上 下
327 / 557
第9章 戦いの中で真実を?

9-87 自称魔王登場?

しおりを挟む



 するとその魔人族であるキサールの身体が光り輝きだし、その後黒い霧状の靄みたいなのに覆われた。それからすぐにその黒い霧が霧散して、その中から魔人族のキサールが姿を現したが風貌と姿が著しく変わっていった。



 それは失っていた筈の両腕が、何故か元に戻り治り生えてきていて、そして頭には先程までなかった角が5本ほど生えていたのであった。
 パッと見、今魔神となっている前のドロスによく似ているが、そのガタイがひ弱すぎる。しかも威厳が全くなくどちらかと言うと鬼人に近い感じであった。

「あっははははっ、私はこれで魔王に近い存在だ!私の開発した強制進化の丸薬は、成功だ力がみなぎるぞ、これなら、この身体なら耐えられる。ははははっ、今から見ておれ、ドロスよ!私が魔神へとなるところを!」
 しかし、本人は魔王と言い放ち、満足そうに大笑いして卵の置いてある台座の方に歩いて近付いた。

 その卵を置いている台座の横では、今だ苦しみ転げ回っている魔神ドロスがいた。そこに近づいたと同時に、有無を言わさず邪魔のならない場所まで、キサールはドロスを蹴飛ばしたのである。
『ぐっがっぁぁっ!・・・』
「ふん、ギャーギャーうるさいのである。そして邪魔だ!ふはははっ、しかし愚か過ぎる。くくくっ・・・」

 流石に魔神となっているドロスでも、今の大怪我を負っているのでかなり弱体化しているようで、簡単にそのひ弱そうな自称魔王のキサールの蹴りを簡単に受けてしまい、吹き飛ばされてしまっていた。
 ただ魔神ドロスは両腕の痛みだけが耐え難い苦痛であって、キサールに蹴られたダメージは殆どなかったのである。

 だがそんな事とは知らず自称魔王のキサールが、その台座の前で魔神ドロスとは違う別の何かの呪文を唱えだした。
「・・・Ioh Zufagen求む Du  Von Zauber魔力Dasein存在 Einfluss影響 Geben与えし Dunkelhelt暗闇 Von  IohGlauben信仰する Lexikon目録 Von  Kenntnis知識・・・!?」

 すると台座に置いていた卵が、宙に浮かび上がり、その台座が砕け散り内部に溜まっていた魔力がキサールの体内に吸い込まれていったのである。

 その様子を少し遠くに離れていたマリア達は、不思議に思っていたのである。
「えっ、えっ、どう言う事なの・・・あれって、なんで?さっきまで仲間割れしてたのに・・・それにあいつ姿が変わってない、どう言うこと・・・?」
『およっ?ホントだね。良く見ると腕も再生してるね?』
 アリアはボロボロだった魔人族の様子がおかしい事に気が付き、みんなに確認した。するとまずその様子を一緒にいたファルが答えた。

 続けてこの緊迫しているなかで?・・・いや、それは全くないが、休憩がてら食事をしていた面々がそちらの方を見て答えた。

「モグモグ・・・ゴックン。あっ、ホントだ!でも・・・あいつたいした事無いね?全然強くないよね」
「あっ、でもまだ、なにかしようとしているようだよ。へんな呪文唱えてるし、魔法陣も使用して消滅しましたから」
 アリアとファルの言葉に、最初はミーアが口に入れていた物を飲み込み答え、ロンも確認した後、すでに魔法陣の効力がなくなっているのに気が付いた。

 その言葉を聞きヤケ食いをしていた月姫が、慌てて口の中のモノを飲み込みみんなに確認していた。
『ガツガツ、モグモグ、ウグウグ・・・ゴックン。あっ、ねぇ、ねぇ、これって、もう本気出してもいいんだよね!ねっ、ねっ、ね。魔法陣なくなったみたいだし・・・あっ、でも強い奴いないのか・・・ガックリっ・・・』
 しかし、月姫は既にこの周りに、強い力を持った者がいない事を感じて再び落ち込んでしまった。

『お姉様落ち込まないで下さい。まだ、解りませんよ。もしかしたら・・・』
 そんな月姫を雪姫が慰めていたが、転移門の前では自称魔王のキサールが不気味な呪文を唱え続けていたのであった。

