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異世界
18. 魔力循環調整(“封印の地“)
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「オウガ! 急いで調整してくれ! “封印の地“の後始末は、俺たちでやっておくから!」
「分かった。・・・アッシュ! 手伝ってくれ」
呼ばれて、慌ててアッシュが駆けつける。
「少し離れたところにテントを出して、そこに今すぐローザを運んでくれ」
「分かった」
そう言うとアッシュがローザを俵抱きに抱き上げ、みんなからは少し離れた場所へと駆けて行く。
その後を、私たちも急いで追った。
アッシュは岩の少ない場所にポーチから丸いテントを取り出し、中へと入っていく。
続いて私たちも入ると、アッシュがローザを奥のベッドに、そっと寝かせているところだった。
「アッシュ、ローザに媚薬で準備を施してくれ」
「えっ」
「急いで」
「わ、分かった」
カクカクと首肯すると、アッシュがローザの服を引き裂いて脱がせる。そしてすぐにローザに覆い被さって、キスしたり、あちこちへと舌を這わせたりし始めた。
ローザの苦しげな息づかいに、時折艶めいた声が混じり始める。
それを確認したオウガが、私を振り返り、
「リサ・・・」
震えながら抱きついてくる。
「どうしたの? オウガ? 大丈夫?」
「う・・・」
うめきながら腰を擦り付けてくるのだけれど・・・。準備が、出来てない??
「・・・もしかして、私のせいで?」
「分からない。・・・違う、と、思う、けど・・・」
「私がワガママ言ったから? 他の女の人を抱かないで欲しい、キスもしないで欲しいって、言ったから??」
「ううっ・・・、どうしよう・・・」
チートなはずのオウガが、情けない声を耳元で漏らした。
「オウガ、準備、出来たぞ?!」
アッシュから声がかかる。
「・・・スマン、そのまま・・・、簡易調整に入ってくれ」
「は?」
「・・・無理か?」
「いや、出来るけど。ってか、オマエ、大丈夫か? オマエもどこか、具合が悪いんじゃないのか?」
「オレのことは、良いから。ローザを、頼む。・・・暴発するなよ」
「し、しねーよ!」
「ああ、クソッ」と言いながら、アッシュは一瞬で裸になると、ローザの脚を開いて準備万端整ったソレを何度か秘裂に滑らせた後、挿入を開始した。
ローザの苦しげな声と、アッシュの切なげな吐息が漏れ聞こえ始める。
アッシュの簡易調整で、少しは時間が稼げるだろう。でも、そうそう悠長なことも言ってられない雰囲気だ。
本当に魔力爆発が起きてしまったら、ここに居るみんなに被害が及んでしまうのは想像に難くない。
私は抱きついているオウガを引き離し、眉尻を下げたオウガの、その潤んだ目を見つめる。
「ごめんね、オウガ。今迄いっぱいワガママ言って。でも、もう大丈夫。オウガのこと、大好きだから。だから、私もオウガの意思を尊重する」
私はそう言ってオウガの唇にキスしながら、手をオウガのズボンへと滑らせて前をくつろげる。
「はっ、リ、リサ?!」
ギョッとするオウガには構わず、唇をオウガの胸へ、お腹へ。そして、ズボンから力無くこぼれ出ているソレへと這わせる。撫でて、舐って、摩って・・・。
そしてふと思い出す。
私は元の世界でも、ここに来てからも、いつも奉仕してもらうばかりで、自分からするのは初めてだったな、と。
少し芯を持ち始めたソレを、手で握って摩ったり、頬擦りしてみたりしながら、オウガの顔を見上げる。
オウガは顔を真っ赤にして荒い息を吐きながら、潤んだ目で、じぃっと私を見つめていた。
