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モデレダの人々
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シロナに捨てられ事件からしばらくがたった。
どうにかこうにか俺の頭のネジも繋がり、正常に近い判断が取れるようになった頃、(親バカは治らないし治さない)モデレダの国境が見えてきた。
ベッサとモデレダの国境は終わりの季節頃(この世界には季節が4つあり、寒くなって生物が凍ったり眠ったりする時期が眠りの季節。少し暖かくなりまた生物が顔を出してくる頃が生まれの季節、さらに気温が高くなり日が長い季節が育ちの季節、また少し寒くなってくる今頃の時期が終わりの季節だ)観光地になるほどだと噂には聞いていたが、これはすごい。
唐突に森を抜けたと思うと、目の前に黄金色に輝く広大な麦畑が飛び込んできて、見渡していると次いで目にするのが一瞬、山が燃えてるんじゃないかと錯覚するような紅色。所々にまだ紅くなりきってない少し黄色い葉などがいいアクセントになり、なるほどこれは絶景だな。
それも、着いた時間帯がよかったのか、夕焼けが山を、小麦をさらに美しく引き立たせる。
少しの間シロナと2人で呆然とその美しい光景を見入ってしまい、日が沈む前に街へ向かわなければと急いで街へ向かう。
街の門まで急いで到着すると、観光客や冒険者が十数人が並んで入国審査を受けていた。
「シロナ、ここがモデレダの入り口になっている街だ。ここからはもうシロナを白髪だからっていじめるやつはいない。だからもう隠れなくていいんだ」
「ほんと?」
「ああ、本当だとも」
「友達できる?」
「もちろんだ。でもボーイフレンドはまだダメだぞ?」
「ボーイフレンドってなーに?」
茶化した感じにいってみたがシロナにはまだ早かったらしい。お父さん安心したよ。
「うーん、シロナが大きくなったらお父さんの敵になる男、かな」
一応、間違っちゃいないだろ?
「お父さんの、敵!シロナがやっつけてあげる!」
その時にやっつけられるのがお父さんになってないことを俺は願っているよ。
多分その頃にはシロナに手も足も出ないからな。俺の未来図、な、情けねえ…。
「シロナは頼もしいな」
そう言って頭を撫でればえっへんとばかりに胸を張る。ああ、こんなに可愛い娘なのにいつかは誰かに取られるのかと思うと、お父さん今から泣き出しそうだよ。
まだ遠い先の話のことを考え凹んでいるうちに俺たちの順番が来ていた。
身分証となるカードを提出するとあっさりと通してくれた。
「お嬢ちゃんもベッサでは大変だっただろうが、ここではゆっくり過ごしてくれよ」
「しばらくはこの街に世話になるつもりだからな。なにかあったら頼む」
「ああ、それが俺たちの仕事だからな。とはいえ問題は起こしてくれるなよ?あんたを取り締まるにはお嬢ちゃんへの罪悪感が酷そうだ」
「安心しろ、娘を悲しませる気はない」
「だろうな、そんだけ娘に懐かれてるなら変な気なんて起きないもんだ」
そもそも変な気を起こすようなやつって娘に懐かれるのか?まあ実の親子ならそういうこともあるのかもしれんが。
話好きの衛兵に手を振って別れ街へと入る。
さすがモデレダ、噂には聞いていたがベッサにはあり得ないほど多種多様な種族が歩いていた。獣人族にあれはエルフか?ドワーフに魔人!?魔人なんて初めて見たぞ…すげえなモデレダ、半分魔鏡みたいになってるぞ。
「色んな人がいるね、みんな楽しそう!」
確かに街を歩いてるものは皆楽しそうにしている。
ここでは本当に人種など関係ないんだな。
「いい街だな、しばらくはこの街で良さそうだ」
「…?旅はしないの?」
そろそろ眠りの季節になるからな。旅をするには寒すぎるし、獣も眠ってしまうから現地で肉を取るのも難しい。だから終わりの季節になると旅人は良さげな街を見つけて滞在することが多い。
どうやったって自然には勝てないからな。
そう説明してやるとわかったようなわからないような顔で「そうなんだー」などと返ってきた。いや、まあここに滞在することがわかってくれたらそれでいいんだけどな。
「あとここにいる間、昼間のうちにシロナには勉強をしてもらう」
「お勉強?」
「そうだ、読み書きだけでも出来るようになってもらう。読み書きが出来れば大人になってから何をするにも楽だからな。それで、その間俺は冒険者の仕事をしてる日が多いだろうから別行動が増えると思う」
「やだ!お父さんのお手伝いするの!お勉強は1人でするもん!」
まあそういうだろうことは予想出来ていたがな。予想出来ても対応出来るかはまた別な話なんだが。可哀想だが甘やかしてもシロナのためにならんからな。
だがしばらく俺と旅を続けるために冒険者としての勉強も必要といえば必要だし、うーむ。どちらが正しい選択なのだろうか。
なら、折衷案と行こう。
「そうだな、ここには生まれの季節になるまでいるから、その間に覚えられないと俺が判断したらいうことを聞いてもらう。それまでは俺と勉強していこう」
そういうとパッと笑顔を輝かせ頷く。
「俺は厳しいからな?」
