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4章
96話:アークルとの再会
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城へ帰還するとサラフィナはいつにも増して不機嫌そうな顔をしており今にも爆発寸前だ。イライラしているのか貧乏ゆすりも凄い。
「よっ、お嬢が貧乏ゆすりなんてやめとけって」
わざと煽るように言うとサラフィナは待ってましたかと言わんばかりに爆発を起こす。
「あなたが職務をほったらかして外で女と会っているからでしょうが!」
「まぁまぁそう怒るなって」
肩を叩きなだめようとするとサラフィナはその手を振り払う。
「あなたいくら至高の存在だからといっていささか慣れ慣れすぎますわよ」
あっちゃ~今回はいつもより機嫌悪いな~
「ザインタ、なんでサラはこんな機嫌が悪いんだ?」
「シャーガー様がサラフィナ様放ってどこかにいくからかと」
「いや、それぐらいではここまで機嫌が悪くなるとは思えんが……」
俺が神山周平で二〇柱の一角である魔神だということを明かしてからは多少のスキンシップで肩に触れてもここまでではなかったが。
「実はお見合いの話を王妃より打診されて会わないと行けなくなってしまったのです」
ザインタは淡々と言う。
「あら~それで相手は?」
「ファラリス連邦の皇帝の第四子であるフィッシャーマンです」
そんな奴は知らん。
「どこの馬の骨だよそいつ。サラにはもっと他の相手がいるぜ」
するとサラがそれに反応する。
「そうなんですわ!お母様ったら私の気も知らずにそんなお見合い勝手に進めていますのよ!」
サラフィナの必死の形相で言う。まぁ親からしたら早く結婚して欲しいだろうからな。
王妃には少し同情するところだ。
「まぁまぁ親としては子の幸せをだな……」
「私はそんな腑抜けなダーレー教徒と結婚する気はありません!だいたい子の幸せを願うならもっとましな相手をですね……」
「わかったから取り合えず落ち着けって」
これは最早狂犬だな。王女としての品性はどうしたんや。
「あなたに嫁がいなければ、私がかってでたのですがね……」
サラフィナは残念そうな表情で言う。流石にこれ以上は増やせんな。
「ハハッ、立花は怖いからな~ただサラにそんなこと言ってもらえるなんて光栄だな」
サラフィナの旦那になる奴か……一応今後の計画もあるし斡旋してやりたいが……
「贅沢はいいませんわ。私好みの殿方を誰か紹介してくれませんこと?」
「それはいい考えですね。シャーガー様ならサラフィナ様好みの知り合いがたくさんいるはずです」
確かに知り合いはいるが……
「まず具体的には?」
「二〇柱かもしくはそれに近しい人材ですわね。あと親父はごめんですわね」
お前さんの希望に添える人材の大半は年齢的に言えば爺だぞ。
「う~ん二〇柱は無理だと思うな。九兵衛さんは候補がたくさんいるしロードリオンは興味がないだろうしアークルの奴は心に決めた女がいたはずだからな~ガルカドール卿はまだ復活してないし他の奴らはこの世界にいないからな~」
「まぁ私もそこまで図々しくありませんわ、それに近しい方はいますか?」
「実と直樹は空いてないだろうしギルドからの斡旋かな。というかサラはどういう結婚したいんだ?共通の話題を持った奴と愛を育むのがお望みかい?」
こいつが結婚に対しどういうスタンスでいるかがまず重要だ。
「当然でしょ!私だって愛を育んで結婚して子供を産みたいと考えていますわ」
サラフィナは必死の表情に嘘はないな。誰かいないかな……
「なら頑張って見るよ。流石にもやしみたいな奴は斡旋しないが強さはあんまり期待するなよ」
サラフィナは喜色な表情に変わる。性格は尖っているが綺麗だし悪い奴というわけでない。優しくてツッコミのキレがいい奴がいいかな。王妃がいい相手を持ってきてくれればそれで済むんだが難しいか……
◇
夕方王宮にいるとエミリアのモノされる強い殺気を感じた。別に威嚇ではないのだろうが俺を呼んでいるのだろう。この姿での会ってはいないから一度迷宮に行き俺の分身体に詳細を聞いたのだろう。
「またお出かけですか?」
夜城を抜け出そうとする俺をザインタが引き止める。
「ザインタか……どうした?」
「あなたは気づいているのではないかと思いまして」
そう、ザインタと初めて会った時から違和感があった。
