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壁の花になろう

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あの羞恥の時間から何日か経って、今日は舞踏会。

あのお茶会のあと、殿下は宣言通りにドレスとアクセサリーを贈ってくださった。

とても素敵なデザインで私好みだったのだけれど、サイズもぴったりなのはどうしてなのかしら。
誰かに聞いたのかしらね。


「お嬢様、とてもお綺麗です!」

メイドさんがドレスを着せて、アクセサリーをつけて、髪をセットして、メイクもしてくれたわ。

「ありがとう、相変わらず上手ね。」

うちのメイドさんは腕が良い。
まあ不器用な子ではメイドになれないのでしょうけど。

「そ、そんな!滅相もございません!」
「ふふ。」

全力で謙遜するメイドさんが可愛らしいわね。

「ほわぁ…………。」
「……?どうかしたの?」

メイドさんが放心状態だわ。
大丈夫かしら。
そんなに私のドレスアップは重労働だったのかしら。
そうならば人手を増やした方がいいのかしら。
人が多いとやりづらいかと思って1人でやってもらうのだけれど、疲労を感じさせるようであれば考え直した方がいいわね。

「…ハッ!!」
「あら、気がついた?大丈夫?疲れたのかしら。あとでゆっくり休んでちょうだいね?」
「は、はい!!か、かしこまりました!!」

バタバタと後片付けを始めるメイドさんに、不安を感じてしまう。
やっぱり人を増やそうかしら。

あ、そろそろ殿下が迎えに来なさる時間ね。

お城で開かれる催し物では、女性はパートナーが迎えに来るのを、お城の与えられた一室で待つの。
お城には立ち入り禁止の部屋もあるからね。
女性は与えられた一室で、身支度を整えるのよ。

それにしても殿下から頂いたドレスで踊るのは久しぶりね。
私、ダンスが得意というわけではないから少しだけ踊ったあとは壁の花になろうかしらね。


「マントゥール様、王子殿下がお越しです。」
「お入りくださいませ。」

ドアの前に立っている衛兵が殿下の来訪を告げる。
 
「今日は来てくれてありがとう。そのドレスもとても似合っているよ。まるで女神みたいだ。」
「ありがとうございますわ。殿下もとても素敵ですわ。」
「さあ、行こうか。」
「ええ。」

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