 それで現在転移門の前で広げられている光景を見ていると、ついに自称魔王のキサールに変化が見え出したのである。
「ふはははっ、これで!これでようやく私も魔神になれるのだぁぁぁぁ、はぁぁっはっはっはぁ・・・」
 高笑いで大げさに魔神になれると言い放っていたのである。

 その言葉と同時くらいに辺りがまた、怪しい光に照らされて、水蒸気のような霧が立ち込めていたが、ドロスの時と違い、あくまでそいつの周りだけが見えない状態になっただけであった。

 『なんか、あの姿が見えなくなった、あいつ魔神になるとか言ってるけど、大丈夫かな?それにさっき蹴飛ばされた魔神も徐々にだけど回復してるみたいだよ』
「えっ、よく聞えるねファルちゃん?でも、あいつそんな事言ってるの?雪ちゃん達も聞えるの」

『ええ、聞えますよアリア様、ファルお姉様が言いますように、あの方は先程までは魔王とか自分で言ってましたけど、今度は魔神とか言ってますね。でも、何故でしょう?それほど脅威でもないですよね。先程の魔神の方がかなり強かったですし、話し声もテレパシーに近い感じでみんなに聞えましたから相当魔力が強かったのですが・・・。でも、あの方は今のところは・・・』
 雪姫が、アリアに説明していると、何故か先程までガックリと落ち込んでいた月姫が、ワクワクとして期待の眼差しで、相手の自称魔王のキサールを見たいたのである。

『あいつ、強くなるかな?今は大した事ないけど、魔神になったら、あそこで転がってる奴より強くなるかな。ねっ、ファルファル!』
『いや、月ちゃん。あんまり期待しない方がいいよ。元があれじゃそんなに強くならないと思うし・・・。それにどっちかって言うと、さっきの奴の方が回復してるから・・・』

 ファルの言うとおり少し離れて倒れていた魔神ドロスは、今の時点でかなり体力と魔力が、驚異的な速さで回復している状態になっていたのである。
 恐らくこの場所にあった魔法陣の効力が無くなったので、周囲に漂う残留していた魔素を自分で無意識のウチに取り込んで回復したのだろう。だが、まだ完全に覚醒しておらず、側にいる自称魔王のキサールの視線を向け唖然とした表情で、大人しくキサールの言葉を聞き今の様子を見ていたのであった。

 それでその自称魔王キサールは意気揚々と、自分が強くなっていると勘違いして大声をあげて笑って、魔神へと進化を行い出していたのである。・・・が、しかし、現状の力は全く違う大した事のなく、かもし出す雰囲気が全然すごくなかったのである。
 
 それに魔王であったドロスが魔神へと変化した時は、流石のアリアはもちろんの事、ロンもミーアも余りの恐怖で動けなかった。それにファルと雪姫も気分が悪くなっていたけど、現状の自称魔王のキサールの変化に関しては、萎縮する事なく恐怖等はまったくなかった。

 それに何故か全員、呆れた表情をしてその状況を大人しく見ていたのであった。
「なあ、あいつは・・・さっきの奴より・・・全然すごくないよな。同じ様な変化みたいだけど?恐怖を感じないし、この気はすごくないよなあきらかに・・・」
「うん、ミーアもそう思うの。なんでだろうね、ホントにたいした事、無いのかな?まだ、さっきの奴の方がすごいよこれだったら」
 ロンとミーアは、魔王ドロスが魔神になった時は、萎縮して恐怖で殆ど動けずいたが、今回の奴はまったくと言っていいほど何も感じなかったのである。それは耐性が出来たからなどではなく、今、魔神へと進化しているキサールが根本的にたいした事が無く、弱すぎた為に何も感じていなかったのあった。

 そんな事をアリア達みんなが考えていると、自称魔王のキサールが魔神?へと進化が終了したのか、自身の周りに漂っていた水蒸気のような中より、姿を現して静に周囲を見渡していたのである。

 その光景を結界の外で見たいた冒険者達は恐怖していたのである。それにまた、数人ほどの冒険者達がその場で白目をむいて気絶していたのであった。



 そんな事が結界の外であっている等は中にいる者は全く気付かず、その水蒸気から出てきた魔神に視線を向けていたが、意識を失って寝ていたユウマに変化があったので、みんなそちらに視線を向けていたのである。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

