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44話:勇者達と金策

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 「あれ大丈夫か?」
 「確認しよう」

 四人は一旦馬車から降りて倒れている男の元に行く。

 「大丈夫ですか?」
 「うっ……」

 大きな外傷がないのと息はあるのを確認した四人は男を馬車に連れて行く。

 「大丈夫ですか?」
 「き、君らは?」
 「俺は剣崎正義です」
 「わ、私はソーダ、魔物に襲われて命からがら逃げて来たんです」

 男はか弱そうな声で訴え掛ける。

 「魔物?」
 「そ、そうです……この森の奥にいるギガントという魔物に襲われ身ぐるみを剥がされてしまって……」
 「身ぐるみを剥がす?」
 「ああ、奴は光る物に目がないのか私の武器やお金を全て奪い取ったのだ」
 「それは災難だったな」
 
 松野は他人事のように言う。元々自分本位な性格だがここに来てこれでもマシになったのは三人も良く知る所だ。

 「あの荷物には私の大事な物が……」

 ソーダは四人に訴え掛けるように嘆く。

 「いや、それは俺達に言われてもな……」

 助けろなんて言われては面倒事が増えるだけだと考えていた松野はあからさまに嫌そうな顔を見せる。

 「まぁまぁ」

そこで正義はふと考えた。光る物に目がない魔物ならもしかしたらたくさんの金品を所持しているかもしれないと考えたのだ。

「そいつを俺達の手で倒さないか?」
「マジ?」
「でもそれ僕達にどういう利益が?」

光彦も助ける理由がないと思ったのか正義に理由を求める。

「そいつが光る物に目がないってならもしかしたら今まで旅人から奪った金品をたくさん持ってるかもって思ったんだ」
「なるほど、それが今後の資金になれば助かるわね」
「そういう事、二人はどうだい?」

 正義がそう言うと、少し考えた後に結論を出す。

「まっ、正義がそう言うならいいぜ」
「資金になるなら歓迎だよ」

 二人も資金という言葉に反応したのか納得する。

「よし、それならその魔物とやらを倒しに行こうか」
「そういう事だ。どこにいるか案内できるかおっさん?」
 「奴はここから左に進んだムギの森にいる。案内します」

 
 ◇


 馬車で森の中に入って行く。男は馬車の操縦に長けており、慣れた手つきで馬車を操る。

 「おっさん上手いな~」
 「これでも馬術はそこそこでしてな」
 「この森の事はよく知りませんが馬車のまま進んで大丈夫ですか?」
 「うむ、一応通り道として半分整備されたような道があります。そこを通っていけば問題ありません」

 見ると通りやすそうな道を器用に進んでいることに正義は気付く。

 「そのギガントという魔物の居場所は把握しているのですか?」
 「奴の巣があるのできっとそこにいるかと」
 「巣?という事は複数いる可能性が?」
 「奴は元々山岳地にすむ魔物です。前にこの森にペットとして飼っていた貴族が逃がしたようでここに巣を作ったと聞いています。一匹では繁殖は出来ないので一匹だけかと」
 「ペットを捨てるなんて許せないわね……」

 桜はムカッとした表情を見せ、溜息をつく。彼女自身地球にいる時家で犬を飼っていたようで捨てるような真似は許せないのだろう。

 「全くその通りだね。ずっと飼えないなら最初から飼わなきゃいいのに」
 「貴族様はやりたい放題って事かね~」
 「まぁまぁ三人とも。それでそいつの特徴や有効な戦い方について知っていれば教えていただきたい」
 「はい、奴は固く物理攻撃は効きにくい。私の剣も弾かれ攻撃が通りませんでしたので」
 「となると魔法か……」

 正義は風、松野は土、光彦は水、桜は火の加護を持っている。魔法力で言えば光彦が一番で次が桜で正義、松野と続く。総合力では当然正義が一番だ。

 「どの属性の魔法が効果的かを見極めた上で弱点属性の加護を持つ人に重点的に攻撃をして貰う感じがどうかしら?」
 「それがいいね。判明した段階でそれ以外の人が囮となって引きつけてもらい、弱点属性で叩くと。弱点属性がない、もしくはわからないままの場合が基本の陣形で攻めよう」

