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 もう! 説明が分り憎いのよ!ブライアンしっかりして!踏ん張れ!誠意を!男気を見せて!

 「僕は一週間前に我が国へ戻ってきたばかりだよ。 前回の騒動の後、魔の森の討伐隊で鍛えながら、我が国の学園は飛び級で卒業した。その後にローレル魔法大国へ留学していたんだ!魔法学専門の、特殊魔術学園にね! まさかナナさんたちも留学していたの? そんなわけがないよね? 」

 「「……」」

 さすがにそれは無理よ。ブライアンも中々意地悪を言うじゃない。魔法大国の魔術学園は、高魔力持ちでなけれは入学出来ないの。特に特殊魔術学園は、鍛える前のブライアンでは、門前払いだったはず。特訓であまりにも成長したから、公爵たる父が頼み込んで留学したの。ブライアンは特別生徒枠で編入試験を突破し、約一年の約束で学んでいたのよ。だから国を出てもいないお二人に、嫌がらせなんて出来やしない。互いに通う学園の所在地が、まったく違うんだもの。ましてや池ポチゃなんてもっての他よ……

 しかし羨ましすぎる! 父め……なぜ私に特集魔術学園の存在を教えなかったのよ! 私も留学したかった!気付けなかった自分が憎い……

 「ブライアン様……私ってば疑ってしまい……本当に申し訳ありませんわ。そうですよね。わが校の池の仕様を考えても解ること。あそこに落ちて生きていられるわけが有りませんわ……」

 そうよ! あの池は凄いんだから!もはや池では無いわ!水が美しいだけの沼地よ!魔物はウヨウヨ。有害植物の宝庫。なのに見た目の美しさに惑わされて油断し殺られるの。噂では悪戯好きな妖精たちが、人間を困らせて惑わせているという。魔術学園の七不思議の一つである魔の池。毎年卒業生の卒業認定試験のためのキャンプ地となっている。

 実質このキャンプのために、池の生態系をそのままにしているそうよ。

 「そうよね。私も見学して驚いたわ。しかしあれだけハードに訓練するから、魔法大国の魔術師は育つのでしょう。我が国のヘッポコ魔術師団も、留学し鍛え直して貰うべきよ。でもあのヘッポコ加減ではご迷惑がかかるわね……あ! それ以前に魔力量が不足だわ。私が特訓するにも限界があるのよ……」

  私の呟きに会場が静まっている。ん?リーダーなによ?あ……追加の情報ね。ありがたいけど、少しは然り気無く出来ないの?

 ナナさんと男性はすっかり大人しくなってしまっている。するとまた扉が開く音がする。会場内にざわめきがおきる。

 あれは皇太子様! まだ入場の時間ではないはず。同伴するべき私もまだ、控え室へ戻っていないのに! ちなみに本日は王と王妃様は出席しない。参加者は外交関係の方々ばかり。次世代を担うものたちの集まりなのよ。

 「エリザベート! 悪いが介入するぞ。込み入っている様だが、これも必要な情報だろう。実はウイズ男爵家の現当主から、公爵家嫡子のブライアンに、公的に妾を献上するとの話が来ている。身分的にも釣り合わないのは承知しているが、腹の子が不憫だとのこと。もちろん孫に公爵家の後継などは望まない。青き血をもつ腹の子は、男爵でも情けをかけた娘を哀れに思うのであれば、大勢の妾の一人として可愛がって欲しいそうだ」

 やはり思った通りね。息子には嫁が見つからない。慌てて娘にと思ったら、娘にはすでに恋人が!さらにはお腹に子までいた。もうにっちもさっちもいかなくなり、お腹の孫に青き血が混じったと苦し紛れの嘘をつく……

 でもたいした度胸よね。これって我が公爵家をバカにし侮辱しただけではすまないのよ。国王様を謀っているのですもの。盟約を違えた者を男爵家の後継とする……バレた時点で高位貴族でも首が飛ぶわ。下手したら一族郎党死罪もありえる……

 「そこの二人よ。 今夜は私たちの壮行会ではあるが、ブライアンと魔法大国の姫君であるソフィア姫の婚約披露でもあった。ゆえに魔法大国の方々に、近隣諸国の若手もいらしている。こんな大事な場を台無しにするものたちは、余興としてこの場で問答無用で首をハネられても文句は言えぬぞ。 この婚約には政略的なことも絡んでいる。それを台無しにするとは、自国の首を絞めると言うことだ。下手すれば戦争ぼっ発だ。そなたらにその様な覚悟はあるのか? 」

 二人は真っ青になり震えている。これではなにも言えないでしょう。私は二人の側にゆき、重要な一点のみを確認する。そのまま立ち上がり、皇太子様に向き合い発言の許可をとった。

