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第一章:神の暇つぶし
20話ー【干支の謎】月日の主
しおりを挟む「惜しい奴を亡くしたよ……」
「グスン……綾華ぁ…あたし、あたし……綾華の分まで生きるからねぇ……」
「どんな雰囲気だよ!別に死んでないよ?!」
「「それはそう」」
「えぇ……」
「多分、疲れて寝ちゃったんだよ……そっと寝かしておこう」
「そうだね。あたし達で、綾華の代わりに謎を解いちゃおう」
「「「おー!!」」」
付き合いの長いこの四人でしか許されない不謹慎なジョークを挟みながら、疲労と羞恥で寝てしまった綾華を樹が自分のシャツを枕にして床に寝かせ、気持ちを切り替えて謎に取り掛かる。
「取り敢えずさ、月の出る夜と日の出る朝の主を推理する訳じゃん?この主、って何だと思う?」
「ラーじゃね?」
「陽葵、それは太陽神だよ……」
「主も神も同じようなもんじゃない?ニャル様だって、暇を司る神なんでしょ?多分知り合いか何かだよ。スペシャルゲスト的な」
「スペシャル過ぎるよ!?てか、暇を司る神って……」
「暇暇言ってたし、そうなんでしょ?知らんけど」
「絶対違うだろ……」
陽葵の想像力に呆れつつ、でも、その想像力が謎解きでは必要なんだよな……と、蒼は頭の中のその矛盾と戦っていた。
蒼が脳内戦争をしていると、樹がブツブツと呟きだす。
「『月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた』と『日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた』。月の方で出てくる動物は鼠と猫。日の方で出てくるのは鼬と鼠。天井の太陽と月の絵から月日の主が日付ではなく夜と朝を示してる事が分かった。陽葵は太陽にフォーカスして考察してたけど恐らく太陽ではなくて朝の方に答えはあると思う。
「「…………………………。」」
「でも朝の主って何だ?いや待てよ……主?これって本当に主って読むのか?これを主と読む場合夜と朝の文章に二匹ずつ動物が出てくるのは不自然じゃないか?………………ねぇ、蒼、陽葵」
「「…………ど、どうした?」」
「二人はこの文字、なんて読む?」
樹は『月日の「主」』の「主」の所を指差して、蒼と陽葵に聞いた。
それに対して、蒼と陽葵は不思議がりながら答える。
「『あるじ』じゃね?」
「あたしも、『あるじ』だと思う。それがどうかした?」
「いやさ……『あるじ』じゃおかしいんだよ」
「どこがだ?」
「まず思い出して欲しいんだけど、夜と朝の文章に出てくる動物って何か分かる?」
「ん?ちょい待ち」
樹の問いに対して蒼は答えるべく、問題の文章を読み返す。
「月の方が鼠と猫。日の方が鼬と鼠、だな」
「ね、おかしいでしょ?」
「そう?どこもおかしな所は無いと思ったけど?」
「んー……陽葵、そもそも主って何か分かる?」
「主?主ってあれじゃない?一番偉い人」
「うん、そうだね。じゃあさ、何で同じ文章に動物が二匹出てくるの?主が夜と朝、それぞれに出てくる動物の事だと仮定すると、一番偉い人が二人いることにならない?」
「ん?でもそれって、順位の高いほうが偉い的な考え方も出来ない?順位が高い方が神からの恩恵が凄いんだから、主って言っても差し支えないと思うけど?」
「そうかな?別にそれ、主って言葉をわざわざ使わなくても良いと思うけど?」
「じゃあ、主って何て読むのが正解なの?」
「主」を『あるじ』と読まないという樹と、あまりピンときていない綾華が議論していると、黙り込んで考えていた蒼がハッとして樹と目を合わせる。
「もしかして……」
「恐らくこれは『主』って読むんだよ」
―――
○今ある情報
・紙とペン一本
▶︎紙は謎解きの問題
▶︎4人分無いのは不自然
▶︎ペンはカレンダーに印を付ける用?
・天井
▶︎太陽と月のイラストが描かれている
▶︎問題の三番目の文章と何か関係が?
