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一章 私立八意学園
夕日
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悲鳴が鳴り響いた後、本領を発揮し始めたコープスロットによって大変だった。
腰を抜かしてしまったらしい蓮さんに肩を貸しながら歩いて行くと割れた窓から突き出る大量の腕。
下半身がなく這いずり回る死体、天井から降ってくる謎の肉塊。通り過ぎる影。
ことごとく蓮さんに悲鳴を上げさせ最後は完全に歩けなくなり泣きじゃくる蓮さんをお姫様抱っこし(背が高ければ背負ったりしたがそれも出来なかった)腕が限界を迎えた辺りでようやくゴールを迎えた(一応蓮さんの名誉のために言っておくがそんなに重くはなかった。あと柔らかかった)
日の光を浴びてようやく落ち着いたのかしがみついたままではあるものの泣き止んだ蓮さんと共に後続の宗介と絵里さんを待つ。
5分ほどして若干顔が引きつっている絵里さんとなんだかご満悦な様子の宗介が出てきた。
「いや、蓮、ほんとごめん…ここまでとはおもわなかったよ…」
その言葉でフラッシュバックしたのかまたもや泣きじゃくりながら絵里さんをポカポカと叩きながら文句を言う蓮さんになされるがままだが、いつもより余裕がない感じでちょっと震えてる絵里さんを見て宗介に何があったか聞いてみる。
「いや、ぶっちゃけあれ怖すぎね?」
「わかる。蓮さんがああなってなかったらマジでびびりまくる自信があったし」
「こっちも似たような感じだったわ、絵里さんにしがみつかれてなかったら冷静に見てらんなかった」
自分より慌ててる人間ってやつだ。僕の場合蓮さんがあれだったのでもはやびっくりしてる暇すらなかった。
その後女性陣が落ち着くまでの間、まるであやすかのように僕と宗介でジュースやらアイスやらを買いに行ったりトイレまで連れて行ったりして、どうにか30分ほどで落ち着いてもらえた。
「絶対に許さない」
「ごめんってー」
「絵里だけじゃなく類君もだからね」
「あはははー、ここまでとは思わなかったんですよー。軽く怖がってる蓮さんが見れるかなーって」
「軽くじゃないよ!私おばけ嫌いって最初に言ったじゃん!」
言ってたから連れてきたんだけど、それを言ったら火に油なので黙っておく。
「ま、まあ気を取り直して時間も時間ですし最後の締めに行きましょうか!」
宗介が無理矢理割り込み場をとりなす、よくやった、今回は完全にこっちが悪いから何も言えないからね。
「締めってなにさ」
「締めって言ったらやっぱあれっすよ、観覧車!」
当初から予定していた通り観覧車へと向かう。ふてくされたままだった蓮さんだったが観覧車を見て少し機嫌が直ったようだった。単純といったらまた不貞腐れるので黙っていよう。
「今なんか思ったでしょ」
「いえ、なにも?」
「絶対思ってた、単純とか思ってそうな顔してた」
そんなに顔に出ただろうか。こう言う時だけ勘がいいから困る。
「ままっ、ここは喧嘩せず仲良く行きましょうよ!それじゃお二人さんからどうぞ、俺らは次乗るんで!」
宗介に押し出されるような形で観覧車に乗り込むがまたもや蓮さんは不貞腐れたままだった。
少しの間二人きりの空間に沈黙が流れる。
「蓮さん」
「なに」
「今日は楽しかったです。まあお化け屋敷はやりすぎでしたが、色んな蓮さんが見れて僕は楽しかったです。蓮さんはどうでした?」
「たのし…かったけど」
「じゃあよかった。お化け屋敷に関してはお詫びにうちの猫をもふもふすることで手を打ってもらえませんか?」
「にゃんこ!…だ、騙されないからね!」
もう釣れたような気がするけど。
「今度うちに来てくださいよ、宗介たちはなしで、蓮さんだけで。もちろん両親がいる時に。紹介したいですし」
「紹介って、そんな結婚するわけでもないのに」
「あれ、嫌ですか?僕としてはこのまま蓮さんと結婚ーっていうのもいいなあとか思ってたんですが」
これは本音。
正直蓮さんより好きな人が出来ると思えないし、女みたいな僕と男みたいだった蓮さんなら割とお似合いかと自画自賛してたりする。
「いや!そのっ…そこまで考えてなかったっていうか…その…!あっでも嫌じゃないよ!全然!むしろ嬉しいけどその、まだ高校生な訳だし…!」
よかった、振られることはなさそうだ。
「ですね。まだ高校生ですね。でも、予約しててもいいですか?具体的には僕が働き始めて指輪を買えるくらいになったら」
指輪くらいはしっかりと自分のお金で買いたい、そう思うのは変なプライドなんだろうか。
「えーっと、その、うん。こちらこそ、お願いします」
「よかった、断られたらどうしようかと思ってたんですよ。蓮さん、ちょっと外を見ててください」
「外?あっ…キレイ…」
そう、当初の予定通りこの時間の観覧車だと一番キレイに夕日が観れる。そして、夕日に見とれてる蓮さんの首にネックレスを掛ける。
「え?これ…」
「今の僕にはこの安物のネックレスと夕日が精一杯ですけど、いつか、しっかりした指輪でプロポーズしますから」
「ふふっカッコつけすぎだよ類君…。でも、ありがとう」
