11 / 26
街とベッサの姿
しおりを挟む
当初の予定通り昼前には森を抜け、整備された道へと出た。シロナが疲れるまでは自分で歩くと聞かないので手を繋いで整備された道を歩く。
そこでふと思ったことがあり俺は頭を悩ませることになった。シロナの髪の色だ。ここはまだベッサ王国の領内だ、シロナの髪の色がバレたら宿屋に泊まることすら出来ない可能性もある。そうなったらさっさと次の街を目指すだけだが、シロナがそれを気に病むかも知れない。
なのでとりあえずシロナにはフード付きのコートを着てもらい頭を隠し、俺が抱き抱えて体が弱いからということにしておくことにした。
なにもわざわざシロナに嫌な思いをさせる必要もないしな。最悪服さえ買ってしまえば他に用事はないしな。普段なら二週間ほど滞在して路銭を稼いでから次の街へ向かうが、ここしばらくの仕事でまだ働かなくてもいいくらいの金はあるため今回はいいだろう。
「シロナ、疲れてるかも知れないが、もしかしたらゆっくりする時間が取れないかも知れない。すぐに次の街を目指すことになるかも知れないが、大丈夫か?」
「ん、大丈夫!お父さんと、一緒なら、元気!」
頭を撫でてやるついでに、街が見えてきたのでそのまま抱っこをする。
もし商店街で売ってくれなくても冒険者ギルドなら誰にでも門を開けているし、ギルドで融通してもらえば問題はないだろう。
抱き抱えたまま、街の門の前に着くと衛兵に声を掛けられた。
「旅人さんかい?なにか身分証のようなものは?」
「ああ、これでいいかい?」
身分証としてギルドカードを渡すと衛兵は頷くとカードを返してくれた。
「Bランクの冒険者なら安心だな、その子は娘さんかい?」
「ああ、少し病弱でね。体調が優れないらしくこのままで、挨拶も出来ずすまない」
「気にするな、娘さんもお大事にな。それじゃ通ってくれ」
衛兵と話している感じ、いい人なんだろうなと思う。あくまでも、俺たち普通の人間にはだが。おそらくシロナが白髪だとバレた瞬間態度を変えるだろう。まったく、俺まで人間不信になりそうだぜ。
勇者と呼ばれる連中だったりしたらベッサの空気も変えられるのかも知れないが、あいにくと俺はただの旅人だ。国へのパイプなんてあるわけもないし、そんな権力も財力もない。残念だが俺の手は遠くまでは届かない、目の前にいるシロナ1人を抱えるので精一杯だ。
きっとシロナ以外にも白髪で生まれてくる子供はいるだろう。だが、その全てを救えるほど俺の手は広くないし、その全てを救おうと思うほど偽善的にはなれない。って言っても、もしシロナのような目に遭っている子供がいたら俺は救おうとするんだろうな、「あの人」がなにも持ってない孤児院から出たばかりの駆け出し冒険者だった俺を救ってくれたように。
まあ、なにはともあれ、シロナの服を買わなきゃな。
そこで俺は重大な問題に行き着いた。そう、可愛い女の子の服など買ったことがないのだ。どんなのが可愛いかなど分かるわけもないし、普段俺が着ている服なんて動きやすいか寒くないかくらいしか考えたことがない。だがそれをシロナに当てはめるのはさすがに…そう思いシロナの顔を覗くとキョトンとした顔で首を傾げていた。うん、可哀想だな。何よりせっかく可愛い娘なんだ、旅の時でもある程度は女の子らしくて動きやすい服を着せてやりたいと思う。
仕方ないな。そう思い賑やかな街の少し外れにある場所を目指す。背に腹はかえられんからな。シロナの練習にもなるし、悪くないかも知れないしな。
そこでふと思ったことがあり俺は頭を悩ませることになった。シロナの髪の色だ。ここはまだベッサ王国の領内だ、シロナの髪の色がバレたら宿屋に泊まることすら出来ない可能性もある。そうなったらさっさと次の街を目指すだけだが、シロナがそれを気に病むかも知れない。
なのでとりあえずシロナにはフード付きのコートを着てもらい頭を隠し、俺が抱き抱えて体が弱いからということにしておくことにした。