「今から昔の仲間と会うんだが途中まで送ってくれないか?アビィのジュース奢ってやるからよ」
「ふふっ、喜んで送って差し上げますわ」
二人で夜道を歩く。
「お前さん魔族の血が四分の一入ってるな。俗に言うクォーターだろ」
「流石ですね」
「サラは知っているのか?」
「もちろん、サラフィナ様はそれを知った上で私を置いてくれています」
それがあいつのいい所だ。ここ何日か話していて情に厚いのもわかったからな。
「そうか、お前の両親のハーフの方は苦労したんじゃないか?」
「ええ、魔大陸で生まれてギャラントプルームで冒険者をやり、そこで出会った人間の母と結婚し私が生まれました」
「どうしてこんな所でメイドをしているか聞いてもいいか?」
ザインタは懐かしそうに話し始めた。
ザインタの父親は十数年前魔大陸侵攻をした戦争に参加し戦死をしたらしい。その何年か後にそれを追うように母親が病死してここに流れ着いた。その戦争に参加し指揮してたのが勇者だったみたいで勇者への恨みもあったからだ。
「でもその勇者はここにはいませんでした……」
ザインタはいつもの仏頂面を崩しやるせない表情で話す。
「しばらくここでメイドをしたのですが、嫌になりメイドをやめて王都を去ろうとしたその時会ったのがサラフィナ様でした。あの人は私にこの国はどう思うか質問してきました」
表情が少し明るくなる。
「その時のお前さんのことだ。辞めるしいいやと思って批判しまくったんだろ?」
「ええ、そしたらサラフィナ様が喜びだして私の専属になりなさいと言ってくださいました、そして今に至るんですよ」
「サラフィナは嬉しかったんだろうな」
当時周りから異端と蔑まれていたあいつはきっと感激したんだろうな。
「だから私はいつまでもサラフィナ様の傍でお仕えするつもりです」
「ああ、でもちゃんとお前も相手を見つけておけよ。二人して生き遅れたままというのもどうかと思うからな」
少しからかう。
「だったら私の相手も見つけてくださいな。あなたの思惑に乗りあなたの息のかかった国にしたいのならそれぐらいしてもバチはあたりませんよ」
「ハハッ、了解了解」
露店まで着きアビィのジュースを購入しザインタに渡す。
「美味しい……」
「それはよかった。またご馳走してやるよ」
「その約束は必ず守らせますよ!」
ザインタは顔を近づけてくる。
「お、おう。任せてくれ」
アビィのジュースの凄いわ。地球にいる頃コンビニで立ち読みした美食漫画にあったよな。食べ物で戦争を止めて英雄になった奴がいて確か最後は主人公がそいつと戦ったんだったかな。漫画か……随分と読んでないが思い出すと読んでみたいものだ。
「それじゃあジュースも奢ってもらったし私は城に戻りますよ。あなたと二人っきりでいたのがサラフィナ様にバレたら拗ねられてしまいますから」
「ハハッ、それじゃあ適当に朝までには戻るよ」
ザインタと別れエミリア達の向かうバーへと向かった。食べ物一つで争いがなくなって平和になれば苦労はしないんだがな。
◇
「いきなりどうしたんだ?」
「いいからいいから」
エミリアに会うと会わせたい人がいるからとバーに案内されたのだ。誰かと思いきやバーにいたのは俺が再会を望んでいたうちの一人だった
「ふっ、またこうして会えたことを嬉しく思うぞ友よ」
「ひ、久しぶりじゃん。会えて嬉しい」
キザなものいいが特徴のこの男は騎士団員の一人で魔剣聖と言われ、この世界に転生して来る前は呪術王シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーと名乗っていた。その時は住んでいた世界を一つ滅ぼした後竜王のジェラードさんと一騎打ちをし敗れてエクリプスに転生をするに至った。二〇柱の一角第十三の背信の悪魔帝アークル・ブランドフォードだ。
「ははっ、相変わらずだな。今はシンと呼べばいいか?」
「転生にて力を完全に取り戻した。本名のアークル・ブランドフォードという名もあるが呼びやすいい方で呼んでくれ」
これで完全体な二〇柱が三人こちら側にいるということになるのか。
「ハハッ、そうだったな。それでどうして王都アスタルテに?」
「友の力になるべくしてここに来たのさ。そろそろ俺の力も必要なはずだ」
話の早い奴で感動しちまうな。
「そのうち立花もここに来るしそしたら本格的に力を借りるよ」
「おおぅ、フォルモサもか。久しぶりに腕がなるというものだ」
