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第81話 わしの目に狂いはなかった
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ロイズさんに案内された部屋に行くと、既に食事の準備が整っていて俺達の着席を待つばかりだった。出された料理は手が込んでいるだけでなく、味付けも抜群の旨さであっという間に全ての料理を食べてしまった。
ロイズさんは従魔にも理解があって、差別する事なく普通に接してくれているので一々気を遣わなくてもいいのはとても助かる。ごく少数だが人によっては露骨に従魔を避けようとする人もいるのでね。
「ロイズさん、出された料理全てがとても旨かったです」
「それは何よりだ。おまえさんがそう言っていたと料理人達に伝えておくよ。きっと喜ぶに違いない。ところで、その従魔は何も食べていないが平気なのかね?」
「ええ、大丈夫なようですよ。詳しい事情は言えませんが、俺は従魔と完全な意思疎通が出来るんです。声には出しませんが普通に人と話すように会話が可能なので、さっきこの二匹に確認したら今はいらないと言ってました」
「ほう、それは素晴らしいじゃないか。従魔と完全な意思疎通が出来るとは驚きだ。それは従魔との会話が人と同じように普通に問題なく成り立っているという認識で間違いないのかい?」
「その通りです。試しに今から従魔に声を掛けずにある事をやらせます。事前に何をやらせるかは紙に書いてロイズさんだけに伝えておきます。なので、ちょっと待っていて下さい」
俺は懐から紙とペンを出して今から従魔にやらせる内容を紙に書いていく。そうだな、何をやらせようか。俺が合図を出したらコルには宙返りをさせてマナにはロイズさんの脇に行かせてその場で三回ほど回ってもらおうか。
それらを紙に書いて確認した後でロイズさんの手に渡す。ロイズさんは俺から渡された紙に書かれた文字を確認して口に出さずに頷くことで俺への返事とした。
『コル、マナ。悪いけどおまえ達に頼みがあるんだ』
『『何ですか?』』
『俺が合図をしたらコルはその場で宙返りをしてくれ。マナはロイズさんの脇に行ってそこで三回ほどくるくると回ってくれないか?』
『僕は宙返りをすればいいんですね』
『私はあの人の脇に行って三回くるくると優雅に回ればよろしいのですね』
『そうだ、俺が右手を上げたらやってくれ。行くぞ!』
俺はロイズさんやコルとマナに見えるように右手を高々と上げて合図を出した。すると、打ち合わせ通りにコルはその場で飛び上がって綺麗な宙返りを決め、マナはとことことロイズさんの脇まで歩いて行き、三回くるくると回った後にロイズさんに向けてお辞儀までしてくれた。
その一部始終を見ていたロイズさんは、身じろぎもせずに固まったまま呆気に取られた顔で目を丸くしている。どうやらこの試みは大成功のようだな。
「これは素晴らしい。おまえさんが紙に書いてわしに渡してくれたのと同じ動作をこの従魔達がするのを見たからには君との意思疎通が完璧に出来ていると信じるしかないようだ」
「褒めてもらって光栄です。これが出来るのも従魔が賢いからですけどね。今は俺の家族同然の存在です」
「ふむ、きっかけはあの干し肉とはいえ短期間にこれほどの従魔を手懐け、コウトの街の部隊長に上り詰める実力。それだけでなく青巾賊の襲来を知謀を駆使して見事に撃退するというあっぱれな活躍ぶり。やはりわしの目に狂いはなかったようだ。さすがガウディの名を受け継ぐだけの事はあるのう」
何だかロイズさんが顎に手を当てて思案顔をしながらブツブツと独り言を言ってるようだが声が小さいので良く聞こえないな。
「ロイズさん、何か言いましたか?」
「いや、独り言じゃ。気にせんでもいい。それよりも暫くはこのサゴイの街に滞在出来るのじゃろう?」
「ええ、一週間くらいの行程を組んでますので数日は滞在する予定です。参考になるものがないか街中も見て回りたいですからね」
「そうか、ならば滞在中はこの館に宿泊すればいい。いつでも自由に出入り出来るように便宜を図っておくのでな。わしはこれから他の者と会う予定があるから部屋の用意やもてなしはおまえさんをここまで案内させた者に言いつけておこう」
「ありがとうございます」
ロイズさんが手を叩くと、どこかで控えていた給仕係がやってきて残った食器類を片付け始めた。俺とロイズさんは席から立ち上がって食事をした部屋から出て行き最初に案内された応接室に向かった。
「ここで待っていてくれんか。すぐに部屋を用意させるのでな。その後は部屋でくつろぐなり街に出るなり好きに過ごして構わないよ。わしはこれから会う者との話し合いの為に一旦自分の執務部屋に戻って必要な資料の確認をするつもりだ」
そう言ってロイズさんが応接室を出ていって暫くすると、この館に来た時に俺を応接室へ案内してくれた人がやってきて、俺が今晩から泊まる部屋に連れて行ってくれた。その部屋は三階にあってこの居館の外観の奇抜さに比べると落ち着いた感じの部屋だった。さすがに建物の中は普通なんだなと変なところで安心してしまったよ。
「何かご用向きがあれば、廊下の突き当りの部屋に私か他の者が居りますので何なりとご用命ください」
そう言い残して案内してくれた人は去っていったので、俺は慣れない正装の服装を脱いで普段着に着替えてこれからどうしようかと思案を始めた。
まだ夕方まではかなりの時間があるし、サゴイの街の中を少し歩いてみようかな。そう決めた俺はさっき教えてもらった突き当りの部屋へ歩いて行き、部屋の中にいた人にその旨を伝えると一枚のカードを渡された。これを門番に見せればいいらしい。