これが僕が初めて見た蓮さんの嬉しさからの涙だった。
そして、どちらからともなく近寄ってキスをした。
それはちょうど一番てっぺんに来たあたりで、夕日に照らされながらの誰に見られることもない、初めての二人だけのキスだった。
腰を抜かしてしまったらしい蓮さんに肩を貸しながら歩いて行くと割れた窓から突き出る大量の腕。
下半身がなく這いずり回る死体、天井から降ってくる謎の肉塊。通り過ぎる影。
ことごとく蓮さんに悲鳴を上げさせ最後は完全に歩けなくなり泣きじゃくる蓮さんをお姫様抱っこし(背が高ければ背負ったりしたがそれも出来なかった)腕が限界を迎えた辺りでようやくゴールを迎えた(一応蓮さんの名誉のために言っておくがそんなに重くはなかった。あと柔らかかった)
日の光を浴びてようやく落ち着いたのかしがみついたままではあるものの泣き止んだ蓮さんと共に後続の宗介と絵里さんを待つ。
5分ほどして若干顔が引きつっている絵里さんとなんだかご満悦な様子の宗介が出てきた。
「いや、蓮、ほんとごめん…ここまでとはおもわなかったよ…」
その言葉でフラッシュバックしたのかまたもや泣きじゃくりながら絵里さんをポカポカと叩きながら文句を言う蓮さんになされるがままだが、いつもより余裕がない感じでちょっと震えてる絵里さんを見て宗介に何があったか聞いてみる。
「いや、ぶっちゃけあれ怖すぎね?」
「わかる。蓮さんがああなってなかったらマジでびびりまくる自信があったし」
「こっちも似たような感じだったわ、絵里さんにしがみつかれてなかったら冷静に見てらんなかった」
自分より慌ててる人間ってやつだ。僕の場合蓮さんがあれだったのでもはやびっくりしてる暇すらなかった。
その後女性陣が落ち着くまでの間、まるであやすかのように僕と宗介でジュースやらアイスやらを買いに行ったりトイレまで連れて行ったりして、どうにか30分ほどで落ち着いてもらえた。
「絶対に許さない」
「ごめんってー」
「絵里だけじゃなく類君もだからね」
「あはははー、ここまでとは思わなかったんですよー。軽く怖がってる蓮さんが見れるかなーって」
「軽くじゃないよ!私おばけ嫌いって最初に言ったじゃん!」
言ってたから連れてきたんだけど、それを言ったら火に油なので黙っておく。
「ま、まあ気を取り直して時間も時間ですし最後の締めに行きましょうか!」
宗介が無理矢理割り込み場をとりなす、よくやった、今回は完全にこっちが悪いから何も言えないからね。
「締めってなにさ」
「締めって言ったらやっぱあれっすよ、観覧車!」
当初から予定していた通り観覧車へと向かう。ふてくされたままだった蓮さんだったが観覧車を見て少し機嫌が直ったようだった。単純といったらまた不貞腐れるので黙っていよう。
「今なんか思ったでしょ」
「いえ、なにも?」
「絶対思ってた、単純とか思ってそうな顔してた」
そんなに顔に出ただろうか。こう言う時だけ勘がいいから困る。
「ままっ、ここは喧嘩せず仲良く行きましょうよ!それじゃお二人さんからどうぞ、俺らは次乗るんで!」
宗介に押し出されるような形で観覧車に乗り込むがまたもや蓮さんは不貞腐れたままだった。
少しの間二人きりの空間に沈黙が流れる。
「蓮さん」
「なに」
「今日は楽しかったです。まあお化け屋敷はやりすぎでしたが、色んな蓮さんが見れて僕は楽しかったです。蓮さんはどうでした?」
「たのし…かったけど」
「じゃあよかった。お化け屋敷に関してはお詫びにうちの猫をもふもふすることで手を打ってもらえませんか?」
「にゃんこ!…だ、騙されないからね!」
もう釣れたような気がするけど。
「今度うちに来てくださいよ、宗介たちはなしで、蓮さんだけで。もちろん両親がいる時に。紹介したいですし」
「紹介って、そんな結婚するわけでもないのに」
「あれ、嫌ですか?僕としてはこのまま蓮さんと結婚ーっていうのもいいなあとか思ってたんですが」
これは本音。
正直蓮さんより好きな人が出来ると思えないし、女みたいな僕と男みたいだった蓮さんなら割とお似合いかと自画自賛してたりする。
「いや!そのっ…そこまで考えてなかったっていうか…その…!あっでも嫌じゃないよ!全然!むしろ嬉しいけどその、まだ高校生な訳だし…!」
よかった、振られることはなさそうだ。
「ですね。まだ高校生ですね。でも、予約しててもいいですか?具体的には僕が働き始めて指輪を買えるくらいになったら」
指輪くらいはしっかりと自分のお金で買いたい、そう思うのは変なプライドなんだろうか。
「えーっと、その、うん。こちらこそ、お願いします」
「よかった、断られたらどうしようかと思ってたんですよ。蓮さん、ちょっと外を見ててください」
「外?あっ…キレイ…」
そう、当初の予定通りこの時間の観覧車だと一番キレイに夕日が観れる。そして、夕日に見とれてる蓮さんの首にネックレスを掛ける。
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そして、どちらからともなく近寄ってキスをした。
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