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26話:騒動を終えて

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 「流石はジン殿ですな~」

 無事ネイツ公爵を捕らえ、それを支持した者なんかにも多少なりとも処罰が下される事となった。流石に王子と王女を罰するような事はしないと思うが何かしろの警告を出すだろう。

 「ゲンダイさんがあそこでしっかりと証言してくれたので、これは大丈夫だなって思って進めちゃいました」

 ゲンダイは国王の下で働く事となった。証言台に立ったという事で罪を許された。まぁこれは俺がお願いしたというのもあるがな。

 「しかしあの記憶を見せる魔法も凄い!」
 「あれですね。でもあれは広める気はありません」

 あれはかえって不利に働く場合も出てきてしまう。

 「うむ……あれはジン殿だけが使えればそれで良いかと」
 「そうしていただけると助かります。それでゾーラ王子に関してはどうするつもりで?」

 一応息子だし王になりたいという気持ちはわかるはずだ。

 「そうじゃのう……わしとて息子が憎いわけではない。だが加護を得る事の出来なかった者を加護を得た者を差し置いて後継者にする事はできん。それは国の破滅へと繋がる可能性があるからな」

 エリンギの代々の王は大抵クリスタルの加護を得る事が出来た者がやっているらしく、そうでない王が出た時は、次の代に加護を得る事が出来た後継者を早く作る為に子作りを早くやるらしい。なんでも凄い昔に、クリスタルの加護を持たぬ王のせいで国が滅びそうになった事があるらしく、加護の持たぬ王が出た時はなるべく早く次の代にという習わしがあるとか。

 「ですね、失礼ながら軽く脅しておきましたので変な気は起こさないとは思いますけど、警戒を怠ってはいけませんね」
 「うむ、まだ奴を王にと考える輩もいるだろうからな」
 「ですね」

 ネイツ公爵を失脚させたとはいえまだ油断は出来ないのが現状だ。

 「それで是非ここで頼みがあるのだがいいかのう?」
 「頼みですか?」

 国王が神妙な顔つきになる。一体何を頼まれるのか……

 「是非セーブルと結婚してほしい!」
 「ブォッ!」
 
 そうきたか……まぁあんなパフォーマンス見せたら無理もないけど……しかも国王は凄く真剣な眼差しでこっち見てるな。

 「い、いきなりですね陛下……」
 「ゲンダイから話を聞いたりしていてな。ジン殿は敵をも味方にする包容力と圧倒的な強さを持ち合わせていると判断してな。それでいて仲間には優しい。君以上に適任なのはこの先現れる事はないだろう」

 そりゃ強さで言ったら同格なのは数える程しかいないけど。いや流石に国王になるのはな……

 「いやいやそんな事はありませんよ。それに適任さで言えばもっと別の人が……」
 「セーブルはジン殿に好意を抱いておる。さっきもジン殿の話をしてニコニコしていたからのう」
 「いや~流石に国王というのは難しいかなって……」
 「別に国王になれとは言わんさ。ただセーブルの想いに応えてくれたらなと。娘は嫌か?」
 「いやいや、そんな事はありませんよ。気さくな感じでみんなとフランクに接してくれてますし、よく自分の事も気遣ってくれますからね」

 なにより綺麗だし、可愛い。強いし冒険者にも向いているから王女である事が勿体ないとも思うぐらいだ。

 「そうかそうか。嫌じゃなければ是非検討してくれ」
 
 これ断るとかマジ無理ゲーだな。とりあえず誤魔化してその場をやり過ごさないとだな。

 「そうですね、まだ知り合ったばかりですしもっと色々知ってからまた返事をしますね」

 三人もいるし、ここで是非欲しいですなんて発言はできないな。この後の旅に支障をきたすわけにもいかないからな。

 「頼んだぞい。それでミステアに向かうと言っていたな」
 「はい」
 「セーブルにも話はしておいたが、君は収納魔法とかいうので物を置いておけるらしいじゃないか。行くついでに粗品を渡したいから、君が持っておいてくれないか?大きさが大きさでのう」
 「それは大丈夫ですよ」


 ◇


 国王との話を終え、四人のいるところへ戻る。渡せと言われたのは大きな銅像だった。友好を象徴するような感じの銅像で普通に届けるのは困難で手間のかかる品だ。俺がいなきゃ大がかりな輸送でもするつもりだったのだろう。

 「みんなお待たせ」
 「待ってたよ!」
 「お父様ったら話が長いわ~」
 「ハハッ、ミステアのエルフに届ける銅像を預かってね。それで少し手間がかかったんだ」

 セーブルを貰うよう説得されていたなんて言えないからな。しかしその件もどうしたものか……先延ばしにしただけで、結局後で返事をしないとだからな。

 「それでジンさんいつ出発します?」
 「もう陛下が準備をしてくれているはず。だからみんなが大丈夫ならすぐにでも行けるはずだよ」

 あらかじめ今日の朝の時点で、ネイツ公爵の件が終わったら出発出来るようにと準備をお願いしていたからな。

 「ならすぐに出ましょう。さっきの事を見ていた者はみなあなたに注目をしているわ。勿論セーブルにもだけどね」

 リオの言うように、ここに来るまでも貴族達からも声を掛けられ、是非友好をだなんて言われた。セーブルが女王となった時に相手として選ばれる可能性の高いと思われているのだろう。そうでなくとも強い者を敵に回したくないというのはみんな頭の中にあるからな。
 
 「ここに来るまでも何度か貴族の人達に声をかけられたよ~みんなは大丈夫だった?」
 「私は是非次期女王なんて言われて、今まで話した事ない貴族からも声をかけられたわ……まぁネイツが失脚した時点でこうなる事はわかってはいたけどね……」

 セーブルは溜息をつく。ネイツ公爵が失脚した時点で次期後継者はセーブルだってのを決定付けたようなものだからな。

 「ちょっと派手にやりすぎちゃったね」
 「ハハッ、いつものとんでも魔法に比べたら全然地味だから大丈夫よ~」
 「フフッ、そうですね~」

 シーラとミーナは笑いながら言う。

 「いつももそんなに派手にはやってるつもりはないんだけどね~」
 「本気出したジンはパンドラの箱に閉まっておくべきね……」

 それを聞いたリオは訝し気な表情を見せる。まぁ本気の広域殲滅魔法なんざ出したらそれこそ引かれる事間違いなし。というかそんな事したら大地が……って感じだ。

 「そんなジンを毎日見れるんだし飽きない旅ができそうじゃない~ずっと城での生活だったし楽しみだわ~」

 セーブルは凄く嬉しそうな顔を見せる。王女様ってのは本来そんな自由奔放に生活できるわけじゃないからな。そういう身分の人からすれば普通の人より旅へのあこがれなんかも大きいのだろう。まぁ想像している以上に大変だけどね。

 「フフッ、それもそうね。それじゃあみんな行きましょうか」
 「ええ、次はミステアね……みんな行きましょう!」
 

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