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❪わたし5さい❫
▪乙女はクマさんと?
しおりを挟む実は私は研究所の人員から外れたの。それにあわせてお城から引っ越しもしたわけ。義理の家族は仕事に通わなくてはならなくなったけど、研究所には泊まり込みもできる。官舎に住んでいたお義兄さまとも一緒に住める。皆は喜んでいるみたい。
なんとお屋敷はお城回りの貴族街にあるの。中古だけど立派なお屋敷だよ。日中は人が居ないから、最低限だけど執事や侍女さんたちなんかもいるの。私も一応はお屋敷では伯爵令嬢をしているよ。でもドレスで晩餐って、何度経験してもなれないわ。
この状況変化の原因なんだけど、さすがに炎の神龍姫さまのお言葉に、王家もバツが悪くなったみたい。私を不当に扱わなかったかどうかと、査問会のような会議が行われたそうよ。
当たり前よね?産まれたばかりの赤子の私が、立候補して被験体なんてするはずがない。と言うか……話せないのに合意なんて出きるわけ無いじゃない。このあたりはね。義理の両親が泥を被ったの。だからこその褒美の上乗せ大盤振る舞い。このお屋敷って王妃のポケットマネーなの。使用人に侍女は、王宮からの派遣よ。つまり伯爵家に金銭的負担はなし!まあ迷惑料ってやつね。すべて王妃のシナリオよ。
だって伯爵なんて貴族位をくれたけど、お給料は多少上昇したのみ。義父は相変わらず研究所に泊まり込み。私は研究所に泊まるか、後宮の一室に閉じ込められたまま。義母は研究所の助手扱いになっていて、私の部屋の隣を与えられていた。やはりこの部屋か研究所に泊まり込み。義母がお城にあがる前に住んでいた家は、ギリギリ貧民街に入らない場所にあるあばら屋よ。それでも義父が購入したんだというから凄いわ。義父は親族郎党が貴族位をはく奪。もちろん原因となった義父は、無一文で追い出された。あちこち転々とし彷徨いながら、なんとか城下町のポーションの製造所に落ち着いた。己を反省し、無我夢中で頑張って働いた。そんな中で時おり思い出すのが、あれほど夢中になったビッチではなかった。素朴だけど己の側で、己を嗜めてくれたもと婚約者だった。
彼女も己のせいで家族と絶縁されたとか……
彼女の言葉に己が嫌な顔をすると、彼女は静かに下を向き哀しげに俯いていた。どうしてもあの哀しげな顔が忘れられない!でも今の自分では顔を会わせることもできない!と、さらにがむしゃらに働きお金をため、ボロ屋ながらも家を持った。このころにはポーション作りの腕と研究者としての素質が認められ、王室へもではいりしていた。これで王妃さまに引き抜かれちゃうから良し悪しだけど、頑張った結果だから仕方無いよね。
己側の体勢を整え、義父は義母を迎えに行った。義母は商家でお手伝いとして働いていた。水仕事で荒れ果てた掌を見たときは、己の罪深さに、張り飛ばされるのを覚悟したそうよ。それでも義母は義父を赦した。愛していたから。口煩くなってしまったのは、間違いを犯してしまう、優しすぎる性格が心配だったから。
立ち直ってくれることは信じていた。しかし迎えに来てくれるとは思いもしなかったらしい。二人は直ぐに婚姻し、すぐにお義兄さまを授かった。その後は幸せだった。二人目が中々出来ず、ようやく授かった子供。
その子がまさか神龍姫候補の巫女とされてしまうとは……
そしてたまたま産まれ落ちた、私の乳母の募集に応募しなければ……
王妃さまの手には落ちずに、穏やかな幸福をえられたのだろう。でももうなにもかも遅いの。私が巻き込んだわけではないけれど、この家族には不幸になって欲しくない。
二人が王妃に逆らえないのなら、私が居なくなるまでは、二人を守りたいと思ってるよ。
査問会での両親は私が死んでしまうよりはと、一縷の望みにかけたと皆の前で訴えた。研究者としてなんとかしてあげたかった。絶対に死なせたくはない。そう感じて被験体にしたと証言したの。この言葉に対し周囲からはかなりのバッシングがあったらしい。研究への興味で娘を人体実験に使用したのかとか、人でなしのだのと罵られた。私は巫女さまとして大神殿にいる、お義姉さまと双子ということになっている。これは書類上でも義理ではなく、本当の血縁者とされているそうだ。私もこれにはビックリしたよ。王妃さまってそこまで手を回していたんだね。
