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34話:休憩

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 スッポン遺跡を後にした俺達はミステアを目指す為に進んでいた。次はリオの故郷であるナットウという街を目指していた。

「あとどれぐらいかな?」
 
 馬を操って馬車を動かしながら後ろにいるリオに聞く。

 「あと数日ってとこかしらね」
 「それまでに危険な場所は通るかい?」
 「それは大丈夫なはずよ。まぁジンからすればどこも危険ではないと思うけどね」

 俺は恐らく問題ないのは明白なのだが、問題は四人だ。遺跡の時のアースドラゴンのような敵と俺がいないときに出くわしたらと考えると怖い。

 「ならこのままいけるね」
 「あ、でも一つ注意かも」
 「どこだい?」
 「ナットウの前にはちみつの森を抜けるんだけど、そこの守護獣と遭遇したら面倒を被るかもしれないわ」

 はちみつの森か……名前だけ聞くとずいぶん甘ったるそうな森だがな。

 「倒せばいい感じ?」
 「いや、森の守護獣にそれは辞めてほしいわ……たぶん遭遇しないと思うから遭遇したら教えるわ」
 
 何か隠しているのか歯切れが悪いな。ただナットウの街と隣接しているし、ナットウの街の出身の人はその森の守護獣に対して何かしなくてはいけないのかもしれないな。

 「了解、お供え物でもするのかい?」
 「まぁそんなとこかしらね。一応ナットウの街の管轄だから」

 森の守護獣か……どんな奴か気になってしまったな。是非遭遇してみたいものだ。

 「事情があるのはわかったよ。ここで休憩するかい?」

 もうそろそろ昼の時間だ。リオのお腹の音に釣られてこちらもついでてしまった。

 「そうね、ここなら休憩しても問題なさそうだし」

 今通っているのは整備された道の上で、周り一帯は草原だ。暫くはこの景色が続き、街へ着くぐらいになると森が見えてくるらしい。


 ◇


 「これ美味しいですね~」

 ミーナがご満悦の表情でお肉を食べる。俺の収納魔法は入れた物の時間が止まるので、作った直後の状態で収納しており、基本出来立ての状態だ。どこから調達したかと言えば城のシェフに大量に作らせたので当分は困らないはずだ。味も王族やお金持ち相手に飯を作っているだけあって確かなものだ。国王からもけっこうお金の支援をいただいたしこの先も生活に困る事はないだろう。

 「そのチキンは味付けが凄くいいよね。流石はエリンギの城のシェフだけの事はあるよね」
 「当然よ!うちの城のシェフは過去に何人も面接で落としてるし、シェフとして動いている人はかなりの腕前よ」

 セーブルが自信を持って言う。確かにシェフの作る料理のレベルはリレイルと比べて高かったのは事実だ。

 「だろうね。こっちも素直に食べてて凄いなって思うから」
 「でしょでしょ!採用された後も競争があってけっこう厳しい世界みたいなんだ」
 
 どこの世界でも競争というのは厳しいからな。料理人の世界となれば尚更だろう。

 「ハハッ、どこの世界も戦いだからね。それは分かる気がする」

 世界によっては俺達二十柱の影響がかなり強い世界がある。その世界では俺達に取り入ろうと必死になる者達もいた。あれも壮絶な戦いしてるんだろうけど、俺達って頭の中覗いて、本質見たうえで決めるからあんまり意味のない事なんだけどな。

 「でも私はジンさんが作ってくれた料理が好きですよ」

 突然ニーナが顔を赤くして言う。そういえば三人で旅している時は分担して料理作ってたな。

 「いやいや、俺のなんてまだまだ。二人の方が上手かったしさ」

 ニーナとシーラは二人での旅も長く、生活の為に必要なスキルは高いレベルで身についている。料理の腕も結構なモノだ。

 「そ、そんな事ないわよ~ジンはお世辞がうまいんだから~」
 
 シーラは少し照れ臭そうに言うとリオとセーブルがこっちをジッと見て来る。

 「私まだ食べてないんだけど……」
 「私もよ」
 「ああ、二人と合流した後はまだ作ってなかったね。ハハッ」
 「今度私も食べたいんですけど」
 「私も!」

 俺の料理は大して上手いもんじゃないからな。前に別の世界で勇者として旅してる時に覚えたぐらいだし、こっちでも勇者時代は作ったりしてたが、そんなにこってやったわけではない。

 「いや、俺のってそうでもないし……あっ、二人の料理が食べてみたいな」
 「えっ、私?」
 「そうそう、リオは料理出来るの?」
 「まぁ人並ぐらいかしらね」
 「なら是非食べさせてよ。男の子は女の子の手料理とか大好物だから」

 ここは少し汚いが、自分の料理期待されて作るぐらいなら作ってもらう事にしよう。女の子に作ってもらった食事なら食べれるレベルなら基本美味しく食べれるはずだ。

 「なっ……そうやって誤魔化して……でもそこまで言うなら作ってあげない事はないけどさ……」
 「本当!それじゃ今度お願いね!」

 だがセーブルは暗い表情でこちらを見つめる。

 「私料理出来ないの……」

 王女様だしやってなくても無理はないな。というか本来ならそういうのやる身分でもないからな。きっと厨房入ってもやらせてもらえないだろう。

 「まぁ王女様だし無理もないよ」
 「ううっ……私も料理作れるようになりたい……」
 
 セーブルは出来なくてもまぁ……この場合三人が出来るから自分が出来ないというのが嫌なのかもしれないな。

 「それだったら三人の誰かに……」
 「私……ジンに教えてもらいたいな。その方がすぐ覚えられると思う」

 凄い上目遣いでこっちを見る。これは断るのがきつい感じだな。まぁ基礎教えるぐらいなら大丈夫か。

 「だったら今度一緒に作ろうか。どうせ当番回って来るだろうしその時一緒にやろう」
 「やった!」
 「ハハッ、料理なんてやればある程度は出来るようになるし。ねぇみんな?」
 
 三人に同意を求めたが三人はジト目でこちらを見てくる。

 「あれ今度はどうしたんだい?」
 「セーブルだけずるいなって……」
 「いや、ほら三人は出来るし……」
 「ジンさんは本当女の子に甘いですからね~」
 「まぁそれがジンのいい所でもあり弱点よね」
 「どんな強者にも弱点はあるか……」

 三人は呆れたような感じでこちらを見る。

 いや美少女のお願いってほら、聞いてあげたくなっちゃうし仲間なら当然というか……その目やめてください。

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