「うん!お父さんと一緒なら、厳しくてもいーの!」
見ろ、俺の娘がこんなに可愛い。
どうにかこうにか俺の頭のネジも繋がり、正常に近い判断が取れるようになった頃、(親バカは治らないし治さない)モデレダの国境が見えてきた。
ベッサとモデレダの国境は終わりの季節頃(この世界には季節が4つあり、寒くなって生物が凍ったり眠ったりする時期が眠りの季節。少し暖かくなりまた生物が顔を出してくる頃が生まれの季節、さらに気温が高くなり日が長い季節が育ちの季節、また少し寒くなってくる今頃の時期が終わりの季節だ)観光地になるほどだと噂には聞いていたが、これはすごい。
唐突に森を抜けたと思うと、目の前に黄金色に輝く広大な麦畑が飛び込んできて、見渡していると次いで目にするのが一瞬、山が燃えてるんじゃないかと錯覚するような紅色。所々にまだ紅くなりきってない少し黄色い葉などがいいアクセントになり、なるほどこれは絶景だな。
それも、着いた時間帯がよかったのか、夕焼けが山を、小麦をさらに美しく引き立たせる。
少しの間シロナと2人で呆然とその美しい光景を見入ってしまい、日が沈む前に街へ向かわなければと急いで街へ向かう。
街の門まで急いで到着すると、観光客や冒険者が十数人が並んで入国審査を受けていた。
「シロナ、ここがモデレダの入り口になっている街だ。ここからはもうシロナを白髪だからっていじめるやつはいない。だからもう隠れなくていいんだ」
「ほんと?」
「ああ、本当だとも」
「友達できる?」
「もちろんだ。でもボーイフレンドはまだダメだぞ?」
「ボーイフレンドってなーに?」
茶化した感じにいってみたがシロナにはまだ早かったらしい。お父さん安心したよ。
「うーん、シロナが大きくなったらお父さんの敵になる男、かな」
一応、間違っちゃいないだろ?
「お父さんの、敵!シロナがやっつけてあげる!」
その時にやっつけられるのがお父さんになってないことを俺は願っているよ。
多分その頃にはシロナに手も足も出ないからな。俺の未来図、な、情けねえ…。
「シロナは頼もしいな」
そう言って頭を撫でればえっへんとばかりに胸を張る。ああ、こんなに可愛い娘なのにいつかは誰かに取られるのかと思うと、お父さん今から泣き出しそうだよ。
まだ遠い先の話のことを考え凹んでいるうちに俺たちの順番が来ていた。
身分証となるカードを提出するとあっさりと通してくれた。
「お嬢ちゃんもベッサでは大変だっただろうが、ここではゆっくり過ごしてくれよ」
「しばらくはこの街に世話になるつもりだからな。なにかあったら頼む」
「ああ、それが俺たちの仕事だからな。とはいえ問題は起こしてくれるなよ?あんたを取り締まるにはお嬢ちゃんへの罪悪感が酷そうだ」
「安心しろ、娘を悲しませる気はない」
「だろうな、そんだけ娘に懐かれてるなら変な気なんて起きないもんだ」
そもそも変な気を起こすようなやつって娘に懐かれるのか?まあ実の親子ならそういうこともあるのかもしれんが。
話好きの衛兵に手を振って別れ街へと入る。
さすがモデレダ、噂には聞いていたがベッサにはあり得ないほど多種多様な種族が歩いていた。獣人族にあれはエルフか?ドワーフに魔人!?魔人なんて初めて見たぞ…すげえなモデレダ、半分魔鏡みたいになってるぞ。
「色んな人がいるね、みんな楽しそう!」
確かに街を歩いてるものは皆楽しそうにしている。
ここでは本当に人種など関係ないんだな。
「いい街だな、しばらくはこの街で良さそうだ」
「…?旅はしないの?」
そろそろ眠りの季節になるからな。旅をするには寒すぎるし、獣も眠ってしまうから現地で肉を取るのも難しい。だから終わりの季節になると旅人は良さげな街を見つけて滞在することが多い。
どうやったって自然には勝てないからな。
そう説明してやるとわかったようなわからないような顔で「そうなんだー」などと返ってきた。いや、まあここに滞在することがわかってくれたらそれでいいんだけどな。
「あとここにいる間、昼間のうちにシロナには勉強をしてもらう」
「お勉強?」
「そうだ、読み書きだけでも出来るようになってもらう。読み書きが出来れば大人になってから何をするにも楽だからな。それで、その間俺は冒険者の仕事をしてる日が多いだろうから別行動が増えると思う」
「やだ!お父さんのお手伝いするの!お勉強は1人でするもん!」
まあそういうだろうことは予想出来ていたがな。予想出来ても対応出来るかはまた別な話なんだが。可哀想だが甘やかしてもシロナのためにならんからな。
だがしばらく俺と旅を続けるために冒険者としての勉強も必要といえば必要だし、うーむ。どちらが正しい選択なのだろうか。
なら、折衷案と行こう。
「そうだな、ここには生まれの季節になるまでいるから、その間に覚えられないと俺が判断したらいうことを聞いてもらう。それまでは俺と勉強していこう」
そういうとパッと笑顔を輝かせ頷く。
「俺は厳しいからな?」
「うん!お父さんと一緒なら、厳しくてもいーの!」
見ろ、俺の娘がこんなに可愛い。
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