Double pair~試し読み~

枝浬菰

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冷えていく体

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この湯煎はとても温かくて冷えた体を包んでくれた。
「んんっ//」
どうして紅がここまで優しくしてくれるのかなんて分からない。

僕は異物なのに。


「すごい、陸の匂い、いい香り」
いい香り? なの?


臭い、臭い臭いって言われていたのに僕のどこがいい香りなんてするのか分からない。
「はぁ……はぁ……このまま番になっちゃう?」
「へ?」


「若様、失礼いたします」
「なに、今Ω様の接待中なんだけど」


「申し訳ございません、ですが山瀬様からご一報が」
その名前を聞いたときビクリと大きく体が動いた。

「どした? !? 陸!!」
血の気が引いていく、どんどん自分の姿が見えなくなっていく



ぎゅっと抱き寄せた紅によって僕は暗い世界から色のある世界に戻ってきた。
「陸、大丈夫だから、ね」


「はぁ……はぁ……はい」
僕は目を閉じた。
---
「山瀬さんにはここにいるから安心してくださいとお伝えください」
「かしこまりました」


「陸……」
青ざめた顔はきっと家への恐怖。
先ほどまで温まっていた体がどんどん冷えていく。まるで氷の世界に入ってしまったかのように。


Ωってだけでも十分珍しいのに男のΩは特に貴重だ、それなのに山瀬の元に産まれてきてしまったこの子はいったいどうやってこの歳まで生きてきたのか。


発情期になりかけている、こんな状態で発情期になってしまえばどうなってしまうのか、俺は怖い、だから傍にいて支えてあげたいのに。


「若様、度々申し訳ございません」
「どうした?」


「山瀬様、自らお迎えにいらしています」
「なっ……強制送還ってことか」
「はい」

「分かりました、服の支度を……」
「それが」


「失礼いたします、お初にお目にかかります、紅様、このようなところまで失礼を……」
「本当に失礼だな、お前達何様のつもりですか?」


「私たちは山瀬の物を預かりにきたまでです、いつから燕子花様の物になったのでしょうか?」
……。なっこいつら
従者はふるふると首を横に振っていた。


「……そうですね、大変失礼を…」
俺は迎えに来た者をベッドに通した。

え?
俺は人の扱いとはほど遠いものを見てしまった。

「起きろΩ」
ビリっとなにかを感じたのかゆっくりと起き上がり陸はふらふらしながら付いていった。
俺は追いかけようとしたが従者に止められた。

そしてこの屋敷からいなくなった。


「どうしてあそこで止めた、玄関まで連れて行くだけでもしては良かったのではないか?」
「はい、そうですが、あの方はまだ燕子花の物ではありません」


その言葉に俺は
清次きよつぐ!!」(紅の従者、年齢は25歳)

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