上 下
27 / 40
第一章:第四節

3:精霊族の女王フェリエル?

しおりを挟む
 その聖霊界で精霊族の長で女王であるフェリエルが、魔族の長にして大魔王のエルザの前に、しかも精霊族の領域である妖精の森に囲まれたこの草原へと招き入れていたからである。
 それは凄く不思議であり、今迄エリザが誠意を持って尋ねるても、一度もこの領域に入れる事を許されず、しかも敵視されていたからであった。
 ただ敵視されていたとしても、一度も攻撃をされた事などは無く、ただ単にこちらの要望も謝罪を受け入れて貰えなかったというだけである。

 最初はこの場所に誘導されたのは誰かのいたずらか、何かの間違いだと思ったが、まさか招きいれたのが聖霊界の頂点に立つ、精霊族の女王であるフェリエルとは思わずマリーも驚きを隠せずにいた。

 それからエリザは先程フェリエルがお願いしてきた理由を聞くために、再度声を掛けたのだ。
「貴方ほどの方が、私に直接お願いをしてくるとは何故ですか?しかも今迄お会いして頂けなかったのに」
『はい、ホントですね。私は貴方に対してあれだけのひどい事をしてしまいました。それに図々しくもこちらが困った案件が出てきてそれをお願いしようとは、虫のいい話しです。しかし、もう貴方様にお願いする無かったのです。本当に真に申しわけ無いのですが』
「いえ、気にしないで下さい。あの時は過去の事で気の立っていた方たちの前に、私自身が何も考えず赴いた事によるモノですから。それにチャント貴方の誠意は伝わっていましたので」
 そうである、あくまで精霊族にひどい事を行なっていたのは、前々の大魔王であって前大魔王に関しても聖霊界とは犬猿の仲であった。だが、こちらから何かする事は無かった。

 それでも精霊族にとっては、有無を言わずに攻撃をしてきた魔族の事を恨み、今だ魔族が聖霊の管轄する森に入るのを拒んでいる。しかしその関係を直そうとエリザが大魔王になってからは、積極的に聖霊界に訪れようとしていたが、殆どが聖霊界の保有する森の前で門前払いされていた。

 それで数年前に、一度だけチャンスが廻ってきていた。

 その時は精霊族の女王のフェリエルに面会できるとこまで来れたのだが、本来の大魔王であるエリザの体質のせいで、その場所に行くまでの間に、殆どの精霊族の側近達と男性種と精霊種の人々に、解き放たれる覇気により、気絶等の状態異常を発生させて次々と倒れさせていく始末であった。

 さらに最悪なのが、その面会の日に体調を崩していたフェリエルにも、その時の独特の覇気を当てて仕舞い、気絶させてしまうと言う事態に陥っていたのだった。

 その時にちょうど間が悪く、エリザの覇気に耐性のあった気の荒い精霊族の女性戦士が、エリザが攻撃したと勘違いをして、有無を言わせず攻撃をして来たのであった。それで、エリザは大変な怪我を負って戻って来ていたのだが、その事には触れず自分で転んだと嘘をついていたのである。

 このとき下手をすれば戦争になりかねない状態だったが、エリザ自身が自分の対応が悪かったと言う、詫びの書状を出したのにふまえ、フェリエルも魔族に迎え打つ事をさせない様にしていたので事無きをえていた。

 その時に女王が攻撃されたと勘違いをして、エリザに怪我を負わせた女性戦士は、女王であるフェリエルから話を聞き、密かに大魔王であるエリザに会い詫びをのべて来ていた。
 エリザもその時は、その戦士の誠意を受け止めて、大事にはしなかったのである。

 それでそんな事が有ったからと言って、決してエリザは諦めた訳ではなかったのである。

 今回はそんな事をとは別で、精霊族の長にして女王のフェリエルがお願いしてきたのである。普通なら断っても咎められる事は無いのだが、エリザにとってはそんな事は関係なくお願いを聞く気でいたのである。

「それで・・・フェリエル様?お聞きしますが、お願いとは・・・」
『はい、聞いて頂くだけでも感謝します。実は此度こたび我が管理している領域内の森で魔物が大量発生いたしまして、何故なのかを調べておりました。最初は精霊族の民達は、あなた方魔族の陰謀と考えていたのですが、調べていくうちに魔族の方でなく、邪心族の陰謀と言う事がわかりました。それで対処をしていたのですが、我が領地の民達ではもう対処できなくなりだしました。それで、たまたまここの近くを通られていたエリザ様にお願いしようと思いまして、勝手ながら私の判断でここへお呼びいたしました』
 精霊族の女王フェリエル自身がお供も連れず、今エリザの目の前で頭を下げていた。

 その頭を下げているフェリエルと、話しを真剣に聞いていたエリザの前に、何故か馬車を降りてきたセリカとレイカが近付いて来たのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

最強の力を持っていますが封印して 今を生きます。

はぎの
ファンタジー
五話まで読んでみて。夢幻界と呼ばれる異世界がある。その世界には人間のほかに魔物が住んでいた。彼らは争いやがて、多くの命を失うことになった。しかしそんな争いもある出来事がきっかけで、終結した。約五年前の話である。そんな世界を舞台に、主人公の了は人間や魔物と戦い。戦争の裏側を知っていくのだった。 読んだらお気に入り登録お願いします。タイトル回収はだいぶ先です。すべての話に伏線あります。二十六話から大きく話が変わります。

婚約破棄された公爵令嬢のお嬢様がいい人すぎて悪女になれないようなので異世界から来た私が代わりにざまぁしていいですか?

すだもみぢ
ファンタジー
気が付いたら目の前で唐突に起きていた誰かの婚約破棄シーン。 私は誰!?ここはどこ!? どうやら現世で塾講師だった私は異世界に飛ばされて、リリアンヌというメイドの娘の体にのり移ったらしい。 婚約破棄をされていたのは、リリアンヌの乳姉妹のメリュジーヌお嬢様。先妻の娘のお嬢様はこの家では冷遇されているようで。 お嬢様の幼い頃からの婚約者はそんなお嬢様を見捨てて可愛がられている義理の姉の方に乗り換えた模様。 私のすべきことは、この家を破滅に導き、お嬢様の婚約者に復讐し、お嬢様を幸せにすることですね? ※成り上がりストーリーですが、恋愛要素多めです。ざまぁは最後の方です。 ※主人公はあまり性格よくありません。

貴方に側室を決める権利はございません

章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。 思い付きによるショートショート。 国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...