劣化品

稲木 糸

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はじまり

03

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お母さんは泣き崩れていた。

私はただただその幸せそうな顔をしゃがんで眺めている。

あー多分。

月はこの方が良かったんだな。

少しすると、唯斗くんのお母さんと優斗くんがやってくる。

「嘘っ!唯斗!?」

と泣き崩れる。

優斗くんは私の隣にやって来て私にならい横にしゃがみ込む。

「なんか幸せそう」

私が思っている事と同じ言葉を優斗くんは呟いた。

「死んじゃってるのにね」

「本当かな?」

「でも、血出てるし」

優斗くんは月と唯斗くんの周りをくるっと1周回る。

「手繋いでる。やっぱり仲良しだね」

「そうだね」

「泣かないの?」

「うん。なんかこれで良かったんじゃないかなって」

「そうだね」






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