8 / 18
⑦
しおりを挟むもう! 説明が分り憎いのよ!ブライアンしっかりして!踏ん張れ!誠意を!男気を見せて!
「僕は一週間前に我が国へ戻ってきたばかりだよ。 前回の騒動の後、魔の森の討伐隊で鍛えながら、我が国の学園は飛び級で卒業した。その後にローレル魔法大国へ留学していたんだ!魔法学専門の、特殊魔術学園にね! まさかナナさんたちも留学していたの? そんなわけがないよね? 」
「「……」」
さすがにそれは無理よ。ブライアンも中々意地悪を言うじゃない。魔法大国の魔術学園は、高魔力持ちでなけれは入学出来ないの。特に特殊魔術学園は、鍛える前のブライアンでは、門前払いだったはず。特訓であまりにも成長したから、公爵たる父が頼み込んで留学したの。ブライアンは特別生徒枠で編入試験を突破し、約一年の約束で学んでいたのよ。だから国を出てもいないお二人に、嫌がらせなんて出来やしない。互いに通う学園の所在地が、まったく違うんだもの。ましてや池ポチゃなんてもっての他よ……
しかし羨ましすぎる! 父め……なぜ私に特集魔術学園の存在を教えなかったのよ! 私も留学したかった!気付けなかった自分が憎い……
「ブライアン様……私ってば疑ってしまい……本当に申し訳ありませんわ。そうですよね。わが校の池の仕様を考えても解ること。あそこに落ちて生きていられるわけが有りませんわ……」
そうよ! あの池は凄いんだから!もはや池では無いわ!水が美しいだけの沼地よ!魔物はウヨウヨ。有害植物の宝庫。なのに見た目の美しさに惑わされて油断し殺られるの。噂では悪戯好きな妖精たちが、人間を困らせて惑わせているという。魔術学園の七不思議の一つである魔の池。毎年卒業生の卒業認定試験のためのキャンプ地となっている。
実質このキャンプのために、池の生態系をそのままにしているそうよ。
「そうよね。私も見学して驚いたわ。しかしあれだけハードに訓練するから、魔法大国の魔術師は育つのでしょう。我が国のヘッポコ魔術師団も、留学し鍛え直して貰うべきよ。でもあのヘッポコ加減ではご迷惑がかかるわね……あ! それ以前に魔力量が不足だわ。私が特訓するにも限界があるのよ……」
私の呟きに会場が静まっている。ん?リーダーなによ?あ……追加の情報ね。ありがたいけど、少しは然り気無く出来ないの?
ナナさんと男性はすっかり大人しくなってしまっている。するとまた扉が開く音がする。会場内にざわめきがおきる。
あれは皇太子様! まだ入場の時間ではないはず。同伴するべき私もまだ、控え室へ戻っていないのに! ちなみに本日は王と王妃様は出席しない。参加者は外交関係の方々ばかり。次世代を担うものたちの集まりなのよ。
「エリザベート! 悪いが介入するぞ。込み入っている様だが、これも必要な情報だろう。実はウイズ男爵家の現当主から、公爵家嫡子のブライアンに、公的に妾を献上するとの話が来ている。身分的にも釣り合わないのは承知しているが、腹の子が不憫だとのこと。もちろん孫に公爵家の後継などは望まない。青き血をもつ腹の子は、男爵でも情けをかけた娘を哀れに思うのであれば、大勢の妾の一人として可愛がって欲しいそうだ」
やはり思った通りね。息子には嫁が見つからない。慌てて娘にと思ったら、娘にはすでに恋人が!さらにはお腹に子までいた。もうにっちもさっちもいかなくなり、お腹の孫に青き血が混じったと苦し紛れの嘘をつく……
