1 / 64
俺の番が見つからない
しおりを挟む
初めて小説に挑戦しています。ゆるゆる設定・適当な造語・誤字脱字など、なんでも許せる方向け。
生温かく見守っていただけるとウレシいです_φ( ̄ー ̄ )
* ** * ** * ** * ** * *** ** * ** * ** * ** *
00. プロローグ
雲一つない青空に遠雷と思しき轟音が耳を劈く、その方角を見やると視界に映ったのは巨大な姿。
近くにいた騎士団の精鋭がガルドゥーン帝国の皇族たる俺と兄弟たちを守るべく前に立ち剣を構える。
幾人かは攻撃に備え獣化し、また魔剣士たちも詠唱を始めんとしている。
翡翠色に輝く巨体は竜の持つ独自で強烈な存在感を放ちながら演習場の片隅にゆったりと降り立った。
横に広げられていた大きな翼が頭上に伸ばしあげられたかと思うと、あっと言う間にキラキラ光る鱗粉を撒き散らしながらシュルシュルと縮み人型を取った。
「私の!私の番!ああ、なんて愛しい!」
翡翠色の髪をなびかせた細身の姿が足早に近寄ってくる。
恐ろしいほど端正な顔を上気させ、オレンジ色の瞳を潤ませている。
竜人か、奴らには感情はないのではなかったのか、どこか他人事のように冷静に見ている自分がいて不思議に思う。
が、しかし真っ直ぐ自分に向かってくる姿にハッと正気に戻り、ついに俺にも番が現れたのだと歓喜した。
その昔、俺がまだ幼かったころ(オレ4歳)当時、成人前の第一皇子の異腹兄が半身たる番を得たときのことが蘇る。
常に沈着冷静でカッコイイ兄が驚くほど無様に惚ける姿にがっかりした。
その一方でその二人の甘やかな雰囲気に強く憧れたもした。それから早20年…
獣人の我らにとって番は代替できるものでない。
更に魂の番となるとそれは至上である。
そしてその番を探し出す能力は個体の持つ生命力や魔力、能力の強さに比例しており、多くのものが10代で番を得る。
俺は生まれながらに一族の中でもずば抜けて、個の持つ生命力や身体能力が強く、そして指導者たるオーラの輝きもその資質も強いと言われていた。
加えて、獣人には少ない魔力すらも大きく、力が全ての獣人国では、幾人もいる兄たちをおいて、次世代の皇帝になるだろうと目されていた。
そんな中、同腹妹の番祝いを行ってから既に10年…(オレ14歳)
俺の番は見つからなかった。その理由は判っている、ホロウ病の罹患だ。
有史以来、2~300年毎に10~20年程、あらゆる天災、災厄があちこちで起きる。
日照り、洪水、台風、地震、火山の噴火、伝染病の大流行、魔物のスタンピート、そしてそれらを理由とした国同士の諍いや大戦など、次々に襲いかかる様々な試練に耐え切れず滅んだ王国や種族は数え切れない。
そしてこの病はその災厄の一つで、別名「獣人殺し」という。
症状はちょっとした倦怠感から始まり、下痢、嘔吐、高熱と続き、かゆみのあるピンク色の鮮やかな発疹が身体中広まり、それが落ち着いた頃に全身の関節が激しく痛み悶え苦しむというものだ。
人族であれば50%の確率で死亡し、生き残っても五感である視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のいずれかの感覚が無くなる、または鈍くなるとされている。
峠を越えたものの多くは二週間程で苦痛から解放されるのだが、体力のある獣人の場合はその死亡率が20%ほど減少する。が、しかし後に恐ろしい精神的苦痛が待っている。
それは獣人にとって生きる意味である番が感知できなくなるというものだ。
ピンク色の発疹を自身に見た途端、絶望のあまり狂死してしまう獣人もおり、完治10年後の生存率が30%を切る研究結果もある。
獣人国の最高学府はもとより、各国で研究が進められた結果、根本的予防や完治方法は解明されていないが、症状緩和、罹患期間短縮、そして損なわれた能力回復の方法も幾つか見つかっている。
俺は12歳で罹患してしまったが、己の体力・精神力が強過ぎて発狂することもでなかった。
しかもまた運の悪いことに開発されたどの方法でも番感知能力が回復せず、未だ半身を得られずにいた。
渇望、嫉妬、絶望を繰り返し、それを度々起こる苛烈な最前線で紛らわせた。
そうしていつの間にか多くの部下たちの信望を集めることになり、数多の武功を生み出すことになった。
今や、一族のみならず、元老院、主たる貴族の信任を得て、第一皇太子という地位に就いてしまった。
番が見つかれば、今いる第二皇太子、第三皇太子は任を解かれ、唯一の皇太子となる。
そして、今まさに長年の苦しみから解放されるときが来たのだ!
