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第一章:第二節

4:人質を捕られて?

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 突然話しは少し戻るが、今更ながら問題の飢饉を起した魔王候補の男は、アデルと言う名である。ホントに今更なのだが、そのアデルとその部下でる男達はかなり焦っていた。

 人質を取ったまでは良かったのだが、出口はすべて新鋭隊が塞いでいたので、もしこの場から出て行くとしたら先程大魔王エリザが出て行った扉ぐらいしかなかったのだ。

 だが、その近くには参謀であるセシリーと親衛隊団長であるマリーがいたので、決してその場が安全と言う訳ではなかった。下手をすれば他の場所に比べたら一番危険な箇所で、他の出口の扉を護っている親衛隊を相手してその場から逃げた方がはるかに危険が少なかったのだが、その考えは別になかったようだ。

 何故かと言うとアデルには、今はそれどころではなかったのである。何せこの騒動に気が付いて、もし大魔王エリザがここにやってくる事があれば、それ事態が一番の恐怖であり、助かる見込みが微塵も無くなるからであった。
 
 もしホントに、今ここで大魔王エリザが来たら、確かに逃げられるチャンスどころか生きていられる事が、いよいよ無くなってしまうと息を呑んでいた。

『まっ、まさか、異変に気付き、戻ってきたのか?・・・  !・・まずい、まずいぞ。ここにエリザが来たら死罪どころか、この場で消されてしまう。来るな!・・・お願いだ来ないでくれ』
 この時点でアデルは、何故かその存在だけに恐怖して天に願っていた。

 アデル的にはホントに嫌な予感がしたので、扉の方から誰が入ってくるかを恐怖に苛まれながら視線を向けていた。流石に人質として捕まえた少女を抱えたままでは、勝てる気は無かったがそれでもどうにか人質を利用しようと考え臨戦態勢をとっていた。

 するとその扉がスーと開き、誰かが入ってきたのだ。
『まっ、まさかホントに戻って来たのか?しかし、いつもと気配が違うような・・・!?』

 この扉より入ってきたのは、先程大魔王エリザに抱かれて出て行ったはずの少年・・・アレスが扉を押し開け、ヒョコッと顔を覗かせて周りを見ていたのだ。

 この時は流石にここにいる全員は、今のこの状況を大魔王エリザに見られてはと思い、息を呑んで冷や汗を流し扉の方に視線を向けていたが、アレスが顔をのぞかせた瞬間、何故か少し安心していたのであった。
『『『よっ、良かった。エリザ様で無くって・・・ふぅぅっ』』』
 ここにいた全員が一斉に同じ事を考え、溜息を吐いていた。ただ、数人を除いての事だった。

 それで顔を覗かせて何かを探していたアレスは、玉座の方に視線を向けて目的の物を見つけたのか、そちらの方にテクテクと歩き始めた。
 しかし、他の者には何をしているのかよく解らず、そのうえ何故か皆・・・先程の件があったのでその場所から動こうとしなかった。

 それで、アレスに視線を移しつつ、開け放たれた扉の方にも視線を向けていたが、そこからは誰も入って来る事はなかったので、そこでまた一安心していた。

 そうこの時アレスは、ただたんに先程読んでいた魔導書を忘れた事に気が付き、エリザに内緒でこっそり取りに戻って来ただけなのであったのだ。

 実際のところエリザに抱かれこの謁見の部屋を、出て行きエルザの私室に行ったまでは良かった。

 ただそのエリザの私室に向う途中で、ふと魔導書を忘れてきた事を思い出したが、余りにもエリゼに抱かれているのが心地よかった為に、半分以上されるがまま寝室まで連れて来られそのまま寝てしまっていた。

 しかし、その連れて来たエリザ本人も先程まで腹を立て疲れていた、それでそのささくれた感情を癒す為にアレスに添い寝するつもりが、そのまま寝てしまっていたのである。
 それで少し寝ていたアレスは、目を覚まし横で寝ていたエリザを起こさない様に抜け出し、魔導書を取りに謁見の間に戻って来ていたのであった。

 実際は先程の行為、エリザに甘えた行動を取ったのは、今回の話をするにあたり、本題に入る前に大魔王エリザが余りにも御立腹で、しかもあの勢いのままもし限界を越えてしまうと、間違いなく殺気と最悪な覇気を放ち続け耐性のある物でも寝込んでしまうか、耐性の弱い者は死んでいた恐れがあったのである。

 それは周りにいる魔王達や魔王候補だけでなく、各地の領土を預かる領主達や耐性の弱い周りの者達にも被害がおよび危険にさらされる可能性があったのだ。

 特にこの場にはレイカとセリカ、それにマリアの人族である者達と親衛隊達もその中に含まれているのである。実際はアレス的には他の者達がどうなろうが知った事では、無いがマリア達と自分を可愛がってくれる親衛隊達の方が心配で危ないと判断して、アレスは一芝居打ってエリザに甘えをこの場所より退出させたのであったのだ。

 この作戦は上手くいっていたが、肝心の読みかけの魔導書を忘れたのを忘れて取りに来ていただけだったのである。

 それでアレスは扉を開け中を覗きこみ、玉座の方へテクテクと歩き魔導書を手に取り、余りにもみんながアレスに視線を向けているので気になり、そちらに視線を向けるとちょっとヤバイ雰囲気になっていたのであった。

 アレスは余りにもみんなの視線に手切れなく、その場を退出しようと引き返していると、聞き覚えのある声が響いたのである。
「アーたん、アーたん。あははっ・・・《バシッ》・・!?」
 セリカは、アレスの事を呼び手を伸ばしていがその手をアデルが叩いたのである。

 その行為をすると同時にアデルは声をあげた。
「うるせーっ、このメスガキが!」
 それと同時くらいに、そのアデルの部下達も声を掛けた。
「「「親方さっさと、こんなところすらかりましょう」」」

「ひっ!ひっく、ひっくうっううう、びぇええ、むぐむぐ・・」
 突然怒鳴られたうえに、手を叩かれたセリカは驚き目を白黒させて泣き出してしまったが、アデルによって口を押さえられ声を出せない様になってしまっていたのである。

「ああーっ!うっ、うるせーぞ。このガキ少し黙ってろ」
 そう言ってセリカの口を押さえて黙らせ、また怒鳴った。

 それで周りにいる者は、このままではあの少女が酷い目にあってしまうと思い、ますます動けない状態になっていたが、この時から周りの様子が少しずく変わっていたのだが、この時点では誰もその様子に気が付いていなった。

 そうこのとき、参謀であるセシリーと親衛隊の隊長でもあるマリーが、怒りによりただならない覇気と魔力を解放して、この事態をどうにか変えようと考えていたのである。

 それに近くにいたマリアもどうにしてセリカを助けるのと、抱きかかえているレイカにも被害が及ばない様にしていた。
 それで少し離れレイカを安全な場所もしくは、親衛隊の誰かに預けこれを打開させようとすきを伺っていた。
『どうにかして、せりちゃんを助けないと。でないと!それにレイちゃんの安全を』

 それで周りの者達が色々と策を考えている間に、アデルがセリカの口を塞いだままの状態で、最終的には気絶させてしまっていたのだ。

 この時、周りの皆がこのままでは、この男をみすみす見逃してしまううえに、少女が人質としてさらわれてしまうと考えていた、その瞬間とんでも無い事が起こっていたのだ。
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