でもたいした度胸よね。これって我が公爵家をバカにし侮辱しただけではすまないのよ。国王様を謀っているのですもの。盟約を違えた者を男爵家の後継とする……バレた時点で高位貴族でも首が飛ぶわ。下手したら一族郎党死罪もありえる……
「そこの二人よ。 今夜は私たちの壮行会ではあるが、ブライアンと魔法大国の姫君であるソフィア姫の婚約披露でもあった。ゆえに魔法大国の方々に、近隣諸国の若手もいらしている。こんな大事な場を台無しにするものたちは、余興としてこの場で問答無用で首をハネられても文句は言えぬぞ。 この婚約には政略的なことも絡んでいる。それを台無しにするとは、自国の首を絞めると言うことだ。下手すれば戦争ぼっ発だ。そなたらにその様な覚悟はあるのか? 」
二人は真っ青になり震えている。これではなにも言えないでしょう。私は二人の側にゆき、重要な一点のみを確認する。そのまま立ち上がり、皇太子様に向き合い発言の許可をとった。
「構わぬ。この場を収めるためならなんでも話せ」
「ありがとうございます。ではまずここにいるお二人の意思をお伝えしますわ。お二人は現ウイズ男爵に無理やり引き裂かれようとしている被害者です。男爵の指示がなければ、お二人は似合いの夫婦となったでしょう。お腹の子はお二人の子です。二人は決まっていた結婚を突如反対され、別れたくなければと男爵に脅されていました。どうやら男性側の家族の商売を潰すと、圧力をかけられた様です」
「ごめんなさい! 父は私なんて放置していたくせに! 兄だけを大事にしていたのに! 私は幼少時から家出同然で、ほとんど彼の家族といたの。ご両親の経営する食堂で、お手伝いしながらご飯を食べさせて貰ってた。なのにいきなり連れ戻され、編入試験を受けさせられ、学園に放り込まれた。誰でも良いから貴族の男を手玉に取れって! でも私には無理だった……彼が心配して猛勉強して学園に追いかけてきてくれて……二人で逃げようって……」
「ナナは悪くない! 同時期にたまたまブライアンたちが、ローズマリーになんて夢中になったから! 男爵はローズマリーの悪行を、同じ奨学生だからと、ナナの行為と勘違いしたんだ! ナナが貴族の男たちを手玉にとっているとね! 妊娠がわかって、俺の子だと言っても信じやしない。都合の良い方にばかり考えてやがる! 」
これは私もビックリ。まさかローズマリーが絡んで来るとは……私はてっきり男爵は、自棄っぱちでブライアンとのことをでっち上げたのかと……ブライアンは押しが弱そうだから、かもネギだと思われたとばかり……
ならばウイズ男爵は、孫に本当に青き血が混じったと思っているの?ブライアンの血が!?
前回の騒動でローズマリーをマーガレットブランドの代表だと勘違いをした、あの侯爵と同じようなバカじゃない。
なんだかこの国の先が心配になるわね。やはり王妃は……再度婚約破棄を狙おうかしら?
「姉さん……僕のことチョロいとか思ってる? でも鼻は利くから。絶対に逃がさないよ。己で決めたんだよね? 」
……ブライアン……中々逞しくなったな……弱っちい姉を許して欲しい……
「ブライアン? 私はか弱い女性なのです。出来れば匿って下さいな。しかし……都合の良い方にばかりですか……。前回の詐欺侯爵しかり……まるで都合の良い所ばかりを覚えていらした、いつぞやのどなた様かの様ですが……しかも皇太子様とブライアンは……」
「ねっ姉さん……僕は自力で解除したよ……」
「ごほん! エリザベート……今はその話では……」
そうだけど……あれらが有ったから、今回の騒動も起きているのよ!