するとエミリアが呆れた顔で言う。
「何言ってるのよ~ここに来る前に連邦に入って魔大陸侵攻する準備をしていた兵を全員戦闘不能に追い込んでおいて」
「ハハッ、あれはあいつらが悪い。私の通り道を塞いだのだからな」
早速飛ばしてやがるな。
「連邦の様子はどうだった?」
「俺の通った街は殺伐としていたな。魔大陸侵攻の兵士が集まるところであったから当然といえば当然だが」
連邦の内部がある程度落ち着けば勇者を交えた大規模な遠征が開始されるはずだからな。ごたついているとはいえ遠征の準備を進めていないわけがない。
「友と同じ地球出身の奴にあったな」
「何て奴だ?」
「陣と名乗っていたな。どうも連邦で暴れたらしく脱出したがっていたな」
俺はその言葉に反応する。
「陣と会ったのか!」
「友の友達か、納得と言えば納得だな」
やはり犯人はお前だったのかと俺は内心歓喜する。脱走した尾形もそうだが俺の友達がこういう形で活躍しているがわかると嬉しく思う。
「それで陣はどこに?」
「数日程一緒に過ごし鍛えてやったのだ。連邦を憎む心と内に秘める意志、そしてなんでか知らんが魔族の力を宿していたからそれをコントロールの術を教えたのさ」
魔族の力か……陣の奴危ない橋を渡ってやがるな。無事だといいが……
「それで陣は何か言っていたか?」
「ファーガスにいる親友に会いたと言っていたよ。まさか友がその親友とはな」
シンはクスっと笑う。
「そうか……それで陣はどこに?」
「その不安定さでは王都に入った途端不審に思われるだろうから、魔大陸にある修練の里パールダイヴァーの行けといっておいた」
遠いな……だがシンの判断は正しい。俺とシンが知り合いで俺達の事を把握していればあいつが王都に来ても何とかなったがそんな上手くはいかないな。
「いい判断だ。あいつの力はどれぐらいなんだ?」
「うむ、現時点ではエミリアほどの力はないが練度を上げていけば、御子神や神代を超えるかもしれないな」
それを聞いたエミリアが少し対抗意識を燃やす。
「ぜひその坊やとやり合ってみたいわね。それで今のうちに勝ち逃げを……」
「おいおい、張り合うなって」
エミリアは少し拗ねる。
「実はともかく、私とレイちゃんと直樹は戦力的には少し劣るからね~レダさんの域まではいかなくても椿や九十九ちゃんの域までは行きたいところよね……」
現時点ではエミリアとレイチェルと直樹は騎士団の中では少し落ちる。それは人である状態でいける限界まで行った後のプラスがないからだ。実は皇家の力が九十九は精霊憑き、椿も鬼の血が混じってたりするからステータス面でのプラスがある。レダさんはさらにその上をいくがあれは二〇柱を除けば世界最強クラスといっても過言ではないからまた別だ。
「でも三人共真似できない力を持っているんだし誇っていいと思うぞ」
騎士団の中で劣ると言っても強いことには変わりはない。
「フフッ、ありがとうシュウ。男ができるまで愛人希望をだしておくわ」
「ハハッ、光栄だよ。でも立花の前では言わんでくれな」
昔の話だがちょっとした仕返しに同じようなことを立花の前で言われて立花が不機嫌になったことがある。エミリアは俺と立花の先生だっただけあって、俺達のツボは心得ている。生徒だった時代の時から俺の方が力は上だったがあまり強く出れなかったものだ。ダルくて授業をサボろうとしてもサボらせてもらえなかったのもいい思い出だ。
「ところで友よ。前にエミリアにも話したが魔族が何名かこの王都に潜入しているそ」
「そうなのか?」
そんなこと知らなかったので素直に驚く。
「クォーターとかでなく完全な魔族か?」
「ああ、何かひと悶着ありそうな感じがして楽しみだが友は知らなかったようだな」
魔族の潜入か……調べてみる必要がありそうだな。
「ならシンにも早速仕事を与えていいかな?」
出番がもう来てしまったが退屈してるだろうしお仕事させるか。
「構わんぞ、魔族がどいつか知りたいのだろ?」
「ご名答、話が早いな」
「ただ城への出入りの許可がないと面倒ではあるな」
やはり城に潜伏している感じか。
「オーケー、それなら任せてくれ」
魔族の思惑が何か知らんが俺の邪魔をされては困る、早いうちに手を打たねばいかんな。
「よっ、お嬢が貧乏ゆすりなんてやめとけって」
わざと煽るように言うとサラフィナは待ってましたかと言わんばかりに爆発を起こす。
