上 下
29 / 47

29話:遺跡探索

しおりを挟む
 「こいつは……」

 黒く光る一つ目のゴーレムがこちらを見る。今にも攻撃が来そうな感じだ。

 「みんな後ろに!」
 
 俺の声と共にみな後ろに下がる。さっきの岩はこの広間の入り口、つまり俺達が走ってきた通路の前で止まっており、それが今来た道を塞いでいて逃げ場ない。

 「お手並み拝見と行くか……」

 一歩一歩ゆっくりと歩いていると、ある一定のラインを過ぎたとこで体が光出した。

 「ゼロディメンスィオ!」

 頭の部分を空間ごと消滅させる。流石にこんなところで広域殲滅魔法を発動するわけにはいかないからな。

 「うん?」

 すると頭のない状態のままこちらに向かって襲って来たのだ。

 「あれは飾りって事か……」

 体を回収したいだけに、空間ごと全部消すのは避けたい。核の場所だけわかればいいが……

 「ちょっとジン大丈夫なの!?」
 「ああ、問題ないよ」

 殴り掛かってくるゴーレムを避けながら会話をする。

 「ちょっと体を回収したくてね。核がどこか見極めているとこさ」

 攻撃を避けると同時に体に触れ力の波動を確認する。どうやら胸の真ん中の様だな。

 「ゼロディメンスィオ!」

 核があると思われる部分をそのまま消失させる。頭部と胸の真ん中辺りを消失したゴーレムはそのまま崩れ落ちた。

 「ふぅ~みんな大丈夫だよ」

 四人を呼びつつ、崩れたゴーレムの体を調べる。

 「これは魔石か?」

 崩れた体の一部を手に取り確認する。どうやら壁の魔石と同じ物で、人工的に加工された物だ。今戦っている時にゴーレムの体に触れて驚いたのはこの魔石の硬度にあった。というのもこの魔石を使えば強度に優れた武器を作れるかもしれない。それだけでなく建物なんかも優れた物を作る事ができるだろう。

 「流石はジンね!」
 「またあのゼロディメンスィオでしたね~」
 「ハハッ、こういう場所だと広域殲滅魔法はどうしても使えないからね。これ凄い使い勝手がいいんだ」

 任意の空間に存在するのは消し飛ばしてくれる実に便利な魔法だ。この世界の魔王もこれ使えば普通に一発終了だ。

 「何の魔法が全く分からないわ……」
 「セーブル気にしては負けよ……ジンのとんでも魔法を理解するのが無理な話よ」
 「まぁ習得は難しいだろうね」

 ゼロディメンスィオを唱えるレベルにいる者がこの世界にいたら俺達二十柱の部下にスカウトするだろうな。まぁ第八位階より上の魔法を唱えられる時点で超人ですって言っているようなものだからな。

 「それでこいつの体をどうするつもり?」
 「当然回収さ。これはお宝だよ」

 身体が魔石で出来ているからな。しかもこの魔石を加工する事ができれば、強力な武器を作る事も可能だろう。

 「どういう事?」
 「こいつの体は魔石でできているんだ。だからこの魔石からシーラの武器作れるかもしれない」

 土属性だろうし、シーラの魔剣作りには持って来いだけど、問題は加工が出来るかどうかだな。

 「マジ?」
 「ああ、だから全部回収だ」

 身体の魔石を回収し、先へと進む。この先も敵だらけかと思いきやそうでもなく問題なく進む。途中途中の壁に刻まれた絵なんかを見るとクリスタルの加護を受けて繁栄していたのが良くわかる。

 「セーブル、この古代人の文字とかって解析できているのかい?」
 「ほとんど解明されてないわ……一説によれば滅ぼされたというより、消えたという説の方が高いって城では聞いたわね」

 セーブルの言う通り、もし侵略されて滅ぼされていれば、この区画が侵略されていないというのもおかしな話だ。

 「一番は土のクリスタルに語りかえれば一発でわかるだろうけど今はまだ確かめようがないからな……」
 「最下層まで行けば何かわかるかもしれないわね」
 「確かに。最下層まで後どれぐらいなの?」
 「あと八区画ぐらいかな」

 ゴーレムを倒してから何だかんだで十区画ぐらい進んだが敵が全く出てこないのもおかしな話だ。そろそろ来るだろう。

 「下にお宝あるかしら……」

 シーラは随分とお宝にこだわっているな。何か理由でもあるのだろうか。

 「かなりお宝にこだわってるようだけどお金にでも困っているのかい?」
 「い、いやそういう訳じゃないんだけどね~こういう遺跡でお宝ゲットするのにロマンを感じててさ~」
 「シーラは昔からそんな事言ってましたね~」

 ミーナがクスクスと笑う。大金が必要だとかそういう理由があるのであれば何とか力になってやらないとだからな。まだ二人の過去を良く知らないし徐々に聞いていかないとだ。

 「ハハッ、そういう事ね。でもこういうのは途中の過程にロマンがあるんじゃないかなって俺は思うけどね」
 「そうね、みんなでこうしてワクワク探索するのが何より思い出として残るし、それが宝になるわ」

 リオは俺と同じ考えのようだな。まぁ一獲千金を考えているような人からすれば、お宝が全てなのかもしれないがな。

 「それは勿論わかっているわ。ただお宝もあったらなお嬉しいでしょ!」
 
 あの魔石は金銀財宝よりも遥かに価値のある物なんだけどな……あれだけでも売るとこ売ればかなりの金になるはずだ。

 「でしたら今後旅をしながら、こういう古代文明の遺跡巡りなんかを今後やっていく?お父様に聞けば色々教えてくれるし、古代文明跡地は世界各地にあるわ」
 「それはいいかもね」
 
 今回みたく魔石なんかをゲットできれば強力な武器を作る事もできるからな。

 「それがいいわ。そうしましょう!」
 
 シーラは凄い張り切り具合だ。

 「あんまりお宝目当てというのは気が進まないけど、魔石や魔具がゲットできる可能性があるならありね」
 
 
 ◇


 下へ下へと進んでいき、最下層へと辿り着いた。今までとは違いホールのように広い大広間だ。白く光る壁には古代文字が刻まれており、奥には祭壇のような物が見えるが暗くて良く見えない。それぐらい広いのだ。

 「ここがゴールかな」

 全部回ったしこの部屋で最後だがここだけ不自然なまでに広いな。何をする部屋だったかにもよるが……

 「さてお宝~」
 「こらミーナ~」

 シーラは一人早く先に行こうとするので、ミーナはそれを止めようとシーラを追いかけたその瞬間だった。

 「えっ……」

 見えない壁が貼られシーラとミーナ、俺達三人が分断される。

 「何これ……」 

 シーラとミーナが引き返し見えない壁を叩く。どうやら声はしっかり届くらしいな。

 「これはヤバイな……」

 シーラ達のいる方から何かのうめき声が聞こえており、鋭い眼光がこちらを睨みつけていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです

桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

勇者がパーティーを追放されたので、冒険者の街で「助っ人冒険者」を始めたら……勇者だった頃よりも大忙しなのですが!?

シトラス=ライス
ファンタジー
 漆黒の勇者ノワールは、突然やってきた国の皇子ブランシュに力の証である聖剣を奪われ、追放を宣言される。 かなり不真面目なメンバーたちも、真面目なノワールが気に入らず、彼の追放に加担していたらしい。 結果ノワールは勇者にも関わらずパーティーを追い出されてしまう。 途方に暮れてたノワールは、放浪の最中にたまたまヨトンヘイム冒険者ギルドの受付嬢の「リゼ」を救出する。 すると彼女から……「とっても強いそこのあなた! 助っ人冒険者になりませんか!?」  特にやることも見つからなかったノワールは、名前を「ノルン」と変え、その誘いを受け、公僕の戦士である「助っ人冒険者」となった。  さすがは元勇者というべきか。 助っ人にも関わらず主役級の大活躍をしたり、久々に食事やお酒を楽しんだり、新人の冒険者の面倒を見たりなどなど…………あれ? 勇者だったころよりも、充実してないか?  一方その頃、勇者になりかわったブランシュは能力の代償と、その強大な力に振り回されているのだった…… *本作は以前連載をしておりました「勇者がパーティーをクビになったので、山に囲まれた田舎でスローライフを始めたら(かつて助けた村娘と共に)、最初は地元民となんやかんやとあったけど……今は、勇者だった頃よりもはるかに幸せなのですが?」のリブート作品になります。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

大罪を極めし者〜天使の契約者〜

月読真琴
ファンタジー
クラスの何人かと一緒に召喚された 神楽坂暁 みんなは勇者や聖女、賢者など強そうな職業なのに僕は無職? みんなを助けようとしても裏切られ、暗い地の底に落ちていった。 そして暁は人間が心の底から信頼できなくなってしまった。 人との関わりも避けるつもりでいた、 けど地の底で暁は最愛と運命の出会いを果たした。 この話は暁が本当に欲しい物を探しだすまでの物語。 悪い所や良い所など感想や評価をお願いします。直していきより良い作品にしたいと思います。 小説家になろう様でも公開しています。 https://ncode.syosetu.com/n2523fb/

「モノマネだけの無能野郎は追放だ!」と、勇者パーティーをクビになった【模倣】スキル持ちの俺は、最強種のヒロインたちの能力を模倣し無双する!

藤川未来
ファンタジー
 主人公カイン(男性 20歳)は、あらゆる能力を模倣(コピー)する事が出来るスキルを持つ。  だが、カインは「モノマネだけの無能野郎は追放だ!」と言われて、勇者パーティーから追放されてしまう。  失意の中、カインは、元弟子の美少女3人と出会う。彼女達は、【希少種】と呼ばれる最強の種族の美少女たちだった。  ハイエルフのルイズ。猫神族のフローラ。精霊族のエルフリーデ。  彼女たちの能力を模倣(コピー)する事で、主人公カインは勇者を遙かに超える戦闘能力を持つようになる。  やがて、主人公カインは、10人の希少種のヒロイン達を仲間に迎え、彼女達と共に、魔王を倒し、「本物の勇者」として人類から崇拝される英雄となる。  模倣(コピー)スキルで、無双して英雄に成り上がる主人公カインの痛快無双ストーリー ◆◆◆◆【毎日7時10分、12時10分、18時10分、20時10分に、一日4回投稿します】◆◆◆

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

処理中です...