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丸刈り丸剃りの刑に処す。

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う、むむむむむ…。 

真剣な顔をして、コロッケ種を見つめるワンコ。幾らながめても変わらんぞ?さっさと手を動かせ。母さんが具材を混ぜこんだコロッケ種を、俺が計量しまとめてゆく。ワンコが其を丸めて型にはめて抜く。

宿の夕食は日替わりで2種類。俺の狩り獲物や、入荷する旬の食物により献立がかわる。因みに今夜のメインは、ビーフ擬きコロッケかロールキャベツだ。面倒臭いから、以降はビーフコロッケでいくよ。

ビーフコロッケは小判型で2個。千切りキャベツに、コーンサラダの焼きトマトのせ添え。コロッケには、グレーピーソース。

ロールキャベツは2個。人参にブロッコリーに厚切りベーコン。これらがコンソメ味で、湯剥きした丸ごとトマトとじゃが芋が共に煮込まれてる。

どちらも俺が狩りして来た肉を使用。今日の肉やは、ベーコンが安かったらしい。コーンサラダにも入っているし、明日の朝食にも出張る様だ。野菜はトマトとトウモロコシだな。熟れすぎてしまったからと、トマトが激安だったらしい。母さんは全て現金で買い付けてきた。トマトはソースやら何やらと、優れものだからな。湯剥きトマトの煮込みは旨いぞ。来週には、トマト味のロールキャベツが出るだろう。その前に喫茶でミートソーススパゲッティーか?ドリアも良いな。挽き肉にトマトがお役立ちだ。

因みにトマトは焼いても旨い。輪切り焼きトマトに、コーンサラダやポテトサラダを乗っけてチーズ。ツナも良いな。温サラダでうーまーいーぞー。

少し残念なのが、この国は海に遠い。その為魚介類がお高い。魔物の脅威が少なくなっても、やはり海は危険だ。その為、魚は川魚頼りだ。隣国のダンジョンには、海のフィールドが有るらしい。ドロップ品は勿論海産物。是非ともお邪魔して見たいものだ。

「あっワンちゃん!その潰したじゃが芋は、明日のポテトサラダ用なの。朝野菜と和えるから、冷蔵庫から出さないで。コロッケのはこれね。」

しかし母さんの頭は凄い。同じ材料から、次々と違う料理を考えてゆく。食材に無駄が出ぬ様に、また手間を省く為に。しかし飽きられぬ様にも考えられてる。

「何年主婦したと思ってるの!特に祐太郎は食べ盛りだったからね。突然居なくなって、食費激減にガックリきたわよ。」

「浮いた分でカルチャースクールにでも行けば良かったのに。近所でもパート先でも、母さんは何処でもモテモテだったじゃないか!俺が居なけりゃ…。何で再婚しなかったんだよ…。」

ゴイン!グリグリ。

痛てー!梅干し追加するな!

「お馬鹿もの!そんなのは運なの。探してまでする事じゃないわ。父さんとの時も、私が居なくちゃこの人死んじゃうかも。で決心したしね。結婚なんて、その場のノリよ。愛が無くちゃ駄目だけどね。」

母さん…。

父さん生きてて良かったよ。ある意味宰相のおかげか?嫌違う。ソニアさんのおかげだな。

しかしそんな勇者嫌だな。父さんてば、良く魔王倒せたな。サポートが良かったのか?

多分そうだな。だから弟妹が年下なんだろう。

「だから母さんも正直ビックリよ。あの人が良く勇者出来たなって。完全な人選ミスじゃないの?蟻も踏めない人だったのよ?ゴキブリ何て見たら、悲鳴上げ涙ぐみながら逃げちゃうの。母さんが新聞丸めて叩くんだから。」

・・・・・。

それは男としてどうなんだろうか?まあそれでも勇者したんだ。俺だって苦労した。お互い頑張ったんだよな。

「パン粉付けたのここに仕舞うよ。多い分は冷凍庫だよね。母さん。コロッケサンドも良いけど、ハンバーガーも宜しくね!」

「週末の献立にハンバーグ有るから、多目に作って翌日の喫茶にハンバーガーを出そう。トマトソースとレタスたっぷり。ポテトフライ添えで良いかしら?」

「次いでにコーンサラダ付けたら?トウモロコシ沢山仕入れたみたいじゃん。」

「そうなのよー。実入りが良くて甘くて美味しいの。日本のトウモロコシって甘いけど、昔より粒が小さくなったわ。指で取れないんだもの。こちらのは指でぽろぽろ解せるの。でもサラダよりスープが良いわね。コンポタと中華風と2種用意して、選んで貰いましょう。」

コンポタ良いね!玉子とコーンの、とろりスープも楽しみ!

