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◇既に乙女じゃない◇
しおりを挟む扉は破壊された。皆呆然と扉の残骸を眺めて居た。静寂が辺りを包む。その静寂を麒麟が破る。パチンと指を鳴らし、周囲の結界を外す。扉の残骸も跡形も無くなくなる。いつの間にか、王妃様に王太子様、姫様も居る。拘束された王弟に双子王子も居た。4神が王と兵士を拘束する。麒麟が高らかに宣言する。
〈この者らにより、この世界の歪みは修正された。この世の神として、4人に敬意を払う。もう2度と同じ事を繰り返してはならない。王族は責任を取らねばならぬ。何か言い訳、言い分は有るか?有るなら申してみよ。〉
〈〈〈ございません。全てはみ心のままに。〉〉〉
王妃様。王太子様。姫様は麒麟に頭を垂れた。
〈他の者は何か言う事は無いのか?言わぬなら、私が全てを決めるぞ。勿論、今拘束されてる奴らはすべて処分だ。次王には歌姫に就いて貰いたい所だが、生憎と断られてしまった。少し頼りないが、次王には王太子が付け。知力は申し分が無い。賢王になるだろう。宰相には、歌姫と結婚し、其奴が就けば良かろう。半分とは言え血をわけた兄弟だ。知識の賢王を魔力のサポートで支えるが良い。其奴も頼りないが、歌姫が男以上に逞しく豪気だ。私もだが、原始の神まで惚れ込んだ様だ。神の眷属に迎えたいと言っとったぞ。歌姫が入れば大丈夫だろう。以上、何か問題は有るか?〉
〈ふざけるな!わしは王座を降りるつもりは無い。巨大な魔力で扉を吹き飛ばしたのはお前か!貴様は魔力無しでは無かったのか?ワシも魔力が増えたりは無かったぞ!本当に王家の血を引くのか?ワシの血を引くならワシに従え。歌姫との結婚も認めよう。魔力持ちが増えれば国も栄える。他の国も全てワシの物だ!〉
〈父上っ?歌姫は私達が嫁に貰う約束の筈です!扉が破壊された今、貴重な異界の乙女です。純粋な王家の血筋と番わせた方が良いのでは有りませんか?!〉
《貴様ら勝手な事ばかり言うな!麒麟も余計な事を言うな!カズ君がまた変な事に気を回してるよ!カズ君も今はそんな事より大事な事が有るでしょ?状況判断をキチンとしてよ。王太子様達は、麒麟の言う通りで良いの?カズ君はどうしたいの?王達の戯言は無視して話そうよ。麒麟は一応、この世界で1番偉い神だからね。麒麟の前で決めようよ。カズ君も急だと思うけど、なる様になれだよ?今決めちゃった方が気楽になれるよ?》
カズ君も何でこんな時に焼きもち焼いてるんだよ。いい加減しつこいなっ!この場の雰囲気読めよ!後で幾らでも話すよ!
〈麒麟様。私は父王に意見も言えぬ王太子です。しかし今のままでは駄目な事も、頭では理解しているつもりです。こんな私を王に押して下さるなら、是非ともそのお気持ちに答えたい。弟と歌姫が支えてくれるなら、尚心強くて嬉しい。母上、姉上も、私を支えてくれますか?〉
カズ君を弟って想ってくれてるんだね。どうするのカズ君?
〈勿論、私も母として支えますよ。私こそ王を諌める事が出来なかった。貴方には苦労をかけましたね。そしてカズ君に対する気持ちは、私も貴方と同じですよ。〉
〈私で良ければ何でも言いなさいよ。まあ私は愚痴位しか聞いてあげれないかもしれないね。でも王の姉として、臣下として、旦那と共に協力するわよ?今まで通りでしょ?カズ君もグリグリ可愛がっちゃうわよ。可愛い妹も出来ちゃう訳だしね。〉
《カズ君?カズ君はどうしたいの?》
〈俺は正直、この世界の事何てどうでも良いんだ。母を不幸にして、俺を孤独の淵に落とした王の血何て要らない。その男も父だ何て思いたくも無い。出来るなら殺したい位だ。俺の望みはマリーと共に居る事だ。それが叶うなら、自分に出来る事はしたい。王の血のせいで、マリーと別れるなら宰相何てしない。俺は母に次いで義父母を無くし1人だ。もう1人にはなりたくない。王妃様達の言葉は嬉しいけど、今の俺の1番はマリーなんだ。この国じゃ無い。母を不幸にしたこの国を、俺は直ぐには愛せない。でもマリーは、宰相になれって言うんだろ?俺も皆の気持ちは嬉しいし答えたい。マリーが居てくれるなら、宰相になるよ。皆を、そしてこの国を愛せるまでゆっくり待って欲しい。〉