「オウガ、ゴメンね。私、男の人にこう言うことするの、初めてだから。・・・上手く、出来なくて」
「えっ? ・・・初めてなの?」
「うん」
そう答えた途端に、手の中のソレが、驚くほど一気に大きくなった。
「えっ」
目の前で急激にソレがここまで大きくなるのを見るのは、生まれて初めてのことだった。
男の人のココって、こんなふうに育つんだ。
・・・などと思わず手を止めて観察していると、オウガが私の腋の下に手を入れて、ぐいっと私を立ち上がらせた。
「オ、オウガ」
「はぁ・・・、オレのツガイが可愛くて破壊的すぎる。・・・ううっ、このままリサを抱きたい」
私を強く抱きしめて、耳元で熱い吐息を漏らしながらそんなことを言う。
「ふふふ。それは、後で、ね?」
そう言って再度オウガにキスした後、彼の身体をくるりとベッドの方に向かせて、そっとその背を押した。
ベッドでは、ちょうどローザとアッシュが、嬌声を上げながらふたり揃ってイっているところだった。
「・・・はっ、はぁ、・・・オウガ、後は頼む」
そう言ってアッシュは大きな枕を背に当ててヘッドボードに寄りかかると、ローザを後ろ抱きにした。
ローザの顔には少し赤みが戻っているものの、まだまだ苦しそうだ。アッシュはそんなローザの肩を撫で、頭や頬に口づけを落としながら何かを囁いている。
そのベッドに乗って、ローザの脚を開いて抱きかかえると、今度はオウガが、ローザの中へとゆっくり侵入し始めた。
“魔力の目“を使いながら、ローザの魔力を観察する。
ゆるゆると腰をゆすり、時々狙いをすましたように強くナカを抉る。
思わず嬌声を上げるローザの口に、宥めるようにアッシュがキスする。
それは、オウガが私に初めて施してくれた“魔力循環調整“の時よりも、かなり手間と時間がかかる調整となった。
だけどやがてそれも終盤を迎え、オウガが激しく腰を振り始める。
嬌声を上げながら快感にハネるローザの身体を、後ろからアッシュが羽交い締めにして抑える。
そして遂に調整が完了して魔力融合が起こると、オウガは荒い息を吐きながら、再度“魔力の目“で全体の具合を確認し始めた。
「・・・うん、問題無い。調整完了だ。・・・アッシュ、協力ありがとう。ひとりでするよりも、断然やり易かった」
「そ、そうか? まぁ、俺にとっては役得でしかなかったけどな」
「ところで、アッシュ」
「ん?」
「媚薬を盛りすぎ。このままじゃローザもツラいと思うから、媚薬を抑えてもう少し抱いてあげてくれる?」
「えっ・・・」
「役得ついでに」
そう言ってオウガがウインクすると、アッシュはゴクリと喉を鳴らした。
“浄化“を自分とローザにかけると、オウガは服を整えながら私の元へと戻って来た。
「お待たせ、リサ」
「お疲れ様、オウガ」
顔を寄せてきたオウガの首に両腕を回し、深い深い労いのキスをする。
オウガに腰を抱かれながらテントを出る際にふと後ろを振り返ると、アッシュが対面抱きにしたローザにキスしながら、ゆったりと腰を揺らし始めるところだった。
外は既に日が暮れて、空には星が瞬いていた。
封印の穴があった場所に、今は大きな焚き火が燃えていて、そこから肉を焼く良い匂いが漂ってくる。
どうやら冒険者たちが近くで何かの動物を狩ってきて、みんなでそれを食べながら酒盛りしているらしい。
魔力調節完了の報告を兼ねてそこに向かうと、串焼肉に齧りり付いていた退魔師エンソルが声をかけて来た。
「やぁ、無事に終わったか。ありがとな」
「いえいえ」
「ま、ふたりとも、ここに座って猪肉でも食べな」
魔力爆発の危険があったと言うのに、みんな妙に緊張感が無い。それだけオウガの能力を信用してくれていた、ってことなのかな?