なにもわざわざシロナに嫌な思いをさせる必要もないしな。最悪服さえ買ってしまえば他に用事はないしな。普段なら二週間ほど滞在して路銭を稼いでから次の街へ向かうが、ここしばらくの仕事でまだ働かなくてもいいくらいの金はあるため今回はいいだろう。
「シロナ、疲れてるかも知れないが、もしかしたらゆっくりする時間が取れないかも知れない。すぐに次の街を目指すことになるかも知れないが、大丈夫か?」
「ん、大丈夫!お父さんと、一緒なら、元気!」
頭を撫でてやるついでに、街が見えてきたのでそのまま抱っこをする。
もし商店街で売ってくれなくても冒険者ギルドなら誰にでも門を開けているし、ギルドで融通してもらえば問題はないだろう。
抱き抱えたまま、街の門の前に着くと衛兵に声を掛けられた。
「旅人さんかい?なにか身分証のようなものは?」
「ああ、これでいいかい?」
身分証としてギルドカードを渡すと衛兵は頷くとカードを返してくれた。
「Bランクの冒険者なら安心だな、その子は娘さんかい?」
「ああ、少し病弱でね。体調が優れないらしくこのままで、挨拶も出来ずすまない」
「気にするな、娘さんもお大事にな。それじゃ通ってくれ」
衛兵と話している感じ、いい人なんだろうなと思う。あくまでも、俺たち普通の人間にはだが。おそらくシロナが白髪だとバレた瞬間態度を変えるだろう。まったく、俺まで人間不信になりそうだぜ。
勇者と呼ばれる連中だったりしたらベッサの空気も変えられるのかも知れないが、あいにくと俺はただの旅人だ。国へのパイプなんてあるわけもないし、そんな権力も財力もない。残念だが俺の手は遠くまでは届かない、目の前にいるシロナ1人を抱えるので精一杯だ。
きっとシロナ以外にも白髪で生まれてくる子供はいるだろう。だが、その全てを救えるほど俺の手は広くないし、その全てを救おうと思うほど偽善的にはなれない。って言っても、もしシロナのような目に遭っている子供がいたら俺は救おうとするんだろうな、「あの人」がなにも持ってない孤児院から出たばかりの駆け出し冒険者だった俺を救ってくれたように。
まあ、なにはともあれ、シロナの服を買わなきゃな。
そこで俺は重大な問題に行き着いた。そう、可愛い女の子の服など買ったことがないのだ。どんなのが可愛いかなど分かるわけもないし、普段俺が着ている服なんて動きやすいか寒くないかくらいしか考えたことがない。だがそれをシロナに当てはめるのはさすがに…そう思いシロナの顔を覗くとキョトンとした顔で首を傾げていた。うん、可哀想だな。何よりせっかく可愛い娘なんだ、旅の時でもある程度は女の子らしくて動きやすい服を着せてやりたいと思う。
仕方ないな。そう思い賑やかな街の少し外れにある場所を目指す。背に腹はかえられんからな。シロナの練習にもなるし、悪くないかも知れないしな。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」
公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。
血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
私、実は若返り王妃ですの。シミュレーション能力で第二の人生を切り開いておりますので、邪魔はしないでくださいませ
もぐすけ
ファンタジー
シーファは王妃だが、王が新しい妃に夢中になり始めてからは、王宮内でぞんざいに扱われるようになり、遂には廃屋で暮らすよう言い渡される。
あまりの扱いにシーファは侍女のテレサと王宮を抜け出すことを決意するが、王の寵愛をかさに横暴を極めるユリカ姫は、シーファを見張っており、逃亡の準備をしていたテレサを手討ちにしてしまう。
テレサを娘のように思っていたシーファは絶望するが、テレサは天に召される前に、シーファに二つのギフトを手渡した。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる