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めめくらげ

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昭和6年8月某日に記されたある手記

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【ある日から我が家の手伝の一切をまかせることになった彼は、このあたりには見かけない垢抜けた容貌をしている。言い表すとするなら、ちょうど先日となりのお嬢さんが得意顔で私に見せてくれた、青い瞳の舶来人形が近いだろう。猫のように目を丸くきらめかせ、それは新鮮な少年の放つまばゆい発光そのものであり、私は思わずを細め惚けたまま、とめどなく息を吐き、じっと少年を見つめて棒のように立ちすくんだのだ。少年は私のその奇異なありさまを見て固まっていたけれど、やがて深々頭を下げ、どうぞよろしくお願いいたしますと簡素に涼しげな挨拶をした。我家とは遠縁の筋だそうだが、このたび海難事故で家族を失い、めぐりめぐって私の父が遺された彼を引き取ったとの経緯である。ちょうど初夏に女中・小山滋子が田舎に嫁いだこともあって、あらたに女中を募らんとしていた折であった。私は挨拶をされても尚まだじっとしていた。それほだ彼が私に一目であたえた感銘は大きく、言いようのない波のような昂りが押し寄せ、波は数秒のあいだ私の口から言葉をうばったのだ。

それが四、五ヶ月ほどさかのぼったある日のことである。
私は少年・・・否、あえてアラタと呼ぼう。私はアラタにゆるされざる恋をしてしまったのだ。斯様なことをむざむざと紙にのこすのも憚られるが、書かずには居られなかった。私のこの思いの丈を吐き出す場所など、この星の内には何処にもないであろう。アラタとの生活は澱んだ私の胸に新風を送り込み、私を褪せた日常から薔薇色の青春へと蘇らせてくれた。私はいつも退屈だったのだ。人より惠まれた暮らしを与えられていながら斯様なことを云っては、きっと天罰が下ると近所の信心深いシケ婆さんは仰るだろう。それでも退屈は拭えないのだ。涸れた心で絵に感激することがないように、灰褐色の人生で世界があざやかに映ることはこれまでいちども無かった。斯様な生ける屍の如き私が、ようやく脳の内部をはげしく突き動かされたのが、このアラタとの出会いであった。】
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