エンソルに誘われて、空いている場所に簡易椅子を取り出して座ると、大きな肉を焼いていた冒険者のひとりが、食べやすいサイズに切った肉を渡してくれた。
「この大猪、この山の中腹に棲みついてたんだよ。で、この辺の地面に付いてた足跡から“鑑定“するに、こいつが封印の岩を破壊した犯人さ。面倒起こしてくれたお返しに、みんなできっちり最後まで食ってやろうぜ」
「「「おーーーーっ!!」」」
お酒が進んでいるのか、みんな陽気に声を上げる。
私たちにも葡萄酒の入ったジョッキが回ってきたので、ありがたく口を付ける。
「そう言やお嬢さん、どうしてお嬢さんはあの古代文字が読めたの?」
近くに座ってサラダを突いていた考古学者が、私に質問してくる。
「ええっと・・・」
言い淀んでいると、私の代わりにオウガが答えてくれた。
「リサは、古い時代に生きてた頃の記憶が、少しだけあるみたいなんだ」
「なるほど、前世の記憶持ちか。いや、お嬢さんが来てくれて助かったよ。あの文章が読み解けたことが、今回の成功の鍵になったからね」
「う・・・。あ、ありがとうございます」
異世界チートなのに、なんだか過分に褒められて気が引ける。
「それよりも、皆さんの活躍も凄かったですね。次々と魔法を発動するので、ビックリしちゃいました」
「あー、退魔師なんか、一生分の仕事を今日やったんじゃね?」
「いつもはやることなんて、ほとんどないもんな」
「何を失礼な!」
「おまえ、“時渡り“の魔法なんて、なんで知ってたの~?」
「あー、私もそれ、聞きたいでーす」
「読み取れなかった他の魔法って、結局なんだったのー?」
みんなが一斉に話し始めて、また一気に辺りが騒がしくなった。何やら肩を組んで歌い始めた集団も居る。
私たちはそんなみんなの様子を眺めたり、書かれていた古代文字についての考古学者からの質問に答えたりしながら、食事の時間を楽しんだ。
途中、テントからアッシュが出てきたけど、ふたり分の食事を分けてもらうと、またテントの中へと引き返して行ってしまった。
「ところでリサ、岩の後ろに書かれていた“かごめかごめ“って、もしかして、元の世界の言葉で書いてあったの?」
耳元で、こそっとオウガが聞いてくる。
「うん、そうなの。元の世界で使ってた、“ひらがな“って文字。
80年ぐらい前に封印が綻んだ時に、誰かがいつの間にか再封印してた、ってイルザが言ってたけど、それが私と同じ日本人だったのかも」
「うん、オレもそう思う。多分その人ひとりではなくて、こっちの世界の誰かも一緒に居たんだと思う。だからこっちの童歌との共通点に気づけたんじゃないかな」
「私の他にも、異世界渡りをした人が居たことがある、ってこと?」
「もしくは、ニホンジンだった前世の記憶を持つ人、とかね」
「でも、今回ここに日本語が読める人が居なかったらどうするつもりだったのかな。ちゃんとこっちの言葉で“魔鳥を囲め”? って書けばよかったのにね」
「後世に伝えるつもりではなくて、単純に、メモ書きのつもりだったのかもね」
色々と話し込んでいるうちに、いつの間にかあたりが静かになっていた。
炎を囲んでいる人数も激減している。
「オレたちも、もう休もうか」
アッシュのテントの周りには、他にもたくさんのテントが既に建てられていた。
“防音“とか“結界“などのプライバシー系魔法がきっちりかけられているようで、なんの音も聞こえてこない。どこか遠くから、フクロウの鳴く声が聞こえて来るぐらい。
アッシュのテントの裏まで来ると、オウガはポーチの中からみんなと似たような丸いテントを取り出した。
「今日は“森の家“じゃなくて、みんなの真似してテントに泊まろう」