 「構わぬ。この場を収めるためならなんでも話せ」

 「ありがとうございます。ではまずここにいるお二人の意思をお伝えしますわ。お二人は現ウイズ男爵に無理やり引き裂かれようとしている被害者です。男爵の指示がなければ、お二人は似合いの夫婦となったでしょう。お腹の子はお二人の子です。二人は決まっていた結婚を突如反対され、別れたくなければと男爵に脅されていました。どうやら男性側の家族の商売を潰すと、圧力をかけられた様です」

 「ごめんなさい! 父は私なんて放置していたくせに! 兄だけを大事にしていたのに! 私は幼少時から家出同然で、ほとんど彼の家族といたの。ご両親の経営する食堂で、お手伝いしながらご飯を食べさせて貰ってた。なのにいきなり連れ戻され、編入試験を受けさせられ、学園に放り込まれた。誰でも良いから貴族の男を手玉に取れって! でも私には無理だった……彼が心配して猛勉強して学園に追いかけてきてくれて……二人で逃げようって……」

 「ナナは悪くない! 同時期にたまたまブライアンたちが、ローズマリーになんて夢中になったから! 男爵はローズマリーの悪行を、同じ奨学生だからと、ナナの行為と勘違いしたんだ! ナナが貴族の男たちを手玉にとっているとね! 妊娠がわかって、俺の子だと言っても信じやしない。都合の良い方にばかり考えてやがる! 」

 これは私もビックリ。まさかローズマリーが絡んで来るとは……私はてっきり男爵は、自棄っぱちでブライアンとのことをでっち上げたのかと……ブライアンは押しが弱そうだから、かもネギだと思われたとばかり……

 ならばウイズ男爵は、孫に本当に青き血が混じったと思っているの?ブライアンの血が!?

 前回の騒動でローズマリーをマーガレットブランドの代表だと勘違いをした、あの侯爵と同じようなバカじゃない。

 なんだかこの国の先が心配になるわね。やはり王妃は……再度婚約破棄を狙おうかしら?

 「姉さん……僕のことチョロいとか思ってる? でも鼻は利くから。絶対に逃がさないよ。己で決めたんだよね? 」

 ……ブライアン……中々逞しくなったな……弱っちい姉を許して欲しい……

 「ブライアン? 私はか弱い女性なのです。出来れば匿って下さいな。しかし……都合の良い方にばかりですか……。前回の詐欺侯爵しかり……まるで都合の良い所ばかりを覚えていらした、いつぞやのどなた様かの様ですが……しかも皇太子様とブライアンは……」

 「ねっ姉さん……僕は自力で解除したよ……」

 「ごほん! エリザベート……今はその話では……」

 そうだけど……あれらが有ったから、今回の騒動も起きているのよ!

 「まあ……とにかくブライアンの無実は晴れました。皇太子様は……まあ、今は関係ございませんね。さて。妊婦さんが座り込んでいては、お腹を冷やしてしまいます。ここに悪人はいないのです。悪人はのちほど、しっかりと処分致しましょう。ではそろそろパーティーを開始致しましょうか。開始前に集まって下さっていた皆様。大変ご迷惑をおかけ致しました。皆様スタンバイを宜しくお願いしますわ」

 「皆のもの。この二人の未来のためにも、この場は収め、パーティーを楽しんで欲しい」

 私は座り込む二人の手をとり、客間へと誘導する。侍女を付け彼女の安静と、食事等のお世話を頼んだ。

 控え室に行くとムッツリとした皇太子様。私は服装と髪型の乱れを直しながら、皇太子様に話しかける。うーん。お化粧は大丈夫そうね。

 「大丈夫ですよ。もう都合の良い所ばかりではないんですよね? エドワードはエドなんです。ユウに飲まれては駄目ですよ。私もエリザベートです。エリーです。クリスではありません。間違えないで下さいね」

 「ああ……二度と間違えない……」

 「ではそのムッツリ顔はやめて下さいませ」

 「……」

 はいはい。反省しているのに、大勢の前で話しをしたからムッツリしてるのよね?もう……仕方がないわね……

 「チュッ。ほら時間よ。行きましょう」

 「エッ……エリー……いや……エリザベートっ」

 「今はドリル髪型のエリザベートですが、二人だけですからエリーで良いですよ。いつかエドがこの戦闘服を脱がせて下さいね……」

 こら!嬉々として抱きつくのは構わないけど、どこに手を突っ込んでいるのかしら?ドレスを脱がすのではなくて、ドリル髪型をしなくて良いようにして?と言う意味なの!もう……すぐに調子に乗るんだから!

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