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【終章・to the shining future】
アリーとルイスの蜜月旅行?㊤
しおりを挟む電タクの周囲に集まるカップル。キャハハうふふと笑い合う人々。皆手を繋ぎ肩を寄せ合う。何だか場違い感が身を苛む。その波にのまれながら、我々も案内されて乗り込む。
パステルカラーの電タク。帝国内にもまだ1台しか無いと聞いていたが、王太子様は頑張って奮発したらしい。そのパステルカラーの電タクの後部には、ヒモに空缶を結んだ物がぶら下がっている。走り出すと、ガラガラゴロリンと鳴り出す。
電タクの入口で女性はミニブーケを渡され、男性は小さい紙袋を渡された。ゆったりしたシートに案内される。窓側に女性。次いで男性が着席する。座ると同時に座席は適度な角度にリクライニングされ、通路側のカーテンが引かれる。至れり尽くせりだ。
移動時間は約2時間。心地よい揺れが眠気を誘う。突然ドタバタと慌ただしかったから余計だよね。私はワンピースの脇を絞るリボンを弛め、靴を脱いで足を伸ばす。このワンピースは王太子様から貰ったのだけど、この為の仕様だったのね。寝るのが楽チンだわ!脇から備え付けのタオルケットを取り出しかける。
「悪いけど寝るね。お休み。」
ルイスはネクタイを弛め、ベルトを弄っている。着なれない服装は大変だね。あ!タオルケットを半分奪われた!
「ねえ。もう1枚出せば?」
「残念ですが、2人で1枚の様ですよ。カップルなら当然なのでしょう。もしかして寒いのですか?なら。」
いきなり2人の間の肘宛を外した。景色が見える窓にカーテンを引く。更にはクッションを、私と窓の隙間に詰め込む。
コレ凄く密着するんですけど…。
景色が見易い様に女性を窓際にするが、実は窓際はかなり冷えるとの事。
「カーテンを引き窓際から少し離れれば暖かいですよ。しかしやはり温かさは、人肌に勝るものは有りません。宜しければ抱っこしましょうか?」
・・・・・。
宜しく何て無いよ!最近ルイスの遠慮が無くなったんだよね。キザったらしくてムズムズしちゃう。悪いけど普通にしてくれないかな?
「もしかして照れてます?少しは意識してくれるなら嬉しいですね。私的には大ラッキーの棚からぼた餅ツアーです。遠慮なく楽しませて貰います。」
もう知らない。タオルケットを引き上げ、窓際のクッションに顔を埋めてふて寝モードに入る。
・・・・・。
やだ。あんまり窓の方に寄ると、後ろの人達のイチャイチャが聞こえちゃうじゃない。早く寝なくちゃ!ついつい赤くなる顔をクッションに押し付け寝た振りをする。
フイとクッションに伏せてた顔が涼しくなる。私はクルリと転がされ、目前には、私を覗き込むルイス。
「拗ねちゃって可愛らしいですね。流石に約束は守ります。でも少しは進んでも良いですよね?アリー?」
寝たふりしてたら唇を食べられた!マジで食べてる!ルイスってば!唇をハムハムするな!口の中まで舐めないでー!これキスじゃ無いよー?
「んぅー。んー。むぅー。」
腕で胸板をグイグイ押してみる。びくともしない。ルイス何て、筋肉無さそうにみえるのに!
放せー。苦しいー。
もう駄目だ。ぐぅ…ぅ…。
「しかしこの体勢は天国ですね。柔らかくて抱き心地最高です。カーテンの外側の皆様が羨ましい限りです。しかし同意無くては抹殺されます。まぁここまでならセーフでしょう。」
あっアリー?まさか気絶して?
・・・・・。
違いますね。寝ています。
まあ信頼されてると考えましょうか。しかし信頼では無く安心の様な気もしますね。やはり悔しいので、起きたら死ぬほど狼狽えさせて差し上げましょうか。
目的地までグッスリと寝たアリー。起きたらルイスに腕をまわし、コアラの様にしっかりとしがみついてて大慌て。
「アリーが寒いとしがみついてきたんですよ。服の中にまで潜り込む勢いで焦りましたよ。役得有難うございます。」
ぐぬぬ…。ニッコリ笑顔が眩しい。グッスリ寝てたから何も言えぬ…。
*****
何とビックリ。王太子様が私達の予定を知らせに来てくれました。それも王太子様自らのプランだそう。
私は椿姫達が心配だし、のんびりするつもりは無かった。しかし帝国の方がかなりの改革でてんてこ舞中。そちらは我国の王子が頑張っている。グレイは帝国と国との連絡等をしているそうだ。では我々は?
帝国領の島々は、かなり帝国の鎖国に影響を受けていた。鎖国が解かれ開かれた貿易。椿姫の国は断崖から望む素晴らしい海の景色と、海底温泉を売りにしている。並ぶ数々の旅行プラン。その中でも王太子様が自ら企画し宣伝してるのがコレ。
【隠りっきりの蜜月旅行】
何だか不穏なタイトルだよ。でも変な意味ではない。目的地に到着後、全てが徒歩圏内で楽しめるからこそのタイトルだそう。
実は王太子様はご結婚したばかり。だからカップルの痒い所にも手が届く。ご自分の幸せを皆様にもとの事。
今回のツアーは、近隣諸島の国々の方々が視察を兼ねて来ている。いわばご招待ツアー。帝国からも来る筈が、今回の事件で来れなくなった。そこに丁度良く来たのが私達。しかも婚約者。これは是非ツアーに入って欲しいとのお話だった。
婚約者は設定なのですが…。
嬉々として王太子様のお話を聞くルイス。余りに乗り気のルイスに口を挟めない…。
目的地は高台に有る。断崖絶壁の下に海を望み、湖の湖畔に佇む白亜のリゾート。その断崖絶壁の下にはプライベートビーチ。ビーチまでは階段で下り歩く。その途中に温泉が涌き出ている。
つまり高台の湖畔のホテルの下は、洞窟の様になってる訳よ。そこに温泉がある。その温泉は海にまで繋がっている。更には岩盤をくり貫き、一部の海中を見る事が出来る。
まさに海底温泉!魚の泳ぐお風呂ですね!魚がお風呂に入ったら湯立って死んじゃう?ルイス煩い!そんなの解ってるよ。はいはい。泳ぐ魚を見ながら入れるお風呂ですね!一々細かいなー。
温泉の有る洞窟の中には一部に森林が有り、何故か沢山の果樹も生えて る。果物は季節も関係無く、もぎ放題に食べ放題。頼めば宿泊するお部屋に、デザートにして持って来てくれる。お店も沢山の入っていて、買い物も楽しめるそうだ。恋人にお奨めスポットも多く、スタンプラリーも楽しめるんだって。
そして最後の目玉!
だっコアラーを見れたら大ラッキー!ラブラブコアラーの記念品をプレゼント!だって。だっコアラーってあの魔道具のモデルのコアラー?
温泉の奥に有る森林の一角で、時折コアラーらしき生物を見かけるそうだ。コアラーは魔物ではないの?
ルイス曰く、コアラーは魔物ではあるが大人しい性質。食事も特定の葉っぱしか食べない。また殆ど動かず木にしがみついている。
何とコアラーが魔物である事を、王太子様も誰も知らなかった。帝国領の地上には魔物が存在して居ない。その為気付かなかったのだろう。大人しい魔物で良かった。これが可愛らしいけど、狂暴な角ウサギだったりしたら大変だったよ。抱っこしようとしたなら、角で串刺しにされてたよね。
でもこれってもしかしなくても、多分ダンジョンなんじゃない?
だって何故地表に、居ない筈の魔物がいるの?でも他の魔物は居ないのよね?多分だけど地殻変動による海底の隆起や侵食で、1階層部分が地上に晒されてしまったって感じじゃ無いかしら?季節も関係無く食べられる果実も、ダンジョンならではよね。
だっコアラーは多分その際に、地上に残されてしまった。そしてそのまま生息してるのだろう。他の魔物は地下で生きているのかもしれない。でも滅多に会えないって事は、知らぬ所で地下のダンジョンに繋がって行き来してるのかしら?まだダンジョン自体が生きてる可能性も有りそう。繋がってるなら人々が、知らずに入り込まない様に気をつけないとね。
どうやらルイスも同じ事を考えて居たみたい。私とルイスは王太子様に伝え、少し調べて見る事にした。
*****
てな訳で私達は、急遽慌ただしく出発した。宿泊施設には、必要な品は全てセットされている。着替えだけで良いとの事。しかし服装に待ったがかかった。他のお客様と馴染む様に、新婚さんらしくして欲しいとのお願いだ。
先ずは着替えを3着づつ渡された。2着は鞄に仕舞いますと、侍女の方に仕舞われた。靴にバッグにアクセサリーまで各々揃っている。私はふんわりとしたワンピースに着替える。ウェストサイドには大きなリボン。髪の毛は軽くサイドに編み込む。ワンピースにはファスナーが無く、サイドのリボンで調整する。寝る際に痛くない様に配慮されてるとの事。赤ちゃんの服の背中にファスナーの無い原理ですね!でも私は大人ですが?え?髪型も同様?まあ楽チンだし良いや。最後に帽子とショールを貰う。
一方ルイスは、シャツにズボンにニットのベスト。何だか凄い爽やか青年風何ですけど。こう言うの着ると年相応に見えるよ。見慣れたローブ姿だと、正直キラキラ過ぎる。美人度が下がって青年度が急上昇?このルイス良いかも…。
仕上げに首にネクタイを締め、ウエストにベルトをはめた。上着はカジュアルなジャケット。ネクタイは我が国で言えば蝶ネクタイかタイだね。ベルトも普通はしないよね。冒険者なら、ウェストポーチが代わりかな?
