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❪わたし3さい❫
▪血が繋がってるの!
しおりを挟むでもね?油断大敵なの。時おり猫なで声でくるんだよね。まあこちらは痛くは無いけどウザいわけ。可愛そうな幼子の私を慈しんでいると、周囲にアピールしたいなけ。まあ現実世界でもこの手の輩はたくさんいたからね。でも私は可愛そうではありませんよ?王女さまをお助けした救世主!王家の覚えもめでたく、イケメン美女に囲まれております。皆さん?可愛そうではなく羨ましいんでしょ?だからイビるんだよね?または取り込もうとするんだよね?でもこんなチビでは、たいした鞘当てにもならないと思うんだけど?
でも今回の天敵の姫十歳のガキだからまだマシ。私は優しいお嬢様。この自己顕示力が周囲に認められれば私はもう要らない。飽きたアクセサリーはポイ捨てされる。これが女狐になると凄いんだから。私なんて十歳にて婚約者のにゃんにゃん現場に、アイツの恋人に呼び出されました。
『私たちは愛し合ってるの! この人を解放してあげて! おしつけの気持ちは育たないわ。ぜったいに不幸になるの。結婚には真実の愛が大切なのよ! 』
しらける私に大声でどなるスッポンポンな女性と、なんで私がここに?と口をポカンと開く婚約者。
『あのー。私はまだ十歳です。婚約者なんて欲しくもないんです。ソイツがどう言っているかは解りませんが、婚約破棄喜んで!婚約解消ならなお助かります。因みにこの婚約は本家の宗主からの契約です。私は未成年のため、実親の契約に拒否できません。ですから是非ともそちらから! 大歓迎です! 』
私はポラノイドカメラでその場の二人の写真を撮り、マイサインを書き添え、証拠にどうぞとばかりに、ベッドサイドのテーブルにおき逃げ帰りました。もちろん私用の証拠はデータに取り置きしています。その他にも自転車や車が突っ込んできたり、マンションの駐車場にゴミを撒かれたり……
本当に死んだらどうするのよ!マジで殺すきだったのかしら?
私と妹は両親の仕事の関係で、本家の系列のコンシェルジュつきのマンションに住んでるの。だから外から知らぬものはいっさい近寄れない。郵便物もコンシェルジュが、直接受け取り管理してくれる。唯一の外界との接触部分が駐車場な訳。私たちは子供だから駐車場は使わない。でも両親と外出するときは、運転手つきで迎えにくる。また来て欲しくもないけど、婚約者だからアイツも駐車場とエントランスまでの、侵入権利は両親に貰っている。部屋はダメなんだぞ!
事件の日はたぶん私の帰宅にあわせて着いてきて、妹の帰宅まで隠れていたのだろう。
その駐車場に、ゴミをまいたり、ひどい時は動物の死体とか……まあ今はどこにでも防犯カメラはあるのよ。すぐに捕まったけどね。
私は不思議に思うの。なぜみんな浮気をした相手を怒らないの?私は婚約者が嫌いだよ。正直憎い。物凄く怒っているんだよ。現在の私の住んでいる世界では、自由な恋愛による結婚がほとんど。私だって四月から通う学園で、甘い恋愛小説のような恋をしてみたかった。でもね?仕方ないじゃない。私はたまたま、そういうお家に誕生してしまった。なら己で未来を少しでも良くしよう。未来の旦那さまを愛せなくても、尊敬し寄り添って支えてあげたい。なんて幼いながらも勉学に励んだの。でもすべてパーね。
私は婚約者の存在を抹殺したいほど憎んでいます。でも浮気相手の女性を憎んだりなんてはしていません。だって好きなんでしょ?愛してるんでしょ?なら未成年の婚約者なんて居るのをしったら、精神的に大人になりなさい!
己れが騙されているのか……
己を本当に愛してくれているのか……
私はどちらでも可能なら身を引きます。下手な裏工作なんていりません。怒るなら私ではないよ?アイツを怒ろうよ。それで互いに真意を知れば、私への対応も変わる筈だと思うんだけど……
*****
「なんだよ。伯爵令嬢さまがしけた面して、受勲の連中と一緒に祝われてないのか? 」
私の背後から頭の毛をワシワシするのは止めて!せっかく綺麗に結い上げてくれたの!
