異世界漂流記

稀人

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ここはどこだろう?

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唐突だった。前触れや予兆なんてなにもなく僕ら6人は樹海と呼ぶのに相応しいような場所にいた。

つい先ほどまで学校にいたはずで、帰る途中でカラオケにでも行こうとか話しながら校門を抜けた瞬間だった。

「えー、えー?どこ、ここ?」

「夢?」

「抓ってみたけど普通に痛いよー」

「あれだよあれ、今流行りの異世界転移ってやつ!」

「マジ?」

「他に考えられるのは?」

「拉致?」

「誘拐してこんなとこに捨てるか?」

「集団催眠とか」

「それはそれで面白そうだからよし」

「待って、とりあえず状況整理しようよ」
そう、状況整理をしよう。
僕は柳渚ヤナギナギサ年齢17才で高校三年生、身長172cm体重62kgっと、とりあえず記憶喪失とかはなさそうだ。

「校門を出たらここだったって僕は思ってるんだけど、みんなは?」

「私も同じく」

「おなじーく」

全員同じ認識らしい。ってことは拉致とかではない。

「やっぱ異世界じゃね?」


「沖田はすぐそうやって…厨二もほどほどにしないともう高校卒業だよ?」


異世界だと騒いでいるのが沖田学オキタマナブ、オタク趣味で色々と軽い。言葉も軽いし頭も軽い。バカではないけどお調子者。


呆れたような顔をしてるのが鹿波結衣カナミユイ、気さくな性格で日によって髪型を変える拘りがある。今日はポニーテールの気分だったらしい。


「異世界かも」


「え?朱奈も?」


「だって、放課後だったのに、明るい」


「確かにそうだ、ちょっとイメージとは違ったが異世界転移?ってやつなのか?」


この特徴的な喋り方は赤城朱奈アカギシュナ天然すぎてクラスで浮きそうなところを鹿波に保護された(本当にいろんな意味で保護された)。


そして冷静なのが鳴瀬修二ナルセシュウジ何故かウマがあって高校一年の時からの付き合いだ。


「おにぃはどう思うー?」


そしてこの緩い生物が僕の双子の妹である柳静流ヤナギシズル。兄の贔屓目を無くしても顔はいいと思う。もうちょっとしっかりしてほしいところだけど。


「僕もまあ、日本ではないと思うよ。だってこんな大きな木見たことないし」


周りを見渡す限り大量の樹木に覆われているが、どれもこれも本当に大きい。30mくらいあるんじゃないか。


「まあ、異世界でもなんでもいい。そんなことより、これからどうするんだ?」


「携帯はー?」

「もちろん圏外」


「ですよねー」


口々に色々と言い合うが好き勝手言っているせいで話がまとまりそうにない。


「とりあえず、沖田、お前こういうの好きだろ?これからどうすべきだと思う?」


「んー、まあアニメとか小説ならここからチートに目覚めてーとかなるんだけど、なーんかそういう系じゃなさそうだし?とりあえずは寝床と飯の確保?」


「沖田にしてはまともね…」


「いやー、俺だって二次元と三次元の区別はつくって。てか、食わんと死ぬし寝れないと動けなくなるし」


沖田の提案で全員のバッグから食料や飲み物を出し合う。


菓子パン2つにおにぎりが1つ、お菓子が少々と朱奈の持っていた飴が大量。飲み物が各自500mペットやら水筒の余り。どうやっても一回分の食事にしかなりそうにない。


「まさかの一番多いのが飴ってどうなん?」


「いや、悪くないぞ。日持ちするし最悪糖分だけは確保できるってことだ」


「役に、立った?」


「一番の功労者だ」


「やったぜ、ぶい」


「朱奈…かわいい…」


「落ち着け妹」


「止めるなおにぃ、私にはやらなきゃいけないことがあるんだ…!」


「やってる場合じゃあないんだって」


そう、そんなことをやってる場合じゃない。これから、元の場所に戻れるかもわからないこんな森の中で一回分の食事しかないという絶望的な状況で生きなければならないのに体力を使ってる場合ではない。


「そうだ、誰ぞこの中に女子力に自信のある者はおるか?いや、悪い。いないよなぁ…」


「は?」


「んー、裁縫道具とか編み物する糸持ってないか?」


鹿波に睨まれても動じず言い切るところは素直にすごいと思うぞ沖田。

でもなんでわざわざ敵に回すような言い方をする。一言多いといつも言われているだろうに。


「裁縫道具なら一応あるわよ」


「さすがかなみん。え?私?あるわけないじゃーん。おにぃなら持ってると思うよー」


「持ってるけどさ。何に使うのさ?」

鹿波が持ってなかったらすごく言い出しにくかった。


「なんかの漫画で見たんだけど、こうやって木に結び付けて、んでこの端を持って歩いていけば迷わないってやつ。これを持って2チームに分かれて近くを探索してみようぜ」


「沖田のオタク趣味もこういう時に役に立つわね、見直しはしないけど」


「いや見直そうぜ」


「こういう時しか役に立たないじゃない」


「こういう時が来たからいいじゃん」


「う、うーん確かにそうなんだけど…」


まあなんとなく見直したくないのもわかる気がするけど。


沖田の提案通り糸の伸びる範囲で探索をすることにした。


わかったことは変わらない風景と糸って50mも進めないんだなってことだけだった。
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