「なら、メンチカツにハンバーグドリアも良いな。そうだあれ!唐揚げで酢豚モドキも宜しく。パイン入りね。これミートボールで作っても旨そう。後茹で玉子を挽き肉で包んだ爆弾みたいの!名前なんだっけ?もう!有れもこれも1度では食べきれないよ!」

「祐太郎…。余程飢えてたのね。最後のはスコッチエッグね。何なら明日の朝食に、挽き肉の代わりにじゃが芋で作りましょうか。これなら直ぐに揚がるし楽チンよ。」

わーい。

母さんが仕込みを終え、俺達も片付けを終えた。メインは揚げたり焼くだけ。主食やスープやサイドデッシュは、盛りながら提供する。ショーケースには、色とりどりのたくさんの小鉢がならんでる。それらの追加も可能。デザートも有るから、夜でも軽食も可能だ。学食や社員食堂みたいな感じだよ。勿論定食以外も有るから、宿泊以外のお客さまも多い。観光気分で遊びにくる親子連れも多いので、お子様ランチを始めたら大人気だ。それだけをねだられ食べに来る、お客様も居る位だからね。

母さんや俺が居なくちゃ回せない様な状態にはしたくなかった。だから働く人達が決まってから、試行錯誤したんだ。皆で気持ち良く仕事がしたいからね。

あっ!忘れてた!

「母さん!湖で魚沢山取ってきた。後で母さんのインベントリに入れて。あれ全部捌くの大変だよ。魚はフライかムニエルサイズだね。小海老みたいのもかなり入ってた。」

小海老は乾燥させたいわね。等とブツブツ。母さんは了解!と言いながら、既に献立を組み立てている様だ。

*****

母さんが揚げたてのコロッケその他を包んでいる。あ!ポテトのスコッチエッグも作ったの?手早いね。温かい物には保温の魔法。冷たい物には冷蔵の魔法をかける。餡蜜も入れたんだね。バニラアイスは冷凍の魔法だよ。

包みは見学していたソニアさんに、母さんがお土産だともたせた。夕食に仲良く2人で食べて欲しい。勿論、腹黒宰相の分は無しだ。アイツは殆んど自宅で食事をしないとの事。だから構わないだろう。

「今日は本当にご迷惑をお掛けしました。なのにこんなに良くして貰い、ほんとに申し訳ございません。勇者様にも、突然現れ無礼を働きました。しかも名乗らずご免なさいね。」

「誰だって感情が高ぶればそうなるよ。だからもう謝らないで。ソニアさんも悩んだんだんでしょ?もう自分を責めないで。許してあげて。俺はソニアさんを恨んでなんてない。それにソニアさんも俺の義母さんだよ。流石に母さんとは呼べないけど、ソニアさんと呼ばせて下さい。俺は祐太郎です。ユウでも祐太郎でもどちらでも良いよ。勇者様は流石に照れるから止めて欲しいな。」

・・・・・。

・・・・・。

「祐太郎!貴方ってば成長したのね!良い男に育って…。」

恥ずかしいな。泣くなよ母さん。それよりギュウギュウと絞まってるよ!くっ。苦しい!しっ死ぬ。神様まさかこれもチートですか?物理でも母さんに負けたら、流石の俺もへこむぞ。

「祐太郎さん…。有り難うございます。」

「くそ生意気な弟妹にも宜しく。脳筋剣士に、君はもうお子様ランチは食べられませんとお伝え下さい。アイツはみたら、絶対に食べたいとねだりそうだ。」

日本でならギリギリセーフか?しかしあの図体では許せん。なら母さんが大人のお子様ランチを作ってあげるだ?大人のお子様ランチって何だよ?お子様ランチの特大盛り?甘やかさなくて結構です!余計な事はしない!

「お子様ランチ食べたい。」

ほら!ワンコが調子に乗りやがって!

あ!そうだ!ソニアさんに聞いてみよう。

「ソニアさん。コイツ知ってる?名乗らず昨日から居ついてる。俺の居場所話したのコイツだよね?」

ソニアさんは、ジッとワンコを見る。ワンコは顔を背けた。やはり怪しい。

「すみません。解りません。でも…。」

やはり解らないかー。

ん?でも?

「何か気になるの?何でも良いから教えて欲しい。」

「はい。何となく面影が…。2年程先代勇者様の指導係をし、魔王討伐パーティーに同行された戦士様にです。まさかお子様でしょうか?確か王兄様は無事にお帰りにはなりましたが、傷を負い地方で療養中の筈。その為、弟で有る現王が即位したのです。」

父さんは2年も指導して貰ったの?俺は道中で慣れろと、即出発でしたけど?待遇が違いすぎない?

しかしワンコ!貴様ー!

「ソニアさん有り難う。その王兄様は当時は何歳だったの?」

「確か先代勇者様より、2才程年上だったと思います。弟君の現王様が、先代勇者様より5才程年下だったかと。」

先代勇者は20才で召喚。その後2年修行し1年かけ魔王を討伐。23才で宰相の策略にはまり、4人の父親になる。現在は約37才だな。

つまり王兄は、そのまま成長してれば39才位。確か26才で成長を止められた。2才違いなら少しの誤差だな。多分誕生日とかの関係だろう。

その後ソニアさんは、護衛と共に帰宅した。

ワンコは…。

毛剃りの刑となった。

髪の毛も何処もかしこも、全てを剃ってやろうか!

*****
              
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