《カズ君?私はずっと一緒に居るよ。だからこそ此方の世界に戻ったんだよ。扉に引き込まれた時の事は後で話すけど、神に何かならないから心配しないで?キチンと断ったし、チャラ神だって笑ってたよ?あのね?扉の中で、カズ君のお母さんの魂に会ったんだよ。あの子を宜しくって言ってた。囚われてた魂達は元の世界の輪廻に還った。また産まれ変わって幸せになれるよ。カズ君も幸せにならなくちゃ。何時までも馬鹿王に囚われてたら駄目だよ!》
〈やはり歌姫は頼もしいな。まあ私の意見は神の意思だ。皆の意見等聞かぬ方が、全て上手く事が運びそうだな。まあ私の意見をベースに善きに計らえ。因みに王よ。ゲートを作った王には愛が有った。異界の乙女との深い愛情により、王の魔力が増えたのだ。正確には閉ざされていた魔力が解放されたのだ。魂の波長の合う者同士は、互いに能力を高め合う。王には元々巨大な魔力を持つ器だった。お前には魔力の器が無い。最初から無理な話だったのだ。では王と宰相に、王子達の身柄は此方が預かろう。なに殺しはしない。死ぬほど辛い、無と言う地獄に落ちるだけだ。無の境地を知り心を入れ換えれば出れるぞ?まあ最短5年位か?簡単に殺しては反省にならぬからな。4神よ。其奴らを無の地獄に連れてゆけ。筆頭魔術師は、反省すれば外れる拘束腕輪を嵌め解放だ。この腕輪をしてる限りは、悪事を働く事は出来ぬ。心の悪を一定以上関知すると、電撃を喰らう仕組みだ。魔力は封じぬが、悪意で使おうとすると発動するぞ。最悪死ぬから気をつけろよ。まあ王家に仕えておれば、何時かは外れるだろう。では一応聞くが、互いに最後に言う事は有るが?〉
〈王よ。貴方には救いは無い。王妃として貴方を諌められ無かった償いは、息子達を支える事で少しでも返せればと思って居ます。王子達よ。母は何時も貴方達を諌めてましたよね?最後に歌姫に謝罪は出来ませんか?その上で心を入れ換え、赦され戻る気持ちには成れませんか?その気持ちが持てるなら、皆は貴方達を待って居ます。宰相よ。貴方は私欲に走り過ぎました。せめて赦しを得る様、努力して下さい。〉
〈〈母上・・・。〉〉
〈歌姫。色々と無体を働きすまなかったな。私達は驕り昂って居た様だ。しかしお前が欲しかったのも事実だ。まあ弟と仲良くやれよ。早く卒業させて貰え。いや、もしかしたら互いに卒業か?初めは上手くいかないだろうが、互いに頑張れよ。今更言えた義理では無いが、兄上を宜しく頼む。ではな。〉
おい。反省はした様だが、余計な事は言うなよ。
〈一応謝罪は受けとくよ。戻って来てから、土下座して謝罪し直してくれ。何か俺様なのが嫌だ。後、余計な心配は要らない。カズ君とはラブラブだ。私は既に乙女じゃない。既に2人で卒業済みだ。因みに城を脱出するまでは乙女だったぞ。麒麟の城で卒業だ。隠してて悪かったな。〉
〈〈・・・・・。それはしてやられたな。〉〉
〈ではそろそろお開きにするぞ。お前達は1度4人で城にこい。原始の神からの褒美を考えておけとの事だ。〉
褒美忘れてたよ・・・。
〈城の使用人や兵士等には、私から思念を送って有る。辞めたい奴は早々に城を出てく筈だ。しかし殆どが王太子に従う様だぞ。王と居た兵士の記憶は消去した。ゲート破壊はお前らしか知らない。いや、ゲートそのものを無かった形にした。つまり王が代替りしただけだ。今まで通りで大丈夫。無理は必要無いぞ。この愚王でさえ平和な国だったのだ。今まで影で支えて居た者が王なのだ。ますます平和になるだろう。では4神よゆくぞ。〉
《麒麟に4神。色々と有り難う。寂しくなるけど、私達を見守っててね。じゃあね~。》
〈お前は何時でも城に来るが良い。原始の神も、お前が来たら直ぐに降臨するそうだぞ。ん?睨まれとるな?変な心配は無用だぞ。本当に心の狭い奴だ。心配なら、お前が瞬間移動で連れてこい。自らが、その狭量に稽古をつけてやろう。ではな。〉
神々が去った。流石に皆、疲労困憊だ。明日の昼食を一緒にすると決め、本日は解散とした。私達はログハウスに戻った。カズ君は色々聞きたかった様だが、私はもう限界だった。布団を出し、そのまま倒れ込む様に眠りについた。カズ君ごめんよ。
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