おー。爽やか青年から、爽やか好青年にランクアップしたよ。これらが帝国領での、新婚さんスタイルらしい。
私の荷物とルイスの荷物を、用意されてた鞄に仕舞われる。何と下着や水着等、出先で必要な品も全て詰めて有るそう。さあ気にせずに楽しんで来て下さい!と、椿姫と菊姫まで参加し、大勢に見送られてしまった。
*****
到着しました!これは凄い。凄すぎます。到着した宿泊施設は白亜の洋館。目前には多きな湖。湖は素晴らしい透明度。沢山の小魚が泳ぎ回って居るのが見えます。奥の森の散策道を進むと、断崖絶壁から海がのぞめます。夕日の時間帯は特にお勧めとの事。ぐるりと回れるスタンプラリーでどうぞと勧められました。
先ずは白亜の洋館にチェックインです。お部屋に案内されました。
・・・・・。
これは仕方無いですね。新婚さんの旅行ですから。しかしデカい。スイートルームだそうです。最上階なので景色も絶景です。湖と森の奥に、キラキラと光る青い海の帯も見えます。
「アリー。この服は外に出る時は着用して無いとダメなのでしょうか?」
ベッドに腰掛けネクタイを弛めながら、ルイスがぼやいています。
「新婚さんのスタイルらしいからねぇ。取り敢えずネクタイは弛めたら?スタンプラリーしながら、外の様子を見てこようよ。」
ほらほら!と、電タクの中で渡されたスタンプ用紙を渡す。
「今から回ると夕日に丁度良いみたい。お昼用のランチボックスを、玄関脇でくれるらしいよ。行こうよ!」
・・・・・。
「そうですね。では行きましょうか。」
早く疲れさせるが吉の様ですね。
「ルイス遅い!先行くよ!」
*****
えーと。良し。1つめのスタンプゲッツ。これが1つめの恋人達のベンチね。
「ルイスー!このベンチに2人で座れば別れないんだって。座ろうよ!」
アリーは意味を理解して誘ってるのでしょうか?多分深くは考えて無いのでしょうね。いや、それとも本当に私と別れたくなくて?
周囲のベンチに座るカップルを眺める。この雰囲気の中で大声で…。やはり自分に都合良く考えてはダメです。
やはりベンチに腰を下ろすと、飲み物やらおやつを出す。周りの雰囲気も何のその。これは早々に次に行きましょう。皆様のお邪魔になりそうです。
「アリー。次のスタンプはボート乗り場の様ですよ。混んでしまう前にボートに乗りませんか?」
ガバリと立ち上がり歩き出すアリー。成人したとは言え、やはりまだまだお子さまですね。
「スタンプゲッツ!ルイスボートに乗ろ…う…。あ!やっぱり良いや!次は憩いの花畑だって。そこでランチボックス開けよう。行くよ!」
???
アリー?何故ボートに?
・・・・・!
これは!駄目です。にやついてしまいそうです。アリー。少しは気にしてくれる様になったのでしょうか?
花畑に到着しランチボックスを開く。お握りにサンドイッチ。卵焼きに唐揚げ、煮物におつけものまで色とりどりで美味しそう。
「このお握りは良いよね。テイクアイトで売ろうかな?冒険の時も腹もちよさそう。後このご飯を乾燥させたら、保存食として持ち運びが楽になりそう。お菓子にもなるらしいから、料理本とか有れば欲しいな。」
アリーはやはり料理に向いちゃうんですよね。それがアリーの良さなのは理解してるのですが、やはりこの様な素敵な景色の中でも意識して貰えないのはキツいですね。
「海底温泉へのフロアが、丸々商店街の様になってるそうですよ。スタンプカードの提出がてらに寄りましょう。この島で購入できる品は、殆ど有るそうです。このパンフの受け売りですが。」
へー。ルイスにパンフを貰い広げる。これは凄いな。買い物パラダイスだよ。調味料や食材まで有る。海鮮物の朝市も有るんだ!沢山買って帰ろう。何だかんだで、全くお買い物してないし!
「この朝市良いね。朝水揚げした新鮮魚介だって。」
「アリー。程々にして下さいよ。国への土産は既に王子が運搬してますが、アリー個人にもかなり戴いています。女将さんにもかなり貰いましたよね?インベントリは確かに便利です。しかし貴女は何時でも来れますよね?」
「わざわざ両替までしたのに使って無いんだよ?買い物位楽しんでも…。」
ブーブー文句をたれたら、食料品ばかりで無いなら良いと言われた。
でもお土産ってやはり、美味しいものが1番よね?いえ!想い出になる物です!とルイスに突っ込まれました。
うーん。確かにそうだけどね。
ぐるーりと湖の周りを、スタンプゲッツしながら歩く。
漸く海に到着だー。
*****
*****
またまた長くなりました。㊤㊥㊦となります。3日連続投稿予定です。
【転生したら禁忌の双子。後に悪魔。】軽い乗りのお話ですが、新連載を始めました。連休に集中アップ済み。本日は夕方更新。のち不定期更新となります。
お読み戴き、有難うございます。
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