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肝っ玉母さんvs案内おじさん。

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俺と母さんは城下町の東門近くに、かなりデカイ土地を購入した。さあ母さん!宰相に痛い目を見せてやれ!ヤツには一生母さんのカレーは食わせん!俺が許す。好きな様に暴れてくれ!許さなくても、既に暴れてるな…。

*****

東門は遠くは隣国に繋がるルートだ。かなりしっかりした門構えだが、食料等の流通を止めるためだろう。魔王が復活し早々に攻めこまれた。勿論俺達が出て追い払った。しかし東門は破壊つくされ、かなり長く修理の為に使用できなかった。今は開門はされているが臨時的な物で有り、前面解放には至っていない。

東門や壁の修理だけでは無く、壊された建物の撤去も残されていた。所々で大がかりな撤去や、無事に見えても危険な場所の、細かな修理がなされている。こんな状態でも門の使用はしているが、門前通りはすっかり寂れてしまった。以前ならば、沢山の屋台や露店が建ち並んでいた。沢山の商人が往来し、宿屋も商店も競うように声を張り上げ営業していた。しかし今は全くその面影はない。確かに復旧が進まねば、人は戻らず出て行くだけ。東門を見ても人の出入りは、片掌で数えられる程。つまりますます出店や商売人の数が減り、人気が無くなり人が減ってゆく。だからか新たな建物も再建されず、人々は諦め土地を手放し他ヘ移る。その為か一帯はほぼ更地状態だ。

ん?何て事を考えてたら、何故か母さんが走り回っている。若返って体がめちゃ軽いんだそうだ。全くガキみたいにはしゃぎ過ぎなんだよ。

「ここ!ここ良いじゃない。東門も半年もすれば全面開門できるんでしょ?ならここ買いましょう。」

母さんが両手を広げながら、くるくる回り端から端へと走って行く。おーい。姿が見えなくなったぞ。何処まで行くんだ?ってか、何処まで買う気なの?まさかこの一角買うの?流石に広すぎない?テーマパーク作るんじゃ無いんだぞ?住むの俺達だけだぞ?おい。案内のおじさん。何か言ってくれよ。

「お客さま?土地は丸ごとでは無く、切り売りも出来ますよ?お好きな場所を指定して貰えば、上手く配分致しますが?」

そうそう。それだよ。

「大丈夫!資金はたんまりある。この世界にも賃貸は有るんでしょ?老後の資金作りと、これから増える家族の為に先行投資よ。それにこんなに広い更地に、お屋敷だけポツンと建てるの?それじゃお食事処を併設しても、お客様なんて誰も来ないわよ!」

確かにポツンと家と食事処じゃ…。

「え?それよりまさか母さん再婚するの?いきなりだな。誰だよ?」

母さんがこの世界に来て会った男性って、王様と宰相位。魔術師達とは口も聞いてないよな?あの研究バカの変人達は絶対に駄目だぞ!まさか父さんの筈も無いだろうし。

「まさかこの案内のおじさん!?」

パコンッ。また殴られた。地味に痛い…。だが何だか可愛い音だったから許す。

「息子の家族は私の家族でしょ!あんたがお姫様と結婚でもしなきゃ、一緒に住んでくれるんじゃないの?だから広く二世帯以上が良いわ。ついでに宿屋に食事処で雇用促進しちゃいましょ。祐太郎も雇用の心配をしてたじゃない。お金は世間に回さなくちゃダメ。貯めこんでたら、経済が回らないのよ。だからら私は節約はしてもドケチはしなかったでしょ?祐太郎の教育にはお金をかけたつもり。少しでも良い塾でお安い所は探したけどね。あっそうだ!商店街みたいにして、店舗から家賃取るのも有りね。その辺の残ってる屋台も面倒見ちゃうわよ。」

母さん…。内政チートモドキかよ。まあ確かに俺の魔王討伐の報償金も有る。母さんは宰相から、慰謝料をたんまり貰ったからな。まあ宰相もこれバレたら身の破滅っしょ?たんまり溜め込んで来たみたいだし、少しは放出して貰わないとね。

俺が心配してた孤児院の話、チラッと宰相にしただけなのに聞いてたんだね。この城下町の孤児院は、設備は恵まれてる。でも食料が無いんだよ。地方の孤児院では、食材はほぼ自給自足だ。正直食事内容は、地方の孤児院の方がマシな位だ。何故なら地方には生産性が有る。貧乏でも食物を育ててるから、皆でわけあい食べて行ける。その分現金収入は減るけど、魔王の被害地区には現金補助が上乗せされてる。それが城下町には一切無い。何故なら孤児院の子供達にも、現金を得る術が有ったから。魔王の被害が出る前は、子供達はギルドの仕事をしてたんだ。そのお金で食材を得る。だから暮らして行けた。しかし食材の高騰。そして更には今の現状。大の大人でも仕事が少ない。子供達へ割り振れる仕事が無い。有っても危険な仕事や力仕事ばかり。孤児院の子供達には到底無理だ。薬草の採取等も魔王の進軍で、近場の採取場が荒らされてしまった。俺は時折ギルドの仕事をしてた。魔王討伐後は魔王軍の打ちもらしを、ギルド経由で受け持ってた。毎朝仕事依頼の掲示板を見て、ガックリと肩を落として帰る子供達。その子供達は、やがて諦めたのか来なくなった。焼け石に水だけど魔王討伐の報償金がでたら、孤児院に寄付するつもりだったんだ。

