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〈神様たちの井戸端会議❷〉

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 ★天上界のとあるお部屋★

 ホッとひと息。スコーンにクッキーを食べちらかし、まだ物足りないとジャムの瓶を抱え込む双子神たち。そこへ……

 *****

 【転生神★】〈おい!お前らなんなの?なんで俺の準備した魔王候補。横取りしちゃってんの?〉

【双子神①】〈 あんな怖いの横取りなんてしたくなかったよ!勝手に横入りして来たんだよ!〉

【双子神②】〈ああ例のストーカーね。確かにあれが魔王になれば最強だったかもね。でも四天王に転生しちゃたんだよ。もう仕方無いじゃん〉

 ★〈仕方無くないだろ!死ぬのまだまだ先だっただろ?なんで死んだんだよ!〉

 ① 〈…………〉

 ② 〈…………〉

 ★〈おい!お前らその沈黙はなんなんだ?しかも先に死んだ神子姫予定も違う所に落としただろ?しかも勇者候補までいなくなった。転生の神は俺だぞ?なに勝手なことしてるんだ?〉

 ①〈ごめん〉

 ②〈すみません〉

 ★〈謝るな!謝られてもどうにも成らんだろ!理由を言え!〉

 ①〈訳を言ったら怒らない?〉

 ② 〈理由を言ったら許してくれる?〉

 ★〈同時に話すな!もう怒ってるし、許さないも無いだろ!転生のやり直しは出来ないんだよ!いいから話しやがれ!〉

 ①②〈〈僕らの喧嘩のトバっちりなんだ〉〉

 ★〈は?もしかしてまた天変地異とか起こしたのか?〉

 ①〈ううん。今回はそこまで行かなかったんだけど、病院に雷落としちゃったの。そこに運悪く皆いたわけ〉

 ★〈お前らまたかよ……皆って誰と誰だ〉

 ②〈魔王候補と勇者候補と神子姫候補の両親にお腹の子供。それから神子姫候補の友だち〉

 ★〈なんでそんなに纏まってるんだよ〉

 ①〈神子姫候補が前日に死んだから、病室で皆でお別れしてたんだ〉

 ★〈んで?結局皆死んだの?〉

 ②〈死なない。死んだのは神子姫候補の友だちと両親のお腹の子供だよ。僕らがこっそり二人の魂だけを引き寄せて輪廻の輪に入れようとしたら、なぜか魔王候補と勇者候補の魂もくっついて来ちゃったんだ〉

 ★〈アホか!その二人も死に損なってたんだろ?だから一緒に引寄せられたんだ。で?まあ何となく解ったわ。先に死んだ二人の代わりに自分達が死ぬってか?それを了承したのか?〉

①〈そう。転生したばかりの魂を輪廻の輪に戻すよりは、成長した魂を転生させた方が楽だからね。神子姫候補の両親のお腹の子供の魂は、まだ離れたばかりだったから直ぐに元に戻せた。でも神子姫候補の友だちの体は病気でボロボロだった。魂を戻しても直ぐに死んでしまう。そしたら勇者候補が、自分の願いを一つ使ってくれって。新しい体で生まれ変われないかと問われたんだ。神子候補の両親の子に出来ないかって言うんだよ。この子は病弱だからと両親に見捨てられいて、神子候補の両親を慕ってたらしい。元気になったら、姉弟になるんだって、二人で言ってたって!つい……つい貰い泣きしちゃって僕……〉

 ★〈双子にした訳か?〉

 ②〈そう。もちろん健康な体付きでね。これで両親も、先々神子姫候補と友だちを一気に無くした悲しみからも救われるからって!勇者候補が泣きながらお願いして来たんだよ!しかももう一つの願いは神子候補の近くで見守りたいから、側に転生させてくれって。自分の記憶がなくても、自分を覚えて無くても側にいたいって!さすが勇者候補だけ有るよね。優しすぎて僕感激しちゃったよ。〉

 馬鹿が!のせられただけだろうか!奴は優しいだけじゃない。中々の策士なんだよ!だからこその勇者候補だったんだ。勇者が優しいだけでやってけるか?所謂腹黒って奴なんだよ!

★ 〈んで?魔王候補はどうしたんだ?〉

 ①〈自分の魂を代わりにと、最初に言ってたのは勇者候補だけだったんだ。神子姫候補の両親のお腹の子供はまだ転生前だし、勇者候補の魂は位が高い。願いも一つ使用したから、二対一でも充分だ。だから処理して終わらせようとしたら、魔王候補が俺も代わりに転生させろと割り込んで来た。必要ないと断ったんだけど、魂に貴賤はない!二対二が当たり前だ!って言うこと聞かないんだよ〉

 ★〈それで言うことを聞いた訳か?〉

 ②〈そう。だって凄いんだよ!神をも殺す勢いなんだよ!僕なんて首絞められて暫く痕が取れなかったよ。神に人間が傷付けるなんて、本当に凄い精神力だね。その凄さが皆神子姫候補に向かってるみたいで正直怖いよ?あれはもう執着だよね。ストーカーだよ〉

 ★〈だからこそ魔王候補だったんだよ!まあ済んじまった事は仕方ない。取り敢えず、後始末はキチンとしたんだな?大丈夫なんだな?〉

 ①〈大丈夫だよ〉
 
 ②〈うん間違いなくしたよ〉

 ★〈そう言えば、神子姫候補はなぜ滅ぶ予定の国の王妃に何て転生させてさせたんだ?俺は滅ばぬ様に神子姫として落とせと言ったよな?〉

 ①〈…………〉

 ②〈…………〉

 ★〈おい!またその沈黙か!さっさと吐け!〉

 ①〈神子姫候補が死ぬ前に読んでた本が、たまたま落ちる国をモデルにした本だったんだ。本では国は滅ばないんだけど、出てくる神子姫は偽物でビッチなんだ。そんなの読んでたから、神子姫のイメージが悪いみたいだったんだ。だからどうせ同じ国を救うなら、可能性にかけてみたんだよ。王妃にならずに四天王になる可能性にね〉