神よ!感謝します!ああ、俺の美しい番!迎えに行けなかった俺を許してくれ!
目の前にまで来た半身を抱きしめるために、両手を広げる。
翡翠色の長髪は優しく俺の頬を撫で、
通り過ぎ、
真後ろにいた5歳になったばかりの末弟の前で跪いたのだった。
*****
お約束ですよねd( ̄  ̄)
直後日談
「ああ、私の番よ」
「あなたがぼくのつがい?」
「おお、なんてことだ。まだ、感じられないのだね。こんなにも芳しく私を求めているのに」
切なそうに竜人は言う。
「あなたがぼくのつがいなら、とてもうれしい!だって、こんなにキレイなんだもの」
「ね、あにうえ、そうでしょう?」
末弟は大好きな兄に向かって無邪気な笑顔で話しかけたのだった。
生温かく見守っていただけるとウレシいです_φ( ̄ー ̄ )
* ** * ** * ** * ** * *** ** * ** * ** * ** *
00. プロローグ
雲一つない青空に遠雷と思しき轟音が耳を劈く、その方角を見やると視界に映ったのは巨大な姿。
近くにいた騎士団の精鋭がガルドゥーン帝国の皇族たる俺と兄弟たちを守るべく前に立ち剣を構える。
幾人かは攻撃に備え獣化し、また魔剣士たちも詠唱を始めんとしている。
翡翠色に輝く巨体は竜の持つ独自で強烈な存在感を放ちながら演習場の片隅にゆったりと降り立った。
横に広げられていた大きな翼が頭上に伸ばしあげられたかと思うと、あっと言う間にキラキラ光る鱗粉を撒き散らしながらシュルシュルと縮み人型を取った。
「私の!私の番!ああ、なんて愛しい!」
翡翠色の髪をなびかせた細身の姿が足早に近寄ってくる。
恐ろしいほど端正な顔を上気させ、オレンジ色の瞳を潤ませている。
竜人か、奴らには感情はないのではなかったのか、どこか他人事のように冷静に見ている自分がいて不思議に思う。
が、しかし真っ直ぐ自分に向かってくる姿にハッと正気に戻り、ついに俺にも番が現れたのだと歓喜した。
その昔、俺がまだ幼かったころ(オレ4歳)当時、成人前の第一皇子の異腹兄が半身たる番を得たときのことが蘇る。
常に沈着冷静でカッコイイ兄が驚くほど無様に惚ける姿にがっかりした。
その一方でその二人の甘やかな雰囲気に強く憧れたもした。それから早20年…
獣人の我らにとって番は代替できるものでない。
更に魂の番となるとそれは至上である。
そしてその番を探し出す能力は個体の持つ生命力や魔力、能力の強さに比例しており、多くのものが10代で番を得る。
俺は生まれながらに一族の中でもずば抜けて、個の持つ生命力や身体能力が強く、そして指導者たるオーラの輝きもその資質も強いと言われていた。
加えて、獣人には少ない魔力すらも大きく、力が全ての獣人国では、幾人もいる兄たちをおいて、次世代の皇帝になるだろうと目されていた。
そんな中、同腹妹の番祝いを行ってから既に10年…(オレ14歳)
俺の番は見つからなかった。その理由は判っている、ホロウ病の罹患だ。
有史以来、2~300年毎に10~20年程、あらゆる天災、災厄があちこちで起きる。
日照り、洪水、台風、地震、火山の噴火、伝染病の大流行、魔物のスタンピート、そしてそれらを理由とした国同士の諍いや大戦など、次々に襲いかかる様々な試練に耐え切れず滅んだ王国や種族は数え切れない。
そしてこの病はその災厄の一つで、別名「獣人殺し」という。
症状はちょっとした倦怠感から始まり、下痢、嘔吐、高熱と続き、かゆみのあるピンク色の鮮やかな発疹が身体中広まり、それが落ち着いた頃に全身の関節が激しく痛み悶え苦しむというものだ。
人族であれば50%の確率で死亡し、生き残っても五感である視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のいずれかの感覚が無くなる、または鈍くなるとされている。