「息子よ。理解してくれたかね?だからね?この案内の方に失礼を言わないの!この方とはこれからとっても仲良しになるのよ。」

「理解はしたけど何で?」

だからって、何で仲良くなるのさ。

「案内のおじさま?ちょいと質問致しますわね。土地を切り売りなさるのは大変ですよねぇ?奥まった土地には通路をつけねばならない。その分の土地は無償か私道になり激安。価格的には全く儲けにならぬのでは?それにちまちま開発するより、一度に開発する方が無駄が無いし儲かるわ。一度私の計画を聞いてみない?損はさせないと思うの。勿論、私にも損はさせないわよねえ?私と先方の、どちらの話がお得かしら?案内人の貴方の一存で決めて平気なの?大金が動くのよ?ギルマスを通さなくて大丈夫?私もそれなりの価格を提示してくれたなら、こんな脅しみたいな事を言わないわ。でもぼったくりは酷いわ。ねぇ?商業ギルドさん?」

確かにこの人は下っ端だろうな。でも先方って誰だ?

・・・・・。

「私が勇者の関係者だからぼったくろうと思ってたでしょ?私はちゃんと商業ギルドの掲示板の広告見たわよ。この土地ってば!私達に提示した額より断然安いじゃない!しかも曰く付きの売れ残り!その原因も教えない!まったくもぅ…。」

何々?それどういう事?おじさん項垂れてるじゃん。どうしたんだよ。

母さん。説明プリーズ。

何なら今から癒しの魔法の練習しちゃう?

ニヤリと母さんの黒い微笑み。

「案内のおじさま?どうなさいます?」

(母さんは最終宣告を突き付けた!)

(おじさんは頭を抱えながら、ウンウン唸っている!)

(勇者は見守っている。)

(おじさんは後退した。逃げる!)

(勇者が回り込んだ!)

(おじさんは転んだ。当たり前だが逃げられない。)

「あら?おでこと掌をを擦りむいてるわ。魔法で癒してあげる。」

(母さんは尻もちをつくおじさんの掌に、癒しの魔法をかけた。擦り傷が消えた!)

「ではお次は額の傷ね。これはもろ顔面ぶつけたわね。鼻の頭も皮がむけて痛そうね。うーん。先ずは中に入った砂や砂利を取り除いて…。砂がジョリジョリして痛そうね。「うわぁぁー!痛い!止めてくれ!」ジョリジョリを取り除き、清潔にし塞ぐイメージでって煩いな!治療中よ。黙りなさい!」

(おじさまは顔面を掌で覆い、のたうち回っている。)

えっエグいな。母さんは性格が大雑把な癖に、変な所で細かいんだよ。。魔法はイメージが大切なんだ。だから細かいイメージは良い効果をもたらす。だけど、砂がジョリジョリとかのイメージは要らないんだよ。何なら流水で洗い流すイメージをすれば良いんだ。まあどちらでも傷は塞がるし結果は変わらない。でも痛いより痛くない方がよいよな?

勿論本当にジョリジョリしたり、流水で流したりする訳じゃない。あくまでも治療の過程でのイメージだ。でもそのイメージは、治療を受ける者に同様のイメージを送り込む。そして不快に感じてしまう。癒しの魔法が得意な人は、イメージも清涼だ。その為、癒された側も心地が良い。だから母さんはイメージの特訓がまだまだ必要。これが癒し特化だと言われたのに、癒しが苦手な訳だよ。治療で痛いのは誰でも嫌だ。我慢できる怪我や病気なら、母さんに癒して貰いたくない。だから経験が積めずに、余計に上達しない訳。

その点攻撃魔法は、些細なイメージを気にしなくて良いからね。だから母さんは攻撃特化の様にチートな訳だ。

(おじさんが崩れ落ちた。かあさんが無事におじさんを癒した!不快感発生。経験値半減。経験値をちょびっとゲットした。)

「ううぅ…。」

「癒しの経験値をちょびっと有り難う。さあ。これからどうします?逃げても良いですよ。わたしがしっかりと癒してあげます。経験値ゴチです!」

「すっ全てお話致します。もっ申し訳ございません!」

(案内のおじさんが全面降服した。)

*****
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