもありま……せん」

蕾みに指が入っていくぞわぞわと感覚を感じる。


「さてと出ようか」
いつの間にか綺麗になっていた。


そして服を着せられ主人の元に連れて行かれる。

「失礼いたします、アベルを連れて参りました」
「ご苦労」

といい男は部屋からでて主人と2人きりになる。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

One Night Stand

BL
「今日、デートしよ。中嶋瑛斗くん」 「……は?」 中嶋瑛斗(なかじまえいと)は都内の大学に通う4年生。就職も決まり、大学最後の思い出作りにと、貯めたお金で友人山本とハワイへ旅行に来ていた。ハワイでの滞在も残すところあと2日となった日。ひとり高級住宅街に迷い込んだ瑛斗は、長身の美男子、相良葵(さがらあおい)と出会う。我が儘で横暴な相良と強制的に1日デートすることになり、最初は嫌々付き合っていた瑛斗だが、相良を知る内に段々と惹かれていく自分を自覚して――。 スパダリ年上男子と可愛い系大学生の異国で繰り広げられる甘くて切ない一夜の恋の話。 ★ハッピーエンドです。 ★短い続きものです。 ★後半に絡みがあります。苦手な方はご注意ください。 ★別ジャンルで書いた物をオリジナルBLにリメイクした作品です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

助けの来ない状況で少年は壊れるまで嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...