・カレンダー
▶︎謎解き用アイテム
▶︎南側にある棚の中にあった
▶︎大きさは手持ちサイズで小さめ
・銅像
▶︎謎解き用アイテム
▶︎銅像の裏の壁に愚か者、優しき者、12位……1位とある
▶︎数ある干支物語に出てくる動物達だ
▶︎愚かな動物:猫
▶︎優しき動物:鼬
▶︎狡き動物:鼠
▶︎真っ直ぐな動物:?
A)猫▶︎鼬▶︎猪▶︎犬▶︎鳥▶︎猿▶︎羊▶︎馬▶︎蛇▶︎龍▶︎兎▶︎虎▶︎牛▶︎鼠
・神
▶︎ニャル様とは関係なさそう
▶︎動物の順位毎に恩恵を与える存在?
▶︎謎解きに必要な情報かは分からない
・猫と鼠
▶︎赤い本
▶︎ページ数は少なく、中身は絵本
▶︎いつもは宿敵な猫と鼠も手を取り合うことがあるらしい
▶︎何故『猫と鼠』がヒントになると蒼は思うのか?
(干支物語に出てくる動物だから)
【干支について】
昔、時間を決める時に使ったシステムであり、12匹の動物の名前が由来である。12匹の動物は1月から【鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪】である。この順番は繁殖力の高い鼠が子孫繁栄を願われていたり、生活的に必要であった牛、虎のように勇ましくなれるように……等の意味があるがここでは割愛。ここでは12匹によってされたと思われる競走についての話をする。ある神様が月の名を決めるために、様々な動物を【1月1日】に呼んで競走させ、その中で取り分け早かった1位から12位の動物の名を使うことにした。結果は上の通りであるが、【鼠は猫を騙し【1月2日】に来るように仕向けたり、その日の前から準備していた牛に隠れて1位になったり】と、様々な事が起こったとされている。
【謎解き】
(一番目)
昔昔のこと、競走をした【14匹の動物】がいる。
その中の1匹は、【愚かな動物】。
その中の1匹は、【優しき動物】。
その中の1匹は、【狡き動物】。
(二番目)
勘違いした優しき動物は【神】の温情により報われた。
しかし、騙された愚かな動物には神の手は差し出されなかった。
愚かな動物は狡き動物を許さない。
怒った愚かな者は狡き者の銅像の順番を1番最後にした。
順番を弄った後、満足し愚かな者は帰った。
次の日【真っ直ぐな動物】が本当の順位に直そうとしたため、自分の動物を1番最初に置いた。
次の日順番が変わった自分の銅像を、狡き者は見つけた。
本当は1位なはずの自分が1番最後にいて、そうでない動物が1位にいることに怒り、全体的に変更させた。
次の日全体的に順番の違う銅像を優しき者が見つけた。
優しき者は何も言わずに元の順番に戻した。
それを見て遊び心の沸いた【ニャル様】が順番をバラバラにした。
(三番目)
順番がバラバラになってる銅像を見て全員喧嘩した。
特に愚かな動物と狡き動物の喧嘩は酷かった。
【月の出る夜、狡き動物が怒り狂った愚かな動物に傷つけられた。】
【日の出る朝、優しき動物が狡き動物の怪我を見つけた。】
優しき動物は悲しんだ。
皆に狡き動物が怪我したことを伝えると、愚かな動物にすぐ白羽の矢が飛んでいった。
愚かな動物はすぐに後悔し、認めた。
(四番目)
【もうこんな争いは起きてはいけない。
だから仲直りした、皆全員で。
この日は皆で手を取って楽しく笑った。
1年に1回は絶対楽しくしよう、皆で誓った。
しかし仲直りしていつも楽しく過ごしていると、その日のことを忘れてしまったのだ。】
思い出した者は【カレンダー】に、私達の物語の起源となったその日に印をつけて欲しい。
そして、【銅像の位置】が違う時は直してやって欲しい。
さすれば新たな道が貴方の前に現れるだろう。
【1つ忠告するのならば、まずは月日の主を探すが吉。】
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