追放聖女。自由気ままに生きていく ~聖魔法?そんなの知らないのです!~

夕姫
ファンタジー
「アリーゼ=ホーリーロック。お前をカトリーナ教会の聖女の任務から破門にする。話しは以上だ。荷物をまとめてここから立ち去れこの「異端の魔女」が!」 カトリーナ教会の聖女として在籍していたアリーゼは聖女の証である「聖痕」と言う身体のどこかに刻まれている痣がなくなり、聖魔法が使えなくなってしまう。 それを同じカトリーナ教会の聖女マルセナにオイゲン大司教に密告されることで、「異端の魔女」扱いを受け教会から破門にされてしまった。そう聖魔法が使えない聖女など「いらん」と。 でもアリーゼはめげなかった。逆にそんな小さな教会の聖女ではなく、逆に世界を旅して世界の聖女になればいいのだと。そして自分を追い出したこと後悔させてやる。聖魔法?そんなの知らないのです!と。 そんなアリーゼは誰よりも「本」で培った知識が豊富だった。自分の意識の中に「世界書庫」と呼ばれる今まで読んだ本の内容を記憶する能力があり、その知識を生かし、時には人類の叡知と呼ばれる崇高な知識、熟練冒険者のようなサバイバル知識、子供が知っているような知識、そして間違った知識など……旅先の人々を助けながら冒険をしていく。そうこれは世界中の人々を助ける存在の『聖女』になるための物語。 ※追放物なので多少『ざまぁ』要素はありますが、W主人公なのでタグはありません。 ※基本はアリーゼ様のほのぼの旅がメインです。 ※追放側のマルセナsideもよろしくです。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名
ファンタジー
★2024年9月19日に2巻発売&コミカライズ化決定!(web版とは設定が異なる部分があります) 🔷第16回ファンタジー小説大賞。5/3207位で『特別賞』を受賞しました!!応援ありがとうございます(*^_^*) 💛小説家になろう累計PV1,780万以上達成!! ※感想欄を読まれる方は、申し訳ありませんがネタバレが多いのでご注意下さい<m(__)m>    スーパーの帰り道、突然異世界へ転移させられた、椎名 沙良(しいな さら)48歳。  残された封筒には【詫び状】と書かれており、自分がカルドサリ王国のハンフリー公爵家、リーシャ・ハンフリー、第一令嬢12歳となっているのを知る。  いきなり異世界で他人とし生きる事になったが、現状が非常によろしくない。  リーシャの母親は既に亡くなっており、後妻に虐待され納屋で監禁生活を送っていたからだ。  どうにか家庭環境を改善しようと、与えられた4つの能力(ホーム・アイテムBOX・マッピング・召喚)を使用し、早々に公爵家を出て冒険者となる。  虐待されていたため貧弱な体と体力しかないが、冒険者となり自由を手にし頑張っていく。  F級冒険者となった初日の稼ぎは、肉(角ウサギ)の配達料・鉄貨2枚(200円)。  それでもE級に上がるため200回頑張る。  同じ年頃の子供達に、からかわれたりしながらも着実に依頼をこなす日々。  チートな能力(ホームで自宅に帰れる)を隠しながら、町で路上生活をしている子供達を助けていく事に。  冒険者で稼いだお金で家を購入し、住む所を与え子供達を笑顔にする。  そんな彼女の行いを見守っていた冒険者や町人達は……。  やがて支援は町中から届くようになった。  F級冒険者からC級冒険者へと、地球から勝手に召喚した兄の椎名 賢也(しいな けんや)50歳と共に頑張り続け、4年半後ダンジョンへと進む。  ダンジョンの最終深部。  ダンジョンマスターとして再会した兄の親友(享年45)旭 尚人(あさひ なおと)も加わり、ついに3人で迷宮都市へ。  テイムした仲間のシルバー(シルバーウルフ)・ハニー(ハニービー)・フォレスト(迷宮タイガー)と一緒に楽しくダンジョン攻略中。  どこか気が抜けて心温まる? そんな冒険です。  残念ながら恋愛要素は皆無です。

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

処理中です...