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「ヒッ、」


俺はもうとっくに壁に背を付けているにも関わらず、更に後退ろうと試み無様に頭を打ち付けた。


「お前まさか金を返したら盗った事実までなくなると思ってるのか?」


ヴォンガルドの言葉がナイフのように鋭く胸に突き刺さり、俺は青褪めながら首を横に振った。

俺はイーサン・ヴォンガルドの存在に怯えてるわけではない。自分の罪が白日の下に晒され断罪されることにひたすら怯えているのだ。

そんな卑怯な俺の心情が手に取るようにわかるのかイーサン・ヴォンガルドのデカイ手が俺の尻たぶをギュッと掴み上げた。


「この金はもうお前のもんだ。その代わり、解るよな?」


は?!朝までヤってたのにこいつ正気か?!!俺のこの土気色の顔色が目に入らないとでもいうのか?!

だが、当然ながら俺に拒否権はない。


俺はイーサン・ヴォンガルドに尻を揉みしだかれながら、そのまま備品が大量に置いてあるカビ臭い部屋に連れ込まれた。




「下だけ脱いで尻をこっちに向けろ。ああ、よく見えるように自分で拡げてみせろよ」


コイツハイッタイナニヲイッテイルンダ?


俺はイーサン・ヴォンガルドの言っている言葉の意味が分からなくて、否。脳が理解するのを拒否して直ぐには動くことが出来なかった。

こんな恥辱を受けるくらいなら家族全員殺して俺も死ぬ。一瞬そんな考えも過ったが現実的ではない。

結局俺はノロノロとスラックスに手を掛け、鍵も掛かってない備品倉庫で下半身だけ裸になった。最悪だ。俺は窃盗だけでは飽き足らず、公然猥褻の罪まで重ねてしまった。いや、これはこいつが無理矢理だな。


イーサン・ヴォンガルドはあまりの恥辱に項垂れる俺をあっという間にひっくり返し、壁に両手を付かせたかと思うと、そのまま腰を突き出させた。そして俺の穴を至近距離で、か、観、察……している。あり得ない。こんな日が高い時間から、職場で、尻を露出して、局部を細部まで見られている。

死のう。死ぬしかない。キャパオーバーだ。とてもじゃないがこれから生きていけない、


「血は出てねェが、腫れてんな。縁が真っ赤になってる」

「ッ説明せんでええ……!!!」

「おい暴れんな。両手足縛られてェのか」

「ッッッ!!!」


俺は壁に額を擦り付けながら泣いた。唇を噛み締めて無言で。ひくひくと肩が震えてる俺に気付いたイーサン・ヴォンガルドが深く溜息をついたのが分かり更に激しく嗚咽する。遺書にお前の名前を書いてやる。覚えてろ。


「ンな泣くなよ。お前意外と感情豊かだよな」

「離せちゃ!こ、こんな格好……人に見られたらどうするんか!?」

「この部屋は鍵がねェと外から開かねえ構造になってんだよ。破壊されたとかなら話は別だがな。ナカも確認するから大人しくしてろ」

「せんでええ!痛いけ触らんでくれ!」

「痛いなら尚更見せてみろ」


抵抗虚しく、何か冷たいものを纏ったイーサン・ヴォンガルドの指がゆっくりと後孔に侵入してくる。俺は痛みを堪えるために身体に力を入れて構えた。が、


「あんま締めんなよ。塗りにくいだろうが」

「ぅ、」


想像した痛みはない。寧ろ先程まで腫れて熱を持っていた場所から急速に痛みが引いていくような気さえした。自然と力が抜けていく俺の身体に、イーサンの指が二本に増やされ更に奥まで掻き回される。

痛みの代わりに昨日初めて味合わされた緩い快感が呼び起こされそうで俺は別の意味で身体に力を入れた。そのせいかヌプヌプと内部を指の腹で撫で回すイーサン・ヴォンガルドの指をキュウゥと締め付けてしまう。その状態で激しく抜き差しされ、俺は悶える様な快感にビクビクと身体を跳ねさせた。


「ン、あァぁ!!…ッ、ふ、ぅ」

「エロい声出すなよ。挿れたくなんだろうが」

「なん、それ……、何塗りよんかァ、」

「すげーだろ。王族御用達、第三部隊にのみ特別支給される軟膏。値段は付けられてねェが文官の給料一年分くらいはするかもな」

「はァッ?!」


何つーもんを尻に塗り付けてくれてるんだ?!確かに効き目は覿面の様だが俺の尻はそこまでヤワではない!放っておいたって自然治癒したはずだ。


「俺の魔羅受け入れて数時間で普通に出勤して来るとは思わなかったぜ。お前、気に入った」


なんて事だ。体の頑丈さが仇になるとは。こんなことなら休んで寝込んでおけば良かった。

しかし人間の身体とは現金なもので尻の痛みがマシになると体調も持ち直してきた。

イーサン・ヴォンガルドも軟膏?を塗りたくるだけ塗りたくったらそれ以上何もせず、というわけではなかったが泣きながら四肢を全力でバタつかせ抵抗したら解放してくれた。


「ところでお前名前何つーんだ?」


下着とスラックスを履き、そそくさと逃走しようとしたところで投げられた質問に俺は早口で答える。


「メイソン・ブロディ」


……これは俺ではなく俺の同僚の名前である。

何故俺はこうも罪を重ねてしまうのだろか。だって素性を知られたくなくて……すまん、メイソン。



俺の嘘がバレ、人生最悪のお仕置きを食らうまであと二日─────


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