そう言って導かれたテントの中には、ベッドもテーブルセットも備え付けられていて、このままここでも住めそうな雰囲気だった。
そのテントのベッドの中で、長い1日を終えてすっかり疲れていた私たちは、お互いを抱きしめ合いながら、朝までぐっすりと眠ったのだった。
「分かった。・・・アッシュ! 手伝ってくれ」
呼ばれて、慌ててアッシュが駆けつける。
「少し離れたところにテントを出して、そこに今すぐローザを運んでくれ」
「分かった」
そう言うとアッシュがローザを俵抱きに抱き上げ、みんなからは少し離れた場所へと駆けて行く。
その後を、私たちも急いで追った。
アッシュは岩の少ない場所にポーチから丸いテントを取り出し、中へと入っていく。
続いて私たちも入ると、アッシュがローザを奥のベッドに、そっと寝かせているところだった。
「アッシュ、ローザに媚薬で準備を施してくれ」
「えっ」
「急いで」
「わ、分かった」
カクカクと首肯すると、アッシュがローザの服を引き裂いて脱がせる。そしてすぐにローザに覆い被さって、キスしたり、あちこちへと舌を這わせたりし始めた。
ローザの苦しげな息づかいに、時折艶めいた声が混じり始める。
それを確認したオウガが、私を振り返り、
「リサ・・・」
震えながら抱きついてくる。
「どうしたの? オウガ? 大丈夫?」
「う・・・」
うめきながら腰を擦り付けてくるのだけれど・・・。準備が、出来てない??
「・・・もしかして、私のせいで?」
「分からない。・・・違う、と、思う、けど・・・」
「私がワガママ言ったから? 他の女の人を抱かないで欲しい、キスもしないで欲しいって、言ったから??」
「ううっ・・・、どうしよう・・・」
チートなはずのオウガが、情けない声を耳元で漏らした。
「オウガ、準備、出来たぞ?!」
アッシュから声がかかる。
「・・・スマン、そのまま・・・、簡易調整に入ってくれ」
「は?」
「・・・無理か?」
「いや、出来るけど。ってか、オマエ、大丈夫か? オマエもどこか、具合が悪いんじゃないのか?」
「オレのことは、良いから。ローザを、頼む。・・・暴発するなよ」
「し、しねーよ!」
「ああ、クソッ」と言いながら、アッシュは一瞬で裸になると、ローザの脚を開いて準備万端整ったソレを何度か秘裂に滑らせた後、挿入を開始した。
ローザの苦しげな声と、アッシュの切なげな吐息が漏れ聞こえ始める。
アッシュの簡易調整で、少しは時間が稼げるだろう。でも、そうそう悠長なことも言ってられない雰囲気だ。
本当に魔力爆発が起きてしまったら、ここに居るみんなに被害が及んでしまうのは想像に難くない。
私は抱きついているオウガを引き離し、眉尻を下げたオウガの、その潤んだ目を見つめる。
「ごめんね、オウガ。今迄いっぱいワガママ言って。でも、もう大丈夫。オウガのこと、大好きだから。だから、私もオウガの意思を尊重する」
私はそう言ってオウガの唇にキスしながら、手をオウガのズボンへと滑らせて前をくつろげる。
「はっ、リ、リサ?!」
ギョッとするオウガには構わず、唇をオウガの胸へ、お腹へ。そして、ズボンから力無くこぼれ出ているソレへと這わせる。撫でて、舐って、摩って・・・。
そしてふと思い出す。
私は元の世界でも、ここに来てからも、いつも奉仕してもらうばかりで、自分からするのは初めてだったな、と。
少し芯を持ち始めたソレを、手で握って摩ったり、頬擦りしてみたりしながら、オウガの顔を見上げる。
オウガは顔を真っ赤にして荒い息を吐きながら、潤んだ目で、じぃっと私を見つめていた。