 ★〈…………まあお前らにしては上出来だな。上手い具合に進んでるみたいだしな。もしかして魔王候補に未来視を見せたのも策略か?〉

 ②〈そうだよ?僕らも首絞められてばかりじゃやだからね。一応、意趣返しだよ。神子姫候補が王妃になれば、王は飾りだ。王妃は公爵家の血筋。母親は現王の妹だ。王太子が一人息子の為、王位継承権も有る。現王の弟の叔父に続いて三番目だ。あの未来視は数有る未来の一つに過ぎない。王妃が王になっても構わない訳だ。それがモデルになってるのがアプリ版のゲームだ。勇者候補は全てのエンディングを知ってるそうだよ。でも魔王候補はさわりしか知らない。だから意地悪したんだ。アプリ版にはない最悪のシナリオを見せて、奮起させようってね〉

 ★〈ほう。魔王候補の恋のキューピッド役か?〉

 ①〈まさか!そんなつもりはないよ。でも神子姫候補が王になろうとなるまいと、相手は魔王候補が一番良いと思う。と言うか、二人がくっつかないとあの世界に魔王が産まれちゃうよ?滅び行く国を立て直す所じゃないよ!僕が奮起させなくても頑張っただろうけど、普通に進めば蒼白の魔術師が一番有利だ。本人は親愛だって言ってるけどね。それに子供をバンバン増やして貰うには、このカップルが一番だ!朝までヤれちゃう同士!完璧じゃないか!〉

 ★〈はあ。まあそうだな。確かにそれで少子化問題も多少は解決するか。しかし始祖竜うんねんは構わないが、同性でも可能とか、兄にも紋を付けるとか……あれらも必要か?〉

②〈 あ!そのアイデアは魔王候補が提案してきたんです!何せ魔王候補は医者ですからね。いろはちゃんの担当医ですよ。イロイロ妄想してたらしいですよ。彼の世界には魔力はないのに、良くあんなアイデアが浮かびましたね。なんでもファンタジーでの定番らしいです。子だくさんチートで逆ハーレムの、監禁溺愛ルートだとか。同性うんねんは邪魔者を撹乱するためだとか……今回は兄に頑張って貰えと……紅葉をいじめていたのが、許せないみたいです〉

 エロ妄想半端ねえな。

 ★〈まあ今回の件は多目にみよう。しかし喧嘩は程々にしろよ?まあ転生は時間が勝負だから仕方無ないが、事後報告になっても構わないからキチンと報告はしろ!候補がいなくなれば、新しい候補を探さねばならん。解ったな!〉

 ①〈はい!解りました!〉

 ②〈はい!キチンと報告致します!〉

 ★〈返事だけは毎回良いんだよな。はあ疲れたわ。ほらお茶の続きだ。新しいのを頼む。コイツらにはケーキでも追加してやってくれ。同じケーキにしてくれ。また喧嘩されては困るからな〉

 ①〈ゴチになりま~す。ケーキ位で喧嘩しませんよ!〉

 ②〈戴きま~す。僕ら仲良しだもんね?〉

 ★〈先日、飴玉の数が多いの少ないので喧嘩したばかりだろ!喧嘩するほど仲が良いでは神は困るんだ!甘いもので糖分を取り、煮干しでカルシウムを取れ!人間の様にな!〉

 ①〈…………〉

 ②〈…………〉

 ★〈解ったなら黙って食え。もう余計な事は言うなよ〉

 ①②〈〈モグモグ……あ……お代わりはダメ? ……ですよね……〉〉

 ★〈はぁ……仕方ないな……魔王は出現しないと困るんだよ。エンシェントドラゴンにでもやらせるか……ヤツも変身能力を身に付けてから、ヤりたい放題だからな。番には酷だが、あのままでは彼女も狂うだけだ。竜の国へ転生させよう。だがさすがに勇者候補は人間でないとな。適当に見繕うか……〉

 井戸端会議と言うより、叱られ会議?双子神の目論見は上手く行くのか?神のみぞ知る?

 いやこの神たちは知らない……

 そしてクレハの未来は……

 やはり解らない……

 …………

 …………

 …………

 …………


 「オーノー! 危ないな! 僕を半分にするつもり! ヒョイッと。ふぅ……トルネードの威力デカすぎ! ほら見て! 雲の合間を抜けて、かっ飛んでいったよ! あっ……知ーらないっと!」

 〈〈〈キキキー!キャー! ドガン!〉〉〉

「「ヤバい……またやっちゃったかも……」」

 「大丈夫! 運転手は一人だ! 間違いなく生きてる! 被害者は……え……猫? 死んでるの?」

 「あ! 動いた! 生きてるじゃん! 良かった」

 …………

 …………

「 「あの……あなた様はどちら様で? なぜ勝手にここへ?」」

 「さあね? なんでだろ? でも僕は君たちを知ってる。だから最高責任者を呼んでくれる? そちらと直接交渉するからね? ニコリ。」

 不思議そうに顔を見合わせる双子神。

 そのころの地上では、猫を庇った少年を見たと大騒ぎ。しかしその少年は見付からなかった。

 *****
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