「あなたが職務をほったらかして外で女と会っているからでしょうが!」
「まぁまぁそう怒るなって」
肩を叩きなだめようとするとサラフィナはその手を振り払う。
「あなたいくら至高の存在だからといっていささか慣れ慣れすぎますわよ」
あっちゃ~今回はいつもより機嫌悪いな~
「ザインタ、なんでサラはこんな機嫌が悪いんだ?」
「シャーガー様がサラフィナ様放ってどこかにいくからかと」
「いや、それぐらいではここまで機嫌が悪くなるとは思えんが……」
俺が神山周平で二〇柱の一角である魔神だということを明かしてからは多少のスキンシップで肩に触れてもここまでではなかったが。
「実はお見合いの話を王妃より打診されて会わないと行けなくなってしまったのです」
ザインタは淡々と言う。
「あら~それで相手は?」
「ファラリス連邦の皇帝の第四子であるフィッシャーマンです」
そんな奴は知らん。
「どこの馬の骨だよそいつ。サラにはもっと他の相手がいるぜ」
するとサラがそれに反応する。
「そうなんですわ!お母様ったら私の気も知らずにそんなお見合い勝手に進めていますのよ!」
サラフィナの必死の形相で言う。まぁ親からしたら早く結婚して欲しいだろうからな。
王妃には少し同情するところだ。
「まぁまぁ親としては子の幸せをだな……」
「私はそんな腑抜けなダーレー教徒と結婚する気はありません!だいたい子の幸せを願うならもっとましな相手をですね……」
「わかったから取り合えず落ち着けって」
これは最早狂犬だな。王女としての品性はどうしたんや。
「あなたに嫁がいなければ、私がかってでたのですがね……」
サラフィナは残念そうな表情で言う。流石にこれ以上は増やせんな。
「ハハッ、立花は怖いからな~ただサラにそんなこと言ってもらえるなんて光栄だな」
サラフィナの旦那になる奴か……一応今後の計画もあるし斡旋してやりたいが……
「贅沢はいいませんわ。私好みの殿方を誰か紹介してくれませんこと?」
「それはいい考えですね。シャーガー様ならサラフィナ様好みの知り合いがたくさんいるはずです」
確かに知り合いはいるが……
「まず具体的には?」
「二〇柱かもしくはそれに近しい人材ですわね。あと親父はごめんですわね」
お前さんの希望に添える人材の大半は年齢的に言えば爺だぞ。
「う~ん二〇柱は無理だと思うな。九兵衛さんは候補がたくさんいるしロードリオンは興味がないだろうしアークルの奴は心に決めた女がいたはずだからな~ガルカドール卿はまだ復活してないし他の奴らはこの世界にいないからな~」
「まぁ私もそこまで図々しくありませんわ、それに近しい方はいますか?」
「実と直樹は空いてないだろうしギルドからの斡旋かな。というかサラはどういう結婚したいんだ?共通の話題を持った奴と愛を育むのがお望みかい?」
こいつが結婚に対しどういうスタンスでいるかがまず重要だ。
「当然でしょ!私だって愛を育んで結婚して子供を産みたいと考えていますわ」
サラフィナは必死の表情に嘘はないな。誰かいないかな……
「なら頑張って見るよ。流石にもやしみたいな奴は斡旋しないが強さはあんまり期待するなよ」
サラフィナは喜色な表情に変わる。性格は尖っているが綺麗だし悪い奴というわけでない。優しくてツッコミのキレがいい奴がいいかな。王妃がいい相手を持ってきてくれればそれで済むんだが難しいか……
◇
夕方王宮にいるとエミリアのモノされる強い殺気を感じた。別に威嚇ではないのだろうが俺を呼んでいるのだろう。この姿での会ってはいないから一度迷宮に行き俺の分身体に詳細を聞いたのだろう。
「またお出かけですか?」
夜城を抜け出そうとする俺をザインタが引き止める。
「ザインタか……どうした?」
「あなたは気づいているのではないかと思いまして」
そう、ザインタと初めて会った時から違和感があった。
「今から昔の仲間と会うんだが途中まで送ってくれないか?アビィのジュース奢ってやるからよ」
「ふふっ、喜んで送って差し上げますわ」
二人で夜道を歩く。
「お前さん魔族の血が四分の一入ってるな。俗に言うクォーターだろ」
「流石ですね」
「サラは知っているのか?」
「もちろん、サラフィナ様はそれを知った上で私を置いてくれています」
それがあいつのいい所だ。ここ何日か話していて情に厚いのもわかったからな。
「そうか、お前の両親のハーフの方は苦労したんじゃないか?」
