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35 商売のあけぼの
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ファーナが突然飛び出してしまったのでうっかり見守ってしまっていたロイは、はっとして二人の間に入った。
ここは商隊を連れてきた自分がファーナたちを紹介するべきであることを思い出したのだ。
『はな、こちらはファー『ハナ?ハナさんって仰るのね!可愛らしい名前ねえ!わたしのことはおばあちゃまって呼んでちょうだい?お・ば・あ・ちゃ・ま』
『『『!?…こら‼』』』
『ハ、ハナっ!こちらはファーナ、ファーナだ。ファーナ』
書き書き。
「ファーナさん。はじめまして」
ノートにメモ書きした華はにっこり笑うが、ロイの紹介を遮ってまで“おばあちゃま”呼びさせたかったファーナは、目論見が外れてぶすくれている。
しかし華のノートには、ファーナの名前と共に“おばあちゃま”と呼ばれたがっているとメモ書きがちゃんとされているのだった。
『(油断も隙もない…)ハナ、こちらはアルベルト。ファーナの旦那だ。アルベルト』
『アルベルトだ。よろしく、ハナさん』
書き書き。
「アルベルトさん…アルベルト“さん”?華です。“よろしく、アルベルトさん”」
華がこちらの言葉で挨拶をすると、休憩場所が一瞬静まり返った。
『これは…本当に賢いお嬢さんだ。ファーナの突進をお辞儀ひとつで止めてみせたことといい……』
『すごいわ‼ハナさん、とっても上手!』
アルベルトが感心している横で、ファーナが激しく拍手をして感激している。
華としては、普段の外国語の学習のようにアルベルトの非常に分かりやすい挨拶文をそのまま使っただけなのだが、外国語の学習をしたことがないファーナたちにとってそれは驚くべきことだった。
褒められているのが明らかなので華は嬉しくなった。
(他の人たちは休憩の準備をしているし、ロイさんが紹介しないってことはこのお二人…たぶんご夫婦、が主人格で、あとの人たちは従者ってことかな。もしかしなくてもご夫婦は華族の方?)
ロイも含めて従者が6人もいるようなので、華は高貴な方の御一行だと思ったのだ。実際には商人一行なのだが。
親戚や同級生に華族の方がいたので、畏まりはするけれど特に緊張することもない華は、この方たちがここにいる間にいろいろ聞いておきたかった。
そして。
『見事だな』
『ああ…すげえな。尊敬するわ…』
昼餐の後、ファーナが言葉の通じない華を相手に商談をしているのを見て、この日何度目になるか分からない感想を漏らす商隊メンバーたち。
はじめは華を強引に昼餐に誘いつつ、お互いに身振り手振りでいろいろ自己紹介の延長のようなことをしていたが、早い段階で華がノートに書いた表を見せてきた。
華の年齢の話になったときに、手で17を示しても何故か解って貰えず、手を叩いて数を17数えても解ってもらえなかった華が見せたそれは、ロイが商隊を連れて来るまでに書いた“知りたいことリスト”の内の、数字の表だった。
1ページにあらかじめ数字を並べておいたのだ。
そこに、身振りで聞いた“数”を仮名で書き、更に該当数字のところにファーナにこちらの数字を100書いてもらった。
華は10までで“ありがとう”と言ったのだが、ファーナが100書くまでノートと鉛筆を頑として離さなかったのだ。返ってきたノートには、100の後に書いてあった千と万のところまでまで書いてあった…。
そのノートの数字で示してようやく華が17歳だということを解ってもらえたのだが、全員が一様に納得がいかないような表情をしていた。
因みに華の身長は149㎝。同級生の中では平均だった。
『ハナさん!これ、このペンはすごいわ!』
ファーナも華が17歳だという事実に驚いてはいたが、それよりもっと食らい付いていたのは鉛筆にだった。
ノートを返さなかったのは、もちろん空欄を埋めたい欲求もあったのだが、鉛筆に感動してもっと書いていたかったからだ。
ファーナの鉛筆に対する興奮具合を見た華は、もしかしたらイケるのではないかと申し出て見た。