「オウガ、ゴメンね。私、男の人にこう言うことするの、初めてだから。・・・上手く、出来なくて」
「えっ? ・・・初めてなの?」
「うん」
そう答えた途端に、手の中のソレが、驚くほど一気に大きくなった。
「えっ」
目の前で急激にソレがここまで大きくなるのを見るのは、生まれて初めてのことだった。
男の人のココって、こんなふうに育つんだ。
・・・などと思わず手を止めて観察していると、オウガが私の腋の下に手を入れて、ぐいっと私を立ち上がらせた。
「オ、オウガ」
「はぁ・・・、オレのツガイが可愛くて破壊的すぎる。・・・ううっ、このままリサを抱きたい」
私を強く抱きしめて、耳元で熱い吐息を漏らしながらそんなことを言う。
「ふふふ。それは、後で、ね?」
そう言って再度オウガにキスした後、彼の身体をくるりとベッドの方に向かせて、そっとその背を押した。
ベッドでは、ちょうどローザとアッシュが、嬌声を上げながらふたり揃ってイっているところだった。
「・・・はっ、はぁ、・・・オウガ、後は頼む」
そう言ってアッシュは大きな枕を背に当ててヘッドボードに寄りかかると、ローザを後ろ抱きにした。
ローザの顔には少し赤みが戻っているものの、まだまだ苦しそうだ。アッシュはそんなローザの肩を撫で、頭や頬に口づけを落としながら何かを囁いている。
そのベッドに乗って、ローザの脚を開いて抱きかかえると、今度はオウガが、ローザの中へとゆっくり侵入し始めた。
“魔力の目“を使いながら、ローザの魔力を観察する。
ゆるゆると腰をゆすり、時々狙いをすましたように強くナカを抉る。
思わず嬌声を上げるローザの口に、宥めるようにアッシュがキスする。
それは、オウガが私に初めて施してくれた“魔力循環調整“の時よりも、かなり手間と時間がかかる調整となった。
だけどやがてそれも終盤を迎え、オウガが激しく腰を振り始める。
嬌声を上げながら快感にハネるローザの身体を、後ろからアッシュが羽交い締めにして抑える。
そして遂に調整が完了して魔力融合が起こると、オウガは荒い息を吐きながら、再度“魔力の目“で全体の具合を確認し始めた。
「・・・うん、問題無い。調整完了だ。・・・アッシュ、協力ありがとう。ひとりでするよりも、断然やり易かった」
「そ、そうか? まぁ、俺にとっては役得でしかなかったけどな」
「ところで、アッシュ」
「ん?」
「媚薬を盛りすぎ。このままじゃローザもツラいと思うから、媚薬を抑えてもう少し抱いてあげてくれる?」
「えっ・・・」
「役得ついでに」
そう言ってオウガがウインクすると、アッシュはゴクリと喉を鳴らした。
“浄化“を自分とローザにかけると、オウガは服を整えながら私の元へと戻って来た。
「お待たせ、リサ」
「お疲れ様、オウガ」
顔を寄せてきたオウガの首に両腕を回し、深い深い労いのキスをする。
オウガに腰を抱かれながらテントを出る際にふと後ろを振り返ると、アッシュが対面抱きにしたローザにキスしながら、ゆったりと腰を揺らし始めるところだった。
外は既に日が暮れて、空には星が瞬いていた。
封印の穴があった場所に、今は大きな焚き火が燃えていて、そこから肉を焼く良い匂いが漂ってくる。
どうやら冒険者たちが近くで何かの動物を狩ってきて、みんなでそれを食べながら酒盛りしているらしい。
魔力調節完了の報告を兼ねてそこに向かうと、串焼肉に齧りり付いていた退魔師エンソルが声をかけて来た。
「やぁ、無事に終わったか。ありがとな」
「いえいえ」
「ま、ふたりとも、ここに座って猪肉でも食べな」
魔力爆発の危険があったと言うのに、みんな妙に緊張感が無い。それだけオウガの能力を信用してくれていた、ってことなのかな?