「まあ……とにかくブライアンの無実は晴れました。皇太子様は……まあ、今は関係ございませんね。さて。妊婦さんが座り込んでいては、お腹を冷やしてしまいます。ここに悪人はいないのです。悪人はのちほど、しっかりと処分致しましょう。ではそろそろパーティーを開始致しましょうか。開始前に集まって下さっていた皆様。大変ご迷惑をおかけ致しました。皆様スタンバイを宜しくお願いしますわ」
「皆のもの。この二人の未来のためにも、この場は収め、パーティーを楽しんで欲しい」
私は座り込む二人の手をとり、客間へと誘導する。侍女を付け彼女の安静と、食事等のお世話を頼んだ。
控え室に行くとムッツリとした皇太子様。私は服装と髪型の乱れを直しながら、皇太子様に話しかける。うーん。お化粧は大丈夫そうね。
「大丈夫ですよ。もう都合の良い所ばかりではないんですよね? エドワードはエドなんです。ユウに飲まれては駄目ですよ。私もエリザベートです。エリーです。クリスではありません。間違えないで下さいね」
「ああ……二度と間違えない……」
「ではそのムッツリ顔はやめて下さいませ」
「……」
はいはい。反省しているのに、大勢の前で話しをしたからムッツリしてるのよね?もう……仕方がないわね……
「チュッ。ほら時間よ。行きましょう」
「エッ……エリー……いや……エリザベートっ」
「今はドリル髪型のエリザベートですが、二人だけですからエリーで良いですよ。いつかエドがこの戦闘服を脱がせて下さいね……」
こら!嬉々として抱きつくのは構わないけど、どこに手を突っ込んでいるのかしら?ドレスを脱がすのではなくて、ドリル髪型をしなくて良いようにして?と言う意味なの!もう……すぐに調子に乗るんだから!
*****
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~
桜 鴬
ファンタジー
スキル無限収納は、別名を亜空間収納といわれているわ。このスキルを所持する人間たちは、底無しとも言われる収納空間を利用出来るの。古の人間たちは誰もが大気中から体内へ無限に魔力を吸収巡回していた。それ故に誰もが亜空間を収納スペースとして利用していた。だけどそれが当たり前では無くなってしまった。それは人間の驕りからきたもの。
やがて…………
無限収納は無限では無く己の魔力量による限りのある収納となり、インベントリと呼ばれるようになった。さらには通常のスキルと同じく、誰もが使えるスキルでは無くなってしまった……。
主を亡くしたインベントリの中身は、継承の鍵と遺言により、血族にのみ継承ができる。しかし鍵を作るのは複雑て、なおかつ定期的な更新が必要。
だから……
亜空間には主を失い、思いを託されたままの無数のインベントリが……あてもなく……永遠に……哀しくさ迷っている…………
やがてその思いを引き寄せるスキルが誕生する。それがミラクルマスターである。
なーんちゃってちょっとカッコつけすぎちゃった。私はミラクルマスター。希少なスキル持ちの王子たちをサポートに、各地を巡回しながらお仕事してまーす!苺ケーキが大好物だよん。ちなみに成人してますから!おちびに見えるのは成長が遅れてるからよ。仕方ないの。子は親を選べないからね。あ!あのね。只今自称ヒロインさんとやらが出没中らしいの。私を名指しして、悪役令嬢だとわめいているそう。でも私は旅してるし、ミラクルマスターになるときに、王族の保護に入るから、貴族の身分は捨てるんだよね。どうせ私の親は処刑されるような罪人だったから構わない。でもその悪役令嬢の私は、ボンキュッボンのナイスバディらしい。自称ヒロインさんの言葉が本当なら、私はまだまだ成長する訳ですね!わーい。こら!頭撫でるな!叩くのもダメ!のびなくなっちゃうー!背はまだまだこれから伸びるんだってば!
【公開予定】
(Ⅰ)最後まで優しい人・㊤㊦
(Ⅱ)ごうつくばりじいさん・①~⑤
(Ⅲ)乙女ゲーム・ヒロインが!転生者編①~⑦
短編(数話毎)読み切り方式。(Ⅰ)~(Ⅲ)以降は、不定期更新となります<(_ _*)>
【完結】悪役令嬢に転生した私はヒロインに求婚されましたが、ヒロインは実は男で、私を溺愛する変態の勇者っぽい人でした。
DAKUNちょめ
ファンタジー
乙女ゲームにありがちな断罪の場にて悪役令嬢であるディアーナは、前世の自分が日本人女子高生である事を思い出した。
目の前には婚約者と、婚約者を奪った美しい少女…
に、悪役令嬢のディアーナが求婚される。
この世界において、唯一の神に通じる力を持つ青年と、彼を変態と呼び共に旅をする事になった令嬢ディアーナ、そして巻き込まれた上に保護者のような立ち位置になった元婚約者の王子。
そんなお話し。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~
ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」
騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。
その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。
この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
とある中年男性の転生冒険記
うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる