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冒険者ギルド

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  シロナの服選びというクエストを攻略するため俺は冒険者ギルドへと足を運んだ。今回は依頼を発行する側としてだ。

「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」

  受付の女性に声をかけるとシロナは俺にしがみつく力を強くした。やはりこれは早めに人に慣れていた方がいいかも知れないな。

「Bランク冒険者のラントというものだが、今日は依頼を出したいんだ」

  言いながらギルドカードを提出する。依頼を出すにもしっかりとした身分証がないと発行出来ないのだ。

「どのような依頼でしょうか?Bランクでも困るとなると、今の人員では少し厳しいかも知れませんが」

「Bランク、というより、女性限定で依頼を出したいんだ。ランクは気にしないし、年齢も問わない。ただし、女性らしい感性を持っているのと、別な国から来たことが条件だ。依頼の内容は、子供の服選び」

「それはそれは、たしかに難しい依頼ですね。依頼料はどの程度に致しますか?」

「急ぎだからな、その辺を考慮して少し高めの…銀貨2枚でどうだ?」

大体宿屋一泊銀貨2枚なのでこの依頼1つで食いっぱぐれないと考えたら駆け出しから中級者が食いついてもおかしくない値段だ。

「ふふ、よほど大切な娘さんなんですね」

「ああ、大事な娘だよ。せっかくだから可愛い服を着せてやりたいしな、この条件で人はきそうか?」

「そうですね…この件に関して、こちらからお願いがあるのですがいいでしょうか」

「なんだ?」

「割合のいい仕事ですし、私たちギルドの方で目をかけている真面目な駆け出し冒険者の娘がいるのですが、最近チームで問題があったらしく依頼が受けられず困ってるようなのです。その冒険者に指名依頼として出してもよろしいですか?」

「俺が言った条件は満たしてるんだな?」

「はい、隣国のモデレダ国から渡ってきた冒険者ですので娘さん(白髪の方でも)でも大丈夫ですよ」

  小声で言われた白髪という単語に驚く。しっかりと隠れてわからないはずなのだが…。
  内心驚いていると受付嬢は小声で話しを続けた。

「(この国ではほとんど知られていませんが、白髪の人は回復魔法などが強い傾向にあって、聖属性の魔力が大きいんです。なので魔力が判別出来るものにとってはわかりやすいのです)」

「(なるほどな)じゃあその方向で頼む。すぐに行けそうなのか?」

「いつも通りなら、そろそろ薬草採取から戻ってくると思いますので、少しおかけしてお待ちください」

  そう言われてあまり人がいない場所へ腰掛け、辺りを見回す。
  昼から酒を飲んでるもの、適性依頼がなく暇そうにしてるもの、受付嬢を口説こうと躍起になってるバカなど色々な人種がいる。
  いつの間にかシロナは眠ってしまっていた。人が怖いって割には結構図太いなと苦笑してしまう。まあこんな連中を見たら更に人間恐怖症になるかも知れんし丁度いいか。

  そこから半刻ほど待つと恐らく例の冒険者であろう少女が薬草を抱えてやってきた。大体15歳くらいか?
  受付で薬草の受け渡しを完了させると、例の受付嬢が声をかけた。少し驚いた顔をしていてシロナを抱き抱えている俺を見る。少し訝しげに見ていたが会釈をしてやると少し考えた様子で、にこりと笑ってこちらへ向かってきた。

「はじめまして、依頼を受けさせていただいたカーナって言います!よろしくお願いしますね!」

「俺はラント、この子はシロナだ。眠ってしまったようだが、すまないがよろしく頼む」

「任せてください!シロナちゃんの顔を見ても?」

「ああ、ただ、あまりおおっぴらに見せられないんですまんがこっち側から見てくれ」

  シロナを抱き抱え直しカーナに見れるようにする。

「なるほど、それで私に指名依頼だったんですね。なんで声がかかったかわからなかったですけど、納得しました」

 シロナの髪を見て納得したらしく頷いた後、さっそく服を買いに向かうことにした。

「こんなに可愛いのに白髪って言うだけで迫害されるなんて、おかしいですよね。あ!もちろん可愛くなければいいって意味じゃないですよ!」

  服屋に向かいながら周りの人には聞こえないくらいの声で話をする。やはりモデレダ出身だけあって、そう言った差別意識はないようだ。軽く会話を続けていると、シロナが目を覚ましたらしくあくびをしながら伸びをし始めた。

「おはようシロナ」

「お父さん、おはよぅ…!?」

  シロナが俺の隣にいるカーナに気付き、驚いている。

「大丈夫だ、この人はカーナ。シロナの服を一緒に選んでくれる人だ。モデレダ出身でシロナの髪を見ても大丈夫な人だよ」

  そういいながら頭を撫でてやると、少し落ち着いてきたのか、カーナをじーっと見はじめた。

「はじめまして、シロナちゃん。お父さんに可愛い服買ってもらおうね!」

「服…?」

  そういえば、シロナに服を買うことを伝えて無かった。遠慮するだろうと思ってたからな。
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