『双子の姉を神龍姫候補として、産まれて早々に巫女として召し上げられ、己の乳を飲ますことも会うこともままならない。そんな時残された双子の妹が死にかかっている。母ならば生かしたいと思うであろう。それが例え我が子に苦痛を与えようとも、研究者ならばなおさらなのではないのか? 我は同じ母として理解できるわ! お前たちは腹を痛めて子を産まぬから解らぬのだ! 』
王妃さまがこう宣ったそうよ。
でも私は知っている。義父母は苦しんでた。たとえ私が本当に我が子だったとしたら、被験体になんて出来たの? 他人で死なない私でさえ苦しんでた。王妃さまは本当に出来るの? どうなの?第五姫さまを被験体として差し出せたの?出来なかったから、義父母に命令したのよね?ちょうど死なないお荷物が出来てしまったから。義父母は私をお金ちゃんだと話しながら、心では葛藤していた。二人は悪人にはなりきれなかった。
これらのこともすべては王妃さまのシナリオよね。義父母は王妃さまに逆らえない。そして王妃はさらに宣った。
『マリアレーヌの功績に対し、個人に男爵位を与える。さらに研究所からは籍を抜き、錬金術を極めるための工房を与えよう。欲しいものがあればなんでも望むがよい。我が個人的に与えよう。私は錬金術師としての、マリアレーヌのさらなる活躍を望む』
ですって。
ふざけんじゃないよ!私は単独で貴族位なんていりません!正直伯爵令嬢の肩書きだっていらないよ。いざとなればすべてを暴露して、大神殿に成人の義まで隠れてるわ!
王妃さまは私の首に鎖を付けたいみたいだけど、リミットはあと十年なの。鎖なんて意味ないよね?殺せないのも理解してるんでしょ?
だからもう悪あがきはやめて。貴女を裁けるのは、神龍さまと女神さまだけだから、沙汰は成人の義までお待ちください。
頭きたからお断りしたら、伯爵家としての威厳もあるので、せめてお屋敷くらいは貰ってくれと来たわ。さすがに研究所をぬけて、後宮のお部屋か研究所暮らしはおかしいわよね?そんな感じで伯爵家としてのお屋敷を貰い、家族でお引っ越しをしたのです。
なーんて考えごとをしている間に、馬車はギルドのある城下町に突入していた。いつもより少し遅かったようで、朝市はすでにかなりにぎわっている。うーん……今からでは掘出しものは無理そう。ギルド側の朝市では、冒険者さんたちが思わぬ品を売っていたりするの。ギルドでは鑑定できないような貴重品とかよ。なにか解らないから、貴重なお品でも買い取って貰えない。特にこの国は錬金術の後進国だから、思わぬ掘出しものがあるわけよ。
今日はもうお買い物は良いや。厨房でお土産のオヤツはたっぷり用意して貰ったしね。
馬車が市場奥に止まる。ここで馬車を預けてギルドで転位門を使い、王弟さまの領地に飛ぶ。転位門というのは、魔力を注入することで、行きたいところに開ける門のこと。行き先は魔力を込める人間の意思次第。しかし魔力が少ないと行き先を詳細に指定はできない。数ヶ所経由して行く必要がある。
もちろん私は大丈夫だよ!
帰還には魔道具のブレスレットを使う。出発前にはめて貰い、帰還の際に魔力を込めると、門のある場所に帰還できる。このブレスはどこの転位門で返却してもオーケー。
「着いたぞ。朝市はもう行かないよな? 」
「うん。山の麓に飛んじゃおう。クマさん楽しみー。みんな上手くいってるかな? 」
「……どちらのクマさんが楽しみなんだ? まったくこのじゃじゃ馬が! 」
……どちらでも良いじゃない!
さあ!まずは渓谷でクマさんとデートよ。
お魚くわえたクマさんと……
地域の特産品ゲットのため!
溪谷の乙女はバトルするのだ!
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