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異世界

26. 終章

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久しぶりに帰って来た森の家で。

私はすぐにオウガに押し倒された。
ううん、私がオウガを押し倒したかもしれない。
とにかく、ふたり揃ってベッドに倒れ込んで。
“鍵“魔法なんてとっくに解除していたから、あっさり脱がされて、あちこち手と唇を這わされて。

「どうしたの? いつものオウガじゃないみたい。余裕ない、って感じ」

「だって、久々のセックスだから」

「セックスなら、数時間前までエイリーとしてたでしょ?」

「リサ、それイヤミ? ・・・確かにしてたけど、全然楽しくないし、あんまり興奮出来なかったんだよね、エイリーが相手だと。
・・・いや、エイリーだけじゃなく。誰を相手にしても、今ひとつその気になれなかったんだ。・・・勿論、相手のフェロモンに巻かれれるからセックスは出来るし、お世話も甲斐甲斐しく出来るんだけど」

「何かが違うの?」

「リサも離れてる間、いろんな男に抱かれたんだよね? リサには分からないかな? ツガイとの違いが」

「ちゃんとツガイと認識して抱き合ったこと、まだ無いし」

「あぁ、そうか。じゃあ、やっぱりまずは抱かないとだな。・・・うん、とにかく今のオレに余裕がないのは確かだよ? 覚悟してね」

そう言うと、再びオウガは私の身体を一気にし始めた。



這わされる手、指、唇、舌。そして擦れ合う肌。
私の身体を知り尽くしているオウガが、あらゆる手管で私を官能の渦に引き込む。多分媚薬も盛られてる。

肌を合わせただけでも揺らいでいた身体の中心のまばゆい光が、そうして快感を引き出されてイくたびに明るさを激しくする。
そのときに得られるのは、快感を超えた幸福感。満たされる満足感。そして安心感。

最後の魔力融合で感じたのは、光の粒子になって世界と、宇宙と一体化したかのような、果てしない幸福であり安心であり充足感。
他の人とのセックスでは、決して味わえない一体感であり幸福感だった。






「リサ、何か分かった?」

何度か魔力融合を起こして、例えようのない満足感に満たされた後、ようやく落ち着いたオウガが私に訊いてきた。

「うん。・・・とんでもない、幸せな感覚。表現出来ないほどの、満たされた感覚だった」

「うん、そんな感じ。・・・これはさ、他の女性ひと相手じゃぁ、絶対得られないんだよね」

「そう言いながら、オウガ。私には他の男性ひとと抱かれるように何度も勧めたクセに」

「そのおかげで、魔力保有量が限界突破したでしょ? ・・・この後抱いたら、今度こそ発情期に突入するけど、大丈夫?」

「大丈夫、って? 何が?」

「双子を産み育て終えたばかりのところ悪いけど、今度こそオレとの子供を孕んで、産み育てて欲しいんだけど?」

とろりと目を細めて見つめてくるオウガの首に、私は両手を回して抱きついて。
涙をこぼしながら「もちろんよ」と答えた。




いつもの発情期の際には理性も記憶もトばして抱かれていたけど、今回の発情期はちょっと違った。
理性はトんだけど、記憶はトばなかった。
トばない代わりに、光の粒子になって世界や宇宙を漂うような、不思議な感覚の中を漂った。
それはオウガも同じだったようで、途中からはただ身体を繋げて抱き合ったまま、不思議な世界の中でずうっと揺蕩たゆたっていたとのこと。
食事も取らずにそんなふうに何時間も過ごしていたにも関わらず、ふと現実に意識が引き戻されても、空腹感は感じなかったのだからホントに不思議。


そうして1週間の発情期を終えた時、私は願い叶ってオウガの子を身籠っていた。





オークの血を受け継いでいるとは言え、オークの妊娠期間も人間とほぼ同じとのことで、妊娠期間の10ヶ月余りをテロークの街でオウガの親族に世話されながら過ごした後、私はオウガ似の男の子、フォルトを出産した。

オウガは驚くほど子煩悩で、嬉々としてフォルトの世話をしてくれた。
オウガの親族たちも何故かベビーラッシュで、みんなで赤ちゃんたちを育ててくれた。




やがて成人したフォルトは、導かれるようにチェントレの神殿に住まうようになる。
そしてそこで、父親譲りの魔術と調整師の高い技術を、遺憾無く発揮する。


フォルトが独り立ちした後の私たちは、またふたりであちこち旅をした。
2週間旅を続けたら、1ヶ月森の家でまったりと過ごす。
歳を重ねるにつれ、旅のペースは“1週間の旅の後に1ヶ月の休息“、と、だんだん短くなって来ている。


随分前に、イルザとロッカは天寿を全うした。
亡くなる前に、オウガはイルザから“魔力を生体機能に回す“魔法を伝授されたらしい。

私たちもかつてのイルザとロッカのように、見た目はそのままで歳を重ねることになる。

獣人族はヒトやオークよりも短命な為、ノアールとビアンカも既にかなりの高齢。そして、孫やひ孫に囲まれている。


あれからマヴェーラ大陸では全土に渡ってオークや獣人族との交配が進み、見た目も多種多様になった。



“結婚“とか“カレカノ“と言う縛りのないこの世界の慣習に始めこそ戸惑ったけど、今ではその気楽さを私もすっかり受け入れている。
実際私たちも、あれ以来何度も調整師として他人と身体を繋げたし、気が向けばツガイ以外の人とセックスすることもあった。

それは単なる“プレジャー“で、そこに違和感も罪悪感も無い。


だけど、やっぱりツガイとの交わりが、一番刺激的で、幸せで、充足感が得られる。
それを何度もオウガとふたりで確認する、その幸せ。


元の世界で私は不幸な最期を迎えたけれど、そのおかげでこちらの世界に来れた、とも言える。
全てはなるようになっている、その不思議。


この先、この世界がどんなふうに変わっていくのかを、私たちは譲り受けたイルザの家と森の家を拠点にしながら見つめていこうと思う。








∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞・∞⌘∞



最後までお付き合いくださり、ありがとうございました <(_ _)>

そのうち気が向いたら、作中に出てきた他の登場人物の後日譚なども書いてみたいと思います (^^)
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