「……転んだら……イヤ……」
「でも両親も来てるのに! フレイヤはどうしたんだ?……また下品な取り巻き引っ付けてるのか! まったくマリアレーヌのお陰で元気になったんだ! 少しは面倒みてやれ! 」
この人は第三王子さま。正妃の子は一番長子が二十歳で、少し前に王太子に任命された。その上に姉姫が二人。その後男女交互に毎年一人をご出産。王子が三人に姫が三人。合計で六人。ご苦労様です。
まあ王さまたちもまだまだ若い。この世界の女性の結婚適齢期は、なんと十五歳だ!とくに貴族の令嬢は十代前半にほぼ婚約者が決定している。ただし今回は神龍姫のゴタゴタがあり、現在十歳未満の子女の婚約を特別措置にて停止中。もしもの場合があるため、成人の儀まで待機することになっている。しかし私みたいに聖なる魔力がゼロの子を省いているのは駄目だね。神龍姫さまの聖なる魔力は、根こそぎ奪われたんだよ?番の絆を絶たれた肉体なの!ゼロの場合もあり得るってことを忘れてる。まあ良いけど。その後は結婚ラッシュにベビーラッシュがきそうだね。
もちろん大切な婚約は、内密に結ばれたりはしているんだよ。
「マリアレーヌ? 一人なのか? いやすみません。これは第三王子がいらっしゃるとは……」
「おにぃたま……けほっ……」
「大丈夫だ座っていろ。親父たちもこんなに小さい子を置き去りに! 今の地位も財もすべてはマリアのおかげだろうが! まあその分私が溺愛してやる! いくらでも甘えるが良い! 」
私を抱きしめ高い高いをするのは、高等学園の寮に入っていたお義兄ちゃん。つまり義父母の本当の息子ね。学園では優秀で、第二王子の側近予定。高等科へ進むことを示唆されていたが資金繰りが難しかった。それが私のお陰で叶ったことを卒園して聞かされ、私を大層気遣ってくれている。しかも側近候補に上がるだけあり、王子たちに並んでも劣らずの、頭脳だけではなく顔もかなりのイケメンだ。でもちょっと恥ずかしいよ……
「ほら! マリアの大好きな苺のババロアだ。まんまるスイーツに、スムージーもあるぞ。ゆっくり食べろよ。ほら口の端っこにクリームが付いてるぞ。ん? これは結構旨いな。ほら熟れたメロンもアーンだ」
お義兄ちゃんが、スプーンで丸くくり貫いたメロンに生クリームを乗せてお口にいれてくれる。
「おいちぃー。おいしいねぇ……」
頬っぺたを両手で押さえながら微笑む自分。きっと楽しそうに笑えているだろう。王子さまとお義兄さまの背後の方から、なんだか訝しげな視線をかんじるけど……
するとその訝しげな気配が近づいて来た。
「こら! マリアレーヌは未来の私の妃です。あまりベタベタしないように! 」
「第二王子! 義妹は駄目です! 年回りを考えて下さい! まさかロリコンですか? 主がそんな性癖もちとは!しかも私が貴方の義理の兄になるなんて! こんなに可愛くもない義弟なんていりません! お菓子に釣られてはダメ。私は絶対に嫌ですからね。ねぇ?マリアもこんなオジさんは嫌ですよねぇ? まったく……なっなげかわしい……」
「そんな……たしかに……しかしあと十年も育てば!って違いますよ! なぜか解りませんが……マリアと私は、とても運命的なものを感じるのです。私たちはとても近しいような……」
「「「それを言ったら私だって……」」」
「「私たちもよ!!」」
いつの間にか、私の回りには四人の王子さまにすでに結婚されている、第一と第二の二人のお姫さまたち。いやぁ。王族大集合よー!さすがに美形揃いだわー。わーい。じゃないよ!顔面偏差値が急上昇中。周囲の視線がビシバシこちらに!なんとか逃げ出さなきゃ。
変な冗談は止めて下さいませ。実は私と貴殿方の肉体は……半分ですが血が繋がっているのです。たぶんその親近感なのでは?
と……さすがにこれは内緒です。なにかほかのことで誤魔化せませんよね?うーん。もういいや!これはやはり天下の宝刀を抜いてしまいまょう。そうです。ここは泣く!これが一番です!
「えーん! ぐす……グズス……怒りゃぁ……ないで……こぁいよ……えーん!! 」
静まり返る周囲。どや?今だけ有効な必殺技やで?
本当ならば王さまか最相さまに願い出て、保護を申し出るのが一番なんだけど……女神さまからは味方だと信じられたなら、話しても良いと言われているの。でもさすがに王さまには近寄れなくて、人となりが解らない。最相さまも悪い人ではないけれど、王さまのためならって感じ。つまりね。
正妃さまが王さまに罪を告白する。それを王さまが庇い、王さまを最相さまが庇う。国のためには有り得ないと思いたい。でも有り得ないともいいきれない。王さまが正妃さまを愛していて、二人が正妃さまを信用しているのなら……。
正妃さまは、己の欲望と嫉妬で既に罪を犯している。神龍姫さまの母を毒殺した。さらには私に聖なる魔力がまったく無いと、神龍姫さまの肉体である可能性から外した。
これは有り得ない。毒殺したのが正妃ならば、聖なる魔力を根こそぎうばったのも正妃の筈。つまり私の肉体が、神龍姫さまの肉体の可能性があるのだと知っている筈なの。それとも聖なる魔力をうばったのは別口で、正妃は聖なる魔力がないから違うと思っている?私はたんなる不死の変人だと?
そんな訳がないじゃない!どんなに己に都合良く頭を働かせたって、私が不死の身体を持つことだけでも可笑しいでしょう。これこそ上に伝えなくてはならない、最重要な事実なのではなくて?そう、まちがいなく……ただにっちもさっちも行かなくなっただけでは無いの?
国中で真剣に真面目に、全力で探している結果がこれなの。先入観は怖いわ。
正妃さまの心情もかなりのものが有るみたい。王さまとの心のすれ違いって奴。正妃さまはもとは王弟の婚約者で、お姉さまが本来は王妃になる筈だった。この辺りのゴタゴタが、かなりのシコリになっているらしいの。でもお互いに好きでなくては、こんなにたくさん子を作れるのかしら?嫌いならスキンシップもしたくないわよ?
……でもこの身体の母には……お義理で初夜だけ……王さま!死ね! 政略結婚だったんだろうけど、他になんとか出来なかったの?亡国ってまさか己が滅ぼしたのか?まったく許せん……
そんな訳で、私はまだ誰も信用していないのです。
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