エンソルに誘われて、空いている場所に簡易椅子を取り出して座ると、大きな肉を焼いていた冒険者のひとりが、食べやすいサイズに切った肉を渡してくれた。
「この大猪、この山の中腹に棲みついてたんだよ。で、この辺の地面に付いてた足跡から“鑑定“するに、こいつが封印の岩を破壊した犯人さ。面倒起こしてくれたお返しに、みんなできっちり最後まで食ってやろうぜ」
「「「おーーーーっ!!」」」
お酒が進んでいるのか、みんな陽気に声を上げる。
私たちにも葡萄酒の入ったジョッキが回ってきたので、ありがたく口を付ける。
「そう言やお嬢さん、どうしてお嬢さんはあの古代文字が読めたの?」
近くに座ってサラダを突いていた考古学者が、私に質問してくる。
「ええっと・・・」
言い淀んでいると、私の代わりにオウガが答えてくれた。
「リサは、古い時代に生きてた頃の記憶が、少しだけあるみたいなんだ」
「なるほど、前世の記憶持ちか。いや、お嬢さんが来てくれて助かったよ。あの文章が読み解けたことが、今回の成功の鍵になったからね」
「う・・・。あ、ありがとうございます」
異世界チートなのに、なんだか過分に褒められて気が引ける。
「それよりも、皆さんの活躍も凄かったですね。次々と魔法を発動するので、ビックリしちゃいました」
「あー、退魔師なんか、一生分の仕事を今日やったんじゃね?」
「いつもはやることなんて、ほとんどないもんな」
「何を失礼な!」
「おまえ、“時渡り“の魔法なんて、なんで知ってたの~?」
「あー、私もそれ、聞きたいでーす」
「読み取れなかった他の魔法って、結局なんだったのー?」
みんなが一斉に話し始めて、また一気に辺りが騒がしくなった。何やら肩を組んで歌い始めた集団も居る。
私たちはそんなみんなの様子を眺めたり、書かれていた古代文字についての考古学者からの質問に答えたりしながら、食事の時間を楽しんだ。
途中、テントからアッシュが出てきたけど、ふたり分の食事を分けてもらうと、またテントの中へと引き返して行ってしまった。
「ところでリサ、岩の後ろに書かれていた“かごめかごめ“って、もしかして、元の世界の言葉で書いてあったの?」
耳元で、こそっとオウガが聞いてくる。
「うん、そうなの。元の世界で使ってた、“ひらがな“って文字。
80年ぐらい前に封印が綻んだ時に、誰かがいつの間にか再封印してた、ってイルザが言ってたけど、それが私と同じ日本人だったのかも」
「うん、オレもそう思う。多分その人ひとりではなくて、こっちの世界の誰かも一緒に居たんだと思う。だからこっちの童歌との共通点に気づけたんじゃないかな」
「私の他にも、異世界渡りをした人が居たことがある、ってこと?」
「もしくは、ニホンジンだった前世の記憶を持つ人、とかね」
「でも、今回ここに日本語が読める人が居なかったらどうするつもりだったのかな。ちゃんとこっちの言葉で“魔鳥を囲め”? って書けばよかったのにね」
「後世に伝えるつもりではなくて、単純に、メモ書きのつもりだったのかもね」
色々と話し込んでいるうちに、いつの間にかあたりが静かになっていた。
炎を囲んでいる人数も激減している。
「オレたちも、もう休もうか」
アッシュのテントの周りには、他にもたくさんのテントが既に建てられていた。
“防音“とか“結界“などのプライバシー系魔法がきっちりかけられているようで、なんの音も聞こえてこない。どこか遠くから、フクロウの鳴く声が聞こえて来るぐらい。
アッシュのテントの裏まで来ると、オウガはポーチの中からみんなと似たような丸いテントを取り出した。
「今日は“森の家“じゃなくて、みんなの真似してテントに泊まろう」
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