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第一章:第一節

6:エリザと赤ん坊?

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 その姿は大魔王と言うよりも、女神か聖母と言ったほうが誰もが納得するような姿ではあるが、その表情は悲しみ満ちていたのである。
「ひっ、酷い、こんな酷い事を出来る者が、まだこの世にいるのか、それによく見るとこの村の者達は・・・」

 余りにも悲しい光景を目のあたりにして、嫌な感情が湧き上がる寸前に、抱きかかえていた赤ん坊が目を覚ましエリザの涙で濡れた頬に小さな手で撫でて、笑顔を向けてきた。
「あーぅ、ああぁ、きゃっう」

 エリザはその赤ん坊の、手の感触と声それに笑顔で我を取り戻しその子の手を優しく握り、直ぐに村全体にエリア探索をおこない生命反応がないか確認してみた。

 すると奇跡的にも若干1名、しかしかなり反応が弱いが焼け残った家の中に反応があったので、直ぐに助け出すようにセシリーとマリーに指示を出した。
「セシリー、マリーあそこにある建物に1人だけ弱いけど生命反応があるわ。助けてあげて頂戴!早く助けないと危ないわ」

「えっ、ホント?・・・解ったわ。エリザちゃ・・・いえ、エリザ様」
「姉様!先に行きます」
 セシリーは先程エリザが余りにも悲しいこの光景を見て、混沌のオーラを出し掛けたのが、気になり反応が遅れたが、それよりも早くマリーが飛び出して建物の中へと入って行った。

『何?あの子・・・あの状態に暴走の一歩前になりかけたエリザちゃ・・・いえ、エリザ様を一瞬で元のお優しいエリザ様に戻した・・・どういう事なの、私でもあの状態になると元のエリザ様に戻すまでかなり時間がかかるのに・・・』
 セシリーはエリザの抱いている赤ん坊に視線の向け、不思議に思いながらもその時はエリザが見つけた1人だけでも助けようとマリーの後を追っていった。

 その建物は恐らくこの村にあった、簡易的な教会だったのであろう、何故ならそこは正面には祭壇があり、その祭壇に向けて長いすが設置されていた後があった。

 残念ながら殆どが焼けてしまい、炭と化していた屋根も既に焼け落ちて祭壇も御神体のような物も無く焼け落ちていた残っていたのは周囲の壁と入口付近だけだった。

 そうちょうどエリザがいた付近からは、建物が残っている様に見えていただけで実は中は殆ど焼け焦げて炭と化していたのである。

「あっ、姉様。これでは人どころか生き物自体もいないのではないですか?」
「そんな事は無いでしょう。エリザ様が確認したのよ。マリーもう少し探してもしかしたら地下室があるかもしれないわ」
「えっ、う、うん、解ったわ。姉様」
 このときマリーは、少し驚いていた。いつもはホンワカとして凄く落ち着きがあるのに今のセシリーは、なぜか鬼気迫った感じでいたからであった。
 こういう時は何かあるので、素直にいう事を聞くようにした。

「ん?姉様、ここの焼け崩れた天井の?いえ、屋根の下に何かいますね?」
「なっ、なんですって、早く助け出してあげて・・・人だったら大変よ」
「えっ、でも恐らくこれじゃあ助からないと思うけど・・・まあ、いいや、解りました。ちょっと吹飛ばしますよ」
 マリーはそう声を出し、自身の持つ魔法の風属性の魔法と爆裂魔法で、浮かべ上げた屋根の残骸を爆裂魔法で吹飛ばした。

 するとその下には驚くべき事が起きていた。
「ねっ、姉様・・・この娘は?」
「あっ、何てことですか、でも、どうしてこの娘とその周りだけは・・・普通じゃ考えられませんわ」
 その場所にいたのは どう見ても神光しんこう教会のシスターであった。ただ、信じられないのが、まだ幼さの残る少女で姿的にはマリーと然程変わらない感じの少女だったからである。

 しかもその少女のシスターは、何故か周囲が焼け崩れ落ちた屋根の下にいたのだ。
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