峠を越えたものの多くは二週間程で苦痛から解放されるのだが、体力のある獣人の場合はその死亡率が20%ほど減少する。が、しかし後に恐ろしい精神的苦痛が待っている。
それは獣人にとって生きる意味である番が感知できなくなるというものだ。
ピンク色の発疹を自身に見た途端、絶望のあまり狂死してしまう獣人もおり、完治10年後の生存率が30%を切る研究結果もある。
獣人国の最高学府はもとより、各国で研究が進められた結果、根本的予防や完治方法は解明されていないが、症状緩和、罹患期間短縮、そして損なわれた能力回復の方法も幾つか見つかっている。
俺は12歳で罹患してしまったが、己の体力・精神力が強過ぎて発狂することもでなかった。
しかもまた運の悪いことに開発されたどの方法でも番感知能力が回復せず、未だ半身を得られずにいた。
渇望、嫉妬、絶望を繰り返し、それを度々起こる苛烈な最前線で紛らわせた。
そうしていつの間にか多くの部下たちの信望を集めることになり、数多の武功を生み出すことになった。
今や、一族のみならず、元老院、主たる貴族の信任を得て、第一皇太子という地位に就いてしまった。
番が見つかれば、今いる第二皇太子、第三皇太子は任を解かれ、唯一の皇太子となる。
そして、今まさに長年の苦しみから解放されるときが来たのだ!
神よ!感謝します!ああ、俺の美しい番!迎えに行けなかった俺を許してくれ!
目の前にまで来た半身を抱きしめるために、両手を広げる。
翡翠色の長髪は優しく俺の頬を撫で、
通り過ぎ、
真後ろにいた5歳になったばかりの末弟の前で跪いたのだった。
*****
お約束ですよねd( ̄  ̄)
直後日談
「ああ、私の番よ」
「あなたがぼくのつがい?」
「おお、なんてことだ。まだ、感じられないのだね。こんなにも芳しく私を求めているのに」
切なそうに竜人は言う。
「あなたがぼくのつがいなら、とてもうれしい!だって、こんなにキレイなんだもの」
「ね、あにうえ、そうでしょう?」
末弟は大好きな兄に向かって無邪気な笑顔で話しかけたのだった。
0
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説


異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい@受賞&書籍化
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!

白猫は異世界に獣人転生して、番に愛される
メリー
恋愛
何か大きい物体に轢かれたと思った。
『わん、わん、』と言う大きい音にびっくりして道路に思わず飛び込んでしまって…。
それなのにここはどこ?
それに、なんで私は人の手をしているの?
ガサガサ
音が聞こえてその方向を見るととても綺麗な男の人が立っていた。
【ようやく見つけた。俺の番…】

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!
カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から21年前の物語となります。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?


貴方の隣で私は異世界を謳歌する
紅子
ファンタジー
あれ?わたし、こんなに小さかった?ここどこ?わたしは誰?
あああああ、どうやらわたしはトラックに跳ねられて異世界に来てしまったみたい。なんて、テンプレ。なんで森の中なのよ。せめて、街の近くに送ってよ!こんな幼女じゃ、すぐ死んじゃうよ。言わんこっちゃない。
わたし、どうなるの?
不定期更新 00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる