上 下
51 / 90
過去を乗り越えて

視線の理由

しおりを挟む
 カイルの冒険者登録の時の嫌な感じのせいでそれから冒険者ギルドへと足を向けていなかったのだ。
 少し気は重かったが命には代えられずギルドへとやってきた。

「こんにちは。」

 また嫌な視線を感じる。すごい居心地が悪い、今日はティアナさんがいるみたいなので早く用事を済ませて帰ろう。
 そう思いティアナさんに話しかけたらすぐに中に連れていかれた。
 何事だろう、こんなことは始めて、、、いやこの間、疑いをかけられた時も連れてこられたな。
 だが今回はティアナさんだけみたいだ、だがティアナさんの顔が真剣なので怖い。

「コウさん、この方は?」

 そういえばティアナさんはカイルと始めましてだったな、紹介しておかねば。

「ティアナ、この少年はカイルといいます。新しく俺の仲間になりました。」

「ようやく、コウさんも仲間をつくったんですね。よかったです、やっぱり1人だとリスクが高いですので。」

「コウさん、最近ギルドに来た時の皆さんの反応が変だと思いませんか?」

 どうやら最近の嫌な視線の理由をティアナさんは知っているようである。

「最近、嫌な視線を感じるので、近寄らないようにしていたんですが、ティアナさんは理由をご存知なんですね。」

「やっぱり。何か直接的な被害とかはなかったですか?」

「いえ、直接的な被害とかはないです。何が起きてるんですか?」

「実は最近、コウさんに関しての噂が流れてるんです。」

 噂か~、噂とは怖いものである。
 本当のことなら仕方ないが、嘘でも大多数が信じてしまったら推定有罪である。
 本当がどうなんて証明は難しく、証明しても疑いは残るのだ。本当にやっかいである。

「噂ですか。」

「はい、噂です。この間のスモッグヘッドの件に関してです。」

 やっぱりスモッグヘッドに関してか、でも俺は何も悪いことはしてないけどな。

「それで噂とはどういったものなんですか?」

「大変言い辛いんですが、噂はコウさんとジルさんに嵌められたスモッグヘッドの皆さんが借金漬になり、その後コウさんにより奴隷に落とされ、スモッグヘッドの皆さんを売ったお金で自分は奴隷を買ったという噂です。私は一連の流れを知っているので正しい話を教えるんですけど噂の発信源がこの間Bランクに昇格された火竜の咆哮のバットさんなんですよ。ジルさんのいない中、火竜の咆哮が現在このギルドの最高ランクの冒険者になるのでそれもあってコウさんが悪者になっています。」

 なるほど、巧妙な噂だな。
 確かに俺とジルが組んでいたという前提ならスモッグヘッドを嵌めてお金を巻き上げたと思われるな。
 そしてスモッグヘッドを返り討ちにした俺は奴隷商ではなく借金取りに引き渡したんだがその後に奴隷商に連れて行かれてるから、奴隷商に売ったと思われても仕方ない。
 ここまででも冒険者を嵌めて奴隷商に売る奴というイメージは最悪だ。
 そのお金で奴隷を買ったというイメージがついたのなら俺への反感は相当なものだな。
 事実からこうなってもおかしくないという絶妙加減。これを考えた奴は相当性格が悪いな。
 この悪意を考えると、俺に恨みを持ってるな。一難去ってまた一難である。
 俺ってこんなに恨みを買いやすい性格だったっけな、ショックである。
 まだ実害がある訳ではないが少し対策を考えておくか。

「教えていただいて、ありがとうございました。」

「いえ、大したことじゃないですよ。こちらこそ、噂を正せなくてすみません。」

「ティアナさんはよくしていただいているので、謝らないでください。」

「そう言ってもらってありがとうございます。話は替わるのですが、コウさん達はパーティー登録はされましたか?」

「パーティー登録ですか、詳しく教えてもらってもいいですか?」

 パーティー登録、久しぶりに異世界っぽい単語がでてきたぞ。

「冒険者の皆さんはだいたいパーティーを組んで活動しています。ですが戦闘になると前衛、後衛や攻撃役、盾役等によってパーティー内でも魔物を倒した経験値はバラつきが出てきますがそれだとパーティー内格差がでてきますよね。なので戦神様はこの格差を無くすため、5人までパーティー登録をすると均等な経験値配分ができるようになります。そしてパーティーメンバーの生死確認ができます。登録は簡単なので利用してみてください。」

 わ~お、RPGの世界だ。
 だがこれを使えばパワーレベリングが可能である、ジルはパワーレベリングのお手伝いに行ったのか、納得である。
 これは使わない手はない、早速やってみよう。
 俺はティアナさんに教えてもらいながら登録をしてみる。

 俺とカイルは冒険者カードを重ね、「「パーティー登録」」と唱えると冒険者カードにパーティーという文言とカイルの名前があらわれる。
 わりと簡単にできるんだな、簡単で便利となるとデメリットはないんだろうか?教えて、ティアナ先生!ということで尋ねた。

「デメリットですか、このパーティーシステムは先程と同じように冒険者カードを重ね、パーティー解散と言わなければなりません。パーティーは5人となり、解散するか死ぬしかパーティーから外れる方法しかないので、簡単にパーティー登録をして寄生されるということがあるので、登録相手だけはしっかり選んでください。」

 寄生か、やっぱりこの世界でもいるんだな。
 パーティー登録を簡単にするなよってことか、気をつけよう。
 こうしてティアナ先生のパーティー講座は終了した。
 そして帰り際にティアナから重要な情報を教えてもらった。

「まだ確定情報じゃないですが、もう少ししたら冒険者に緊急招集がかかると思います。内容はゴブリン集落の壊滅依頼です。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

処理中です...