「ええ、魔大陸で生まれてギャラントプルームで冒険者をやり、そこで出会った人間の母と結婚し私が生まれました」
「どうしてこんな所でメイドをしているか聞いてもいいか?」
ザインタは懐かしそうに話し始めた。
ザインタの父親は十数年前魔大陸侵攻をした戦争に参加し戦死をしたらしい。その何年か後にそれを追うように母親が病死してここに流れ着いた。その戦争に参加し指揮してたのが勇者だったみたいで勇者への恨みもあったからだ。
「でもその勇者はここにはいませんでした……」
ザインタはいつもの仏頂面を崩しやるせない表情で話す。
「しばらくここでメイドをしたのですが、嫌になりメイドをやめて王都を去ろうとしたその時会ったのがサラフィナ様でした。あの人は私にこの国はどう思うか質問してきました」
表情が少し明るくなる。
「その時のお前さんのことだ。辞めるしいいやと思って批判しまくったんだろ?」
「ええ、そしたらサラフィナ様が喜びだして私の専属になりなさいと言ってくださいました、そして今に至るんですよ」
「サラフィナは嬉しかったんだろうな」
当時周りから異端と蔑まれていたあいつはきっと感激したんだろうな。
「だから私はいつまでもサラフィナ様の傍でお仕えするつもりです」
「ああ、でもちゃんとお前も相手を見つけておけよ。二人して生き遅れたままというのもどうかと思うからな」
少しからかう。
「だったら私の相手も見つけてくださいな。あなたの思惑に乗りあなたの息のかかった国にしたいのならそれぐらいしてもバチはあたりませんよ」
「ハハッ、了解了解」
露店まで着きアビィのジュースを購入しザインタに渡す。
「美味しい……」
「それはよかった。またご馳走してやるよ」
「その約束は必ず守らせますよ!」
ザインタは顔を近づけてくる。
「お、おう。任せてくれ」
アビィのジュースの凄いわ。地球にいる頃コンビニで立ち読みした美食漫画にあったよな。食べ物で戦争を止めて英雄になった奴がいて確か最後は主人公がそいつと戦ったんだったかな。漫画か……随分と読んでないが思い出すと読んでみたいものだ。
「それじゃあジュースも奢ってもらったし私は城に戻りますよ。あなたと二人っきりでいたのがサラフィナ様にバレたら拗ねられてしまいますから」
「ハハッ、それじゃあ適当に朝までには戻るよ」
ザインタと別れエミリア達の向かうバーへと向かった。食べ物一つで争いがなくなって平和になれば苦労はしないんだがな。
◇
「いきなりどうしたんだ?」
「いいからいいから」
エミリアに会うと会わせたい人がいるからとバーに案内されたのだ。誰かと思いきやバーにいたのは俺が再会を望んでいたうちの一人だった
「ふっ、またこうして会えたことを嬉しく思うぞ友よ」
「ひ、久しぶりじゃん。会えて嬉しい」
キザなものいいが特徴のこの男は騎士団員の一人で魔剣聖と言われ、この世界に転生して来る前は呪術王シン・アークトライアル・ゲイクルセイダーと名乗っていた。その時は住んでいた世界を一つ滅ぼした後竜王のジェラードさんと一騎打ちをし敗れてエクリプスに転生をするに至った。二〇柱の一角第十三の背信の悪魔帝アークル・ブランドフォードだ。
「ははっ、相変わらずだな。今はシンと呼べばいいか?」
「転生にて力を完全に取り戻した。本名のアークル・ブランドフォードという名もあるが呼びやすいい方で呼んでくれ」
これで完全体な二〇柱が三人こちら側にいるということになるのか。
「ハハッ、そうだったな。それでどうして王都アスタルテに?」
「友の力になるべくしてここに来たのさ。そろそろ俺の力も必要なはずだ」
話の早い奴で感動しちまうな。
「そのうち立花もここに来るしそしたら本格的に力を借りるよ」
「おおぅ、フォルモサもか。久しぶりに腕がなるというものだ」
するとエミリアが呆れた顔で言う。
「何言ってるのよ~ここに来る前に連邦に入って魔大陸侵攻する準備をしていた兵を全員戦闘不能に追い込んでおいて」
「ハハッ、あれはあいつらが悪い。私の通り道を塞いだのだからな」
早速飛ばしてやがるな。
「連邦の様子はどうだった?」
「俺の通った街は殺伐としていたな。魔大陸侵攻の兵士が集まるところであったから当然といえば当然だが」
連邦の内部がある程度落ち着けば勇者を交えた大規模な遠征が開始されるはずだからな。ごたついているとはいえ遠征の準備を進めていないわけがない。
「友と同じ地球出身の奴にあったな」
「何て奴だ?」
