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ⅷ
しおりを挟む「……俺はパスだ。めんどくさい」
「ダメだ。お前の家に迎えに行くからな。」
「なら名代として俺の飼い主を連れていけ」
「お前の飼い主?」
「うん。俺の正体、そいつにバレちゃってるしよ……」
「はあ?!」
「おっと、"禁術"の隠ぺいを幇助しとるお前に怒る資格はねえぞ」
「くっ……それを言われちまうと……しかし何故そんなことに?」
「お前に新宿まで迎えに来てもらった日、あのあとに佐野のマンションに寄ってから、ひとりでその飼い主となったヤツの仕事場に飲みに行った、というとこまでは知ってるな?だがそんときヤツにはすでに俺のしっぽとか耳とか見えてたらしくてな、俺はどうやら速攻で正体を見破られてたんだと。というか奴にはふつーにキツネも見えるそうだ」
「なんと……そんなヤツが大和の他にもいたのか……。まあ、平八もそうだったが……」
「いや、それなんだけどよ、実は薄々感じてたんだが……その俺の飼い主、ありゃあ平八の兄弟かなんかの子孫だぞ。霊感もそうだが、顔もちょっと似てるもん。苗字も西だし、なによりヤツの親父の出生地が、平八の捨てた故郷とドンピシャよ。父方は代々ずっとそこに暮らしてたそうだ」
「なに、ホントか」
「だからさ、そいつを連れてけよ。貧乏人の苦学生だから、タダ飯でも食わせてやってくれ」
「そうか……まあ厄介な人間じゃないなら呼んでもいいか」
「それより何を目的とした集会なんじゃ」
「俺たちだけの内輪のパーティーだよ。よく考えたら、俺たちはこうして二人とか三人で顔を合わすことはあっても、つながりのあるメンツが一堂に会したことがない」
「つながり?」
「だからさ、俺とシロクロ、佐野とサノ、平八は死んじまったけど、クロにとっては"二代目平八"となる大和、そしてお前。この七人はそれぞれ別々に顔を見ることがあっても、全員で集まったことはこの百年間一度もないだろう」
「ないからどうした。どうでもいいわそんなモン」
「寂しいこと言うなよ。お前はネコだから、仲間と集まる楽しさを知らんのだ」
「バカにするな、俺だってときどきは近所の庭でよその猫どもと集会くらいはするぜ。集まってもとくに何にもしねえけど」
「なら俺たちとも集会をしようじゃないか。その集会のように何もしなくていいからよ。……それから倖田先生と血はつながってねえけど、その養子だった息子の、ひ孫だかやしゃごだかにあたる倖田 冬ってのがいる。うさんくさいがやり手の実業家の秘書をやっとるわ。まあこいつは気分屋だし、あの息子の血筋とは思えぬほど気難しいから、呼んでも来ねえかもしれねえけどな。だがどうやら平八の子孫らしきお前の飼い主はいるわけだ。十人にも満たないが、それでも集結したことないというのは、何となく悲しいじゃねえか。だからさ、パーティーしようぜ」
「なにがパーティーじゃこの古だぬきが………派手好きは治らんな」
「よし、そうと決まれば日程を決めよう。みんなが休みの日だ。とくに重要なのはサノと大和だな。なんせ忙しい身だ。俺とシロクロと佐野は調整できるし、お前なんぞは寝るくらいしか用事がねえからどうとでもできる。日程が出たら、飼い主にもその日は都合をつけろと言っておけ」
ゲーテが刺身の最後のひと切れを口にして、残っていた酒をグイと飲みほし、「俺はもう行く」と言って席を立った。
「ちゃんと来いよ」
「んー」
どっちつかずの返事をして、エレベーターは面倒だといい、ベランダの窓を開けると人の格好のまま窓から飛び降りていった。
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