なるほど、これがさっきロイズさんが言っていたいつでも自由に出入り出来る便宜とやらだったのか。そのカードを受け取った俺は従魔を連れてサゴイの街へと繰り出していった。
ロイズさんは従魔にも理解があって、差別する事なく普通に接してくれているので一々気を遣わなくてもいいのはとても助かる。ごく少数だが人によっては露骨に従魔を避けようとする人もいるのでね。
「ロイズさん、出された料理全てがとても旨かったです」
「それは何よりだ。おまえさんがそう言っていたと料理人達に伝えておくよ。きっと喜ぶに違いない。ところで、その従魔は何も食べていないが平気なのかね?」
「ええ、大丈夫なようですよ。詳しい事情は言えませんが、俺は従魔と完全な意思疎通が出来るんです。声には出しませんが普通に人と話すように会話が可能なので、さっきこの二匹に確認したら今はいらないと言ってました」
「ほう、それは素晴らしいじゃないか。従魔と完全な意思疎通が出来るとは驚きだ。それは従魔との会話が人と同じように普通に問題なく成り立っているという認識で間違いないのかい?」
「その通りです。試しに今から従魔に声を掛けずにある事をやらせます。事前に何をやらせるかは紙に書いてロイズさんだけに伝えておきます。なので、ちょっと待っていて下さい」
俺は懐から紙とペンを出して今から従魔にやらせる内容を紙に書いていく。そうだな、何をやらせようか。俺が合図を出したらコルには宙返りをさせてマナにはロイズさんの脇に行かせてその場で三回ほど回ってもらおうか。
それらを紙に書いて確認した後でロイズさんの手に渡す。ロイズさんは俺から渡された紙に書かれた文字を確認して口に出さずに頷くことで俺への返事とした。
『コル、マナ。悪いけどおまえ達に頼みがあるんだ』
『『何ですか?』』
『俺が合図をしたらコルはその場で宙返りをしてくれ。マナはロイズさんの脇に行ってそこで三回ほどくるくると回ってくれないか?』
『僕は宙返りをすればいいんですね』
『私はあの人の脇に行って三回くるくると優雅に回ればよろしいのですね』
『そうだ、俺が右手を上げたらやってくれ。行くぞ!』
俺はロイズさんやコルとマナに見えるように右手を高々と上げて合図を出した。すると、打ち合わせ通りにコルはその場で飛び上がって綺麗な宙返りを決め、マナはとことことロイズさんの脇まで歩いて行き、三回くるくると回った後にロイズさんに向けてお辞儀までしてくれた。
その一部始終を見ていたロイズさんは、身じろぎもせずに固まったまま呆気に取られた顔で目を丸くしている。どうやらこの試みは大成功のようだな。
「これは素晴らしい。おまえさんが紙に書いてわしに渡してくれたのと同じ動作をこの従魔達がするのを見たからには君との意思疎通が完璧に出来ていると信じるしかないようだ」
「褒めてもらって光栄です。これが出来るのも従魔が賢いからですけどね。今は俺の家族同然の存在です」
「ふむ、きっかけはあの干し肉とはいえ短期間にこれほどの従魔を手懐け、コウトの街の部隊長に上り詰める実力。それだけでなく青巾賊の襲来を知謀を駆使して見事に撃退するというあっぱれな活躍ぶり。やはりわしの目に狂いはなかったようだ。さすがガウディの名を受け継ぐだけの事はあるのう」
何だかロイズさんが顎に手を当てて思案顔をしながらブツブツと独り言を言ってるようだが声が小さいので良く聞こえないな。
「ロイズさん、何か言いましたか?」
「いや、独り言じゃ。気にせんでもいい。それよりも暫くはこのサゴイの街に滞在出来るのじゃろう?」
「ええ、一週間くらいの行程を組んでますので数日は滞在する予定です。参考になるものがないか街中も見て回りたいですからね」
「そうか、ならば滞在中はこの館に宿泊すればいい。いつでも自由に出入り出来るように便宜を図っておくのでな。わしはこれから他の者と会う予定があるから部屋の用意やもてなしはおまえさんをここまで案内させた者に言いつけておこう」
「ありがとうございます」
ロイズさんが手を叩くと、どこかで控えていた給仕係がやってきて残った食器類を片付け始めた。俺とロイズさんは席から立ち上がって食事をした部屋から出て行き最初に案内された応接室に向かった。
「ここで待っていてくれんか。すぐに部屋を用意させるのでな。その後は部屋でくつろぐなり街に出るなり好きに過ごして構わないよ。わしはこれから会う者との話し合いの為に一旦自分の執務部屋に戻って必要な資料の確認をするつもりだ」
そう言ってロイズさんが応接室を出ていって暫くすると、この館に来た時に俺を応接室へ案内してくれた人がやってきて、俺が今晩から泊まる部屋に連れて行ってくれた。その部屋は三階にあってこの居館の外観の奇抜さに比べると落ち着いた感じの部屋だった。さすがに建物の中は普通なんだなと変なところで安心してしまったよ。
「何かご用向きがあれば、廊下の突き当りの部屋に私か他の者が居りますので何なりとご用命ください」
そう言い残して案内してくれた人は去っていったので、俺は慣れない正装の服装を脱いで普段着に着替えてこれからどうしようかと思案を始めた。
まだ夕方まではかなりの時間があるし、サゴイの街の中を少し歩いてみようかな。そう決めた俺はさっき教えてもらった突き当りの部屋へ歩いて行き、部屋の中にいた人にその旨を伝えると一枚のカードを渡された。これを門番に見せればいいらしい。
なるほど、これがさっきロイズさんが言っていたいつでも自由に出入り出来る便宜とやらだったのか。そのカードを受け取った俺は従魔を連れてサゴイの街へと繰り出していった。
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