 基本の陣形とは正義と松野が前衛で桜と光彦が後衛。ジンがいる時は真ん中から前後共に指示をしていたので正義は最前衛という形をとっていたが、ジンがいない今正義が指示をしないといけないので一番前には松野を置くようにしている。

 「了解。僕は後ろで魔法攻撃しつつどの部位が効果的かを見極めるよ。おじさんそいつはどのくらいデカい魔物なんだい?」
 「三メートルぐらいはあるかと思います。皆さん魔法はどの程度のレベルで?」
 「俺達はみな第五位階までは習得している」
 「おおっ、それなら問題ないかと。確かギガントは冒険者ギルドのブロンズランクのパーティでも討伐報告があったので」

 四人はギルドをよく知らない。そのランクについて詳しく知りたくなった正義は詳しく聞いた。自分が冒険者ランクではどの程度なのかというのに興味を持ったのだ。

 「ギルドのランクとそれぞれの基準を教えてくれますか?」
 「はい、戦士系統の基準は明確にはわかりませんが、魔導士系統だけで言えば第五位階魔法の内それぞれの加護で使用できる魔法の内の半数が習得できればブロンズランクは取得できます」
 「では次のシルバーとゴールド?」
 「シルバーはその加護で習得できる第五位階を全て習得し、第六位階に進んだ者。ゴールドは第七位階に到達した者というのが基準です」

 そこで正義は少し落胆した。魔法よりの光彦は戦士としては微妙、それでいて第五位階魔法までしか習得していないのでブロンズランクに該当するという事がわかったからだ。勇者として他よりも能力アップが恵まれているとはいえまだまだだというのを実感する。

 「習得できる第五位階魔法をほぼ全て習得し戦士としての能力がそこそこであればシルバーランクという事になるんですか?」
 「うむ、戦士で第五位階をマスターしていれば文句なしのシルバーランクになるはずです」

 ここで正義はホッとする。自分は冒険者ならシルバーランクぐらいだというのがわかったからだ。

 「そのゴールドランクというのはどれぐらいにいるのですか?」
 「ギルドではその人数を公開していないが数える程しかいないともっぱらの噂です。そもそもシルバーだってそんなに多くはありません。ゴールドランク到達レベルに達している者は全世界でもほんの一部しかいないと見ていいでしょう」

 自分達が倒す魔王とやらがそのレベルに達しているだろうというのは今の会話で理解していた。そしてコクトウ山脈に住む賢者とやらも自分達に第七位階魔法を教えてくれるという事はそのレベルなのだろうと。何にせよ魔王を倒す為には最終的に全員がそのゴールドランク到達レベルに達さなければ難しい。そしてその為にはもっと鍛錬を積まないといけないというのを改めて実感させられたのだ。

 「成程、確かにそのゴールドランクとやらがたくさんいれば世界はもっと平和でしょうし、魔王の脅威もそこまでだろうと思いますからね」
 「確かに魔王は第七位階魔法の使い手と噂されていますな」

 アテノアに住む魔族達は魔法に長けているのはラシットの街の防衛線にて実感していた。そしてその直後のジンとの会話を思い出した。

 「正義は体術剣術に優れているしそれと魔法をもっと融合させて戦ったらどうだ?」
 「融合?つまり剣をふるいながら魔法も発動するって事かい?」
 「いや、少し違うな。剣に魔法を纏うというか。魔族にはその方が効果的だと思う」
 「それはそうかもしれないけど、流石に無理だろ。魔法は後衛に任せてもっと早さを身に着けるよ」

 この時ジンにウンザリしていた正義はロクに取り合わなかった。ウンザリというよりは邪魔に思っていたというのが正しいだろう。結局この後ジンを追い出した。もしこのまま追い出していなければ正義はシーラ同様魔法剣を習得していた。

 「剣に魔法か……」

 正義はふと思い出したその事を考えていた。
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