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8 うすさまうすさま…

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落葉や小枝に火が付いて炎が上がるのを見て華はほうっと息をついた。

 これ以後は火を絶やさないようにしないといけない。マッチがなくなってしまえば華には火をおこす方法が無いのだ。
 夜はもちろん、探索中も火を付けたままにするとなると、今は山のようにある落ち葉ねんりょうよりも山火事を心配するべきだろうか。

(囲いをもっとしっかりさせて、万が一にも藤棚さんが燃えてしまうなんてことがないようにしないと…)

 地下足袋を脱いで、焚き火の側に差した木の枝に掛ける。
 幸い、落ち葉の絨毯の中には小枝がたくさん落ちていたし、けっこう大きな枝もあちこちに転がっている。数日は薪拾いを考えなくてもいいだろう。

 手拭いで足を拭いてから靴下を履き直す。

「つかれた…」

 抱えた膝にカクンと顔が沈む。
 そうして目を閉じたとたんに夜明け前に家を出てからの事が脳裏に押し寄せてくる。

(考えちゃだめ…。考えても仕方がないことは考えない)

 そういって今まで過ごしてきた。
 空襲があったこと。家族の事。…戦況。

 今、考えるべきはこの見知らぬ山の中でどうやって生きていくか。

(水場は発見した。すごく近くにあって良かった。藤棚さんも…。藤棚さんがなかったらきっと途方にくれて動けなかった。神様ありがとうございます。ご先祖様かもしれないけど)

 たぶん、まだ生きている?事に感謝する華だった。



 少し眠っていたようだった。

 気がつくと日が暮れていて、水場とは反対の方の空に少しだけ茜色が残っていた。と、いうことは水場が東、麓側が南か。

 焚き火も無事、消えていない。

 地下足袋はだいたい乾いているようだった。

 焚き火に落ち葉を足して、華は立ち上がって辺りを見回す。

 厠に行きたくなったので、御不浄を何処に作ろうかと思ったのだ。

(うすさまうすさま…。
  藤棚さんの中に作る?いや、外だよね。
  でもあまり藤棚さんと離れたところは嫌だから…)

 結局、藤棚の西側にある葉の落ちていない低い常緑樹のところに御不浄を作る事にした。低いといっても華よりは遥かに高く、周りの木々が立派なものが多いので小さく見えるだけなのだが。
 ひとまず今日のところはと穴を掘って御不浄を済まして、足を拭くのに使った手拭いで拭く。

 華の持っていた手拭い2本の内のこの1枚を御不浄用と決めたところで、ふとカバンの中をあらためて確認しておくべきではないかと思い立った。
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