「陣と名乗っていたな。どうも連邦で暴れたらしく脱出したがっていたな」
俺はその言葉に反応する。
「陣と会ったのか!」
「友の友達か、納得と言えば納得だな」
やはり犯人はお前だったのかと俺は内心歓喜する。脱走した尾形もそうだが俺の友達がこういう形で活躍しているがわかると嬉しく思う。
「それで陣はどこに?」
「数日程一緒に過ごし鍛えてやったのだ。連邦を憎む心と内に秘める意志、そしてなんでか知らんが魔族の力を宿していたからそれをコントロールの術を教えたのさ」
魔族の力か……陣の奴危ない橋を渡ってやがるな。無事だといいが……
「それで陣は何か言っていたか?」
「ファーガスにいる親友に会いたと言っていたよ。まさか友がその親友とはな」
シンはクスっと笑う。
「そうか……それで陣はどこに?」
「その不安定さでは王都に入った途端不審に思われるだろうから、魔大陸にある修練の里パールダイヴァーの行けといっておいた」
遠いな……だがシンの判断は正しい。俺とシンが知り合いで俺達の事を把握していればあいつが王都に来ても何とかなったがそんな上手くはいかないな。
「いい判断だ。あいつの力はどれぐらいなんだ?」
「うむ、現時点ではエミリアほどの力はないが練度を上げていけば、御子神や神代を超えるかもしれないな」
それを聞いたエミリアが少し対抗意識を燃やす。
「ぜひその坊やとやり合ってみたいわね。それで今のうちに勝ち逃げを……」
「おいおい、張り合うなって」
エミリアは少し拗ねる。
「実はともかく、私とレイちゃんと直樹は戦力的には少し劣るからね~レダさんの域まではいかなくても椿や九十九ちゃんの域までは行きたいところよね……」
現時点ではエミリアとレイチェルと直樹は騎士団の中では少し落ちる。それは人である状態でいける限界まで行った後のプラスがないからだ。実は皇家の力が九十九は精霊憑き、椿も鬼の血が混じってたりするからステータス面でのプラスがある。レダさんはさらにその上をいくがあれは二〇柱を除けば世界最強クラスといっても過言ではないからまた別だ。
「でも三人共真似できない力を持っているんだし誇っていいと思うぞ」
騎士団の中で劣ると言っても強いことには変わりはない。
「フフッ、ありがとうシュウ。男ができるまで愛人希望をだしておくわ」
「ハハッ、光栄だよ。でも立花の前では言わんでくれな」
昔の話だがちょっとした仕返しに同じようなことを立花の前で言われて立花が不機嫌になったことがある。エミリアは俺と立花の先生だっただけあって、俺達のツボは心得ている。生徒だった時代の時から俺の方が力は上だったがあまり強く出れなかったものだ。ダルくて授業をサボろうとしてもサボらせてもらえなかったのもいい思い出だ。
「ところで友よ。前にエミリアにも話したが魔族が何名かこの王都に潜入しているそ」
「そうなのか?」
そんなこと知らなかったので素直に驚く。
「クォーターとかでなく完全な魔族か?」
「ああ、何かひと悶着ありそうな感じがして楽しみだが友は知らなかったようだな」
魔族の潜入か……調べてみる必要がありそうだな。
「ならシンにも早速仕事を与えていいかな?」
出番がもう来てしまったが退屈してるだろうしお仕事させるか。
「構わんぞ、魔族がどいつか知りたいのだろ?」
「ご名答、話が早いな」
「ただ城への出入りの許可がないと面倒ではあるな」
やはり城に潜伏している感じか。
「オーケー、それなら任せてくれ」
魔族の思惑が何か知らんが俺の邪魔をされては困る、早いうちに手を打たねばいかんな。
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しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
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うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
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カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
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