「よかったらこの鉛筆を、何かと交換してもらえませんか?」
華が望んでいた物々交換。商売のあけぼのだった
ここは商隊を連れてきた自分がファーナたちを紹介するべきであることを思い出したのだ。
『はな、こちらはファー『ハナ?ハナさんって仰るのね!可愛らしい名前ねえ!わたしのことはおばあちゃまって呼んでちょうだい?お・ば・あ・ちゃ・ま』
『『『!?…こら‼』』』
『ハ、ハナっ!こちらはファーナ、ファーナだ。ファーナ』
書き書き。
「ファーナさん。はじめまして」
ノートにメモ書きした華はにっこり笑うが、ロイの紹介を遮ってまで“おばあちゃま”呼びさせたかったファーナは、目論見が外れてぶすくれている。
しかし華のノートには、ファーナの名前と共に“おばあちゃま”と呼ばれたがっているとメモ書きがちゃんとされているのだった。
『(油断も隙もない…)ハナ、こちらはアルベルト。ファーナの旦那だ。アルベルト』
『アルベルトだ。よろしく、ハナさん』
書き書き。
「アルベルトさん…アルベルト“さん”?華です。“よろしく、アルベルトさん”」
華がこちらの言葉で挨拶をすると、休憩場所が一瞬静まり返った。
『これは…本当に賢いお嬢さんだ。ファーナの突進をお辞儀ひとつで止めてみせたことといい……』
『すごいわ‼ハナさん、とっても上手!』
アルベルトが感心している横で、ファーナが激しく拍手をして感激している。
華としては、普段の外国語の学習のようにアルベルトの非常に分かりやすい挨拶文をそのまま使っただけなのだが、外国語の学習をしたことがないファーナたちにとってそれは驚くべきことだった。
褒められているのが明らかなので華は嬉しくなった。
(他の人たちは休憩の準備をしているし、ロイさんが紹介しないってことはこのお二人…たぶんご夫婦、が主人格で、あとの人たちは従者ってことかな。もしかしなくてもご夫婦は華族の方?)
ロイも含めて従者が6人もいるようなので、華は高貴な方の御一行だと思ったのだ。実際には商人一行なのだが。
親戚や同級生に華族の方がいたので、畏まりはするけれど特に緊張することもない華は、この方たちがここにいる間にいろいろ聞いておきたかった。
そして。
『見事だな』
『ああ…すげえな。尊敬するわ…』
昼餐の後、ファーナが言葉の通じない華を相手に商談をしているのを見て、この日何度目になるか分からない感想を漏らす商隊メンバーたち。
はじめは華を強引に昼餐に誘いつつ、お互いに身振り手振りでいろいろ自己紹介の延長のようなことをしていたが、早い段階で華がノートに書いた表を見せてきた。
華の年齢の話になったときに、手で17を示しても何故か解って貰えず、手を叩いて数を17数えても解ってもらえなかった華が見せたそれは、ロイが商隊を連れて来るまでに書いた“知りたいことリスト”の内の、数字の表だった。
1ページにあらかじめ数字を並べておいたのだ。
そこに、身振りで聞いた“数”を仮名で書き、更に該当数字のところにファーナにこちらの数字を100書いてもらった。
華は10までで“ありがとう”と言ったのだが、ファーナが100書くまでノートと鉛筆を頑として離さなかったのだ。返ってきたノートには、100の後に書いてあった千と万のところまでまで書いてあった…。
そのノートの数字で示してようやく華が17歳だということを解ってもらえたのだが、全員が一様に納得がいかないような表情をしていた。
因みに華の身長は149㎝。同級生の中では平均だった。
『ハナさん!これ、このペンはすごいわ!』
ファーナも華が17歳だという事実に驚いてはいたが、それよりもっと食らい付いていたのは鉛筆にだった。
ノートを返さなかったのは、もちろん空欄を埋めたい欲求もあったのだが、鉛筆に感動してもっと書いていたかったからだ。
ファーナの鉛筆に対する興奮具合を見た華は、もしかしたらイケるのではないかと申し出て見た。
「よかったらこの鉛筆を、何かと交換してもらえませんか?」
華が望んでいた物々交換。商売のあけぼのだった
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