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第二章
第27話 とどけもの
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困難なミッションをこなし、無事部室に戻ってきた3人を迎えるアンドレ。
「お帰りなさい。どうでしたか?」
心配そうなアンドレに久子が指でVサインをしてみせる。
「バッチリ成功だよ! 1年生だけだけど、それでも6クラスで70人以上を検査できれば何人か有望なのがいるはずだよ」
「おぉ、それは良かった… それはそうと不二子先生とは揉めなかったんですか?」
アンドレの心配の根源はそこにあった。マジボラと不二子との関係を今以上に拗らせられると、アンドレの活動にも小さくない支障が現れるからだ。
「一時はどうなるかとハラハラしたけど、つばめちゃんのおかげで何とかなったよ」
「え? いえそんな、わたしは何も…」
アンドレはその2人のやりとりで大体の流れを把握できた。大方睦美が全てをぶち壊そうとした所で新人であるつばめの『お願いアタック』が炸裂したという感じだ。そしてその予想は概ね間違っていなかった。
「ふぅ… 今日は魔王の手下に不二子の相手と無駄に疲れたわ。もう今日は何もする気が起きないから帰って寝る…」
それだけ言うと睦美は眠そうに大欠伸をして、挨拶も無しに部室を出て行ってしまった。慌てて久子も睦美の後を追う。
「じゃあ私達は帰ります。つばめちゃんもお疲れ様。アンドレ先生、またね!」
部室を出る直前に久子が振り返り、大きく手を振りながら去って行った。
部室に2人残されたつばめとアンドレ。つばめは突如電気が走るかの様な、最強マックスな危機感を覚えた。
狭い室内で男女が2人きり、しかも男の方は名うてのプレイボーイ、女の方は純情可憐で一点の穢れもない乙女(自称)だ。
この状況、紛れもなく男は狼で乙女のピンチでSOSである。
「つばめくん…」
「は、はいっ! 何ですか? 変な事しようとしたら大声出しますよ?! て言うか、わたしも帰りたいんですけど?」
つばめは両手チョップで防御姿勢をとる。命に替えても貞操だけは守らなければならない。
「…そんなに警戒しなくてもいいよ。僕は未成年、しかも貧乳の子には絶対に手を出さないからさ」
つばめを安心させようというアンドレの微笑み。優しい気持ちから出た言葉であったが、その言葉は余計につばめを傷つけた。
そんなつばめにお構い無しにアンドレは話を続ける。
「睦美様の事だけど、もしかしてワガママで高慢ちきな人だと思ってるかい?」
アンドレに問われたものの、つばめは回答に詰まる。2人の内密な話なのか、後からそれが睦美や久子に報告されるのかが判断付かなかったからだ。
「あれでも昔はもっと輝いていてね、『清く正しく美しく』を絵に描いた様な高潔な女性だったんだよ…」
アンドレの真意が読めない以上、つばめとしてもリアクションが取りづらい。ただ、睦美の過去の逸話に関しては興味が無いわけではない。
特に『清く正しく美しく』生きていた少女が、何があったらあそこまでヤサグレてしまうのか? はとても知的好奇心を刺激する物がある。
「家臣の僕が言っても説得力無いよね? じゃあ届け物ついでにもうちょっとだけ付き合って貰えるかな…?」
アンドレにそう言われて、つばめは再び保健室の前まで連れられて来ていた。廊下に湿布その他がまだ置かれており、先程の様な男子生徒の行列は出来ていない。
「僕の言葉は胡散臭いかも知れないけど、今し方まで睦美様とケンカしていた不二子先生の言葉ならどう受け止めるかな? と思ってね」
アンドレは楽しそうに保健室の扉をノックする。中から「どうぞ」の声を待ってアンドレとつばめは中に入る。
「あらアンドレ先生、どうされました? デートのお誘いでしたら2万年先まで埋まってましてよ?」
「そりゃ残念、でも今度の日曜日辺りにキャンセルが出そうなんじゃない? 僕の予定なら空いてるよ?」
慣れた感じの大人の男女の会話に入っていけないつばめ。と言うか、アンドレは誇張無しにプレイボーイの様だ。
「週末の予定はともかく、若い女の子連れて別の女の所に遊びに来るほど野暮な人じゃないでしょ? 何の御用?」
不二子も長い付き合いの為かアンドレの事をよく知っている。つまり不二子にモーションをかけてくる時とそうでない時の見極めが出来ているのだ。
「まずは睦美様らのお願いを聞いてくれてありがとう。そして頼んでおきながら放置して行った『これ』を持ってきたのさ」
アンドレが懐から取り出したのは、つばめの魔力判定の際に用いたイチジクの葉っぱである。
「そうそうそれよ。こちらから連絡入れるのもアホらしいし面倒くさいから放置してたけど、持ってきてくれたのなら助かるわ」
「それで届け物ついでに君から彼女に睦美様の事を色々教えてあげて欲しいんだ。黄金コンビ時代のね」
『黄金コンビ』という単語に反応し、顔を少し赤らめる不二子。
「昔の事でしょ…? 楽しい話を予想しているなら御期待には応えられないわよ?」
ここまでの観察から、睦美と不二子が反目こそしている物の、口も聞きたくない程に憎み合っている訳では無い事は容易に推し量れる。
「あの、近藤先輩は以前はもっと優しい人だったと聞いたのですが…」
「…まぁ、そうねぇ。ちょっとお茶でも飲みながら話しましょうか?」
そこで見せた不二子の艶っぽい微笑みは、女のつばめですら引き込まれそうな程に美しかった。
「お帰りなさい。どうでしたか?」
心配そうなアンドレに久子が指でVサインをしてみせる。
「バッチリ成功だよ! 1年生だけだけど、それでも6クラスで70人以上を検査できれば何人か有望なのがいるはずだよ」
「おぉ、それは良かった… それはそうと不二子先生とは揉めなかったんですか?」
アンドレの心配の根源はそこにあった。マジボラと不二子との関係を今以上に拗らせられると、アンドレの活動にも小さくない支障が現れるからだ。
「一時はどうなるかとハラハラしたけど、つばめちゃんのおかげで何とかなったよ」
「え? いえそんな、わたしは何も…」
アンドレはその2人のやりとりで大体の流れを把握できた。大方睦美が全てをぶち壊そうとした所で新人であるつばめの『お願いアタック』が炸裂したという感じだ。そしてその予想は概ね間違っていなかった。
「ふぅ… 今日は魔王の手下に不二子の相手と無駄に疲れたわ。もう今日は何もする気が起きないから帰って寝る…」
それだけ言うと睦美は眠そうに大欠伸をして、挨拶も無しに部室を出て行ってしまった。慌てて久子も睦美の後を追う。
「じゃあ私達は帰ります。つばめちゃんもお疲れ様。アンドレ先生、またね!」
部室を出る直前に久子が振り返り、大きく手を振りながら去って行った。
部室に2人残されたつばめとアンドレ。つばめは突如電気が走るかの様な、最強マックスな危機感を覚えた。
狭い室内で男女が2人きり、しかも男の方は名うてのプレイボーイ、女の方は純情可憐で一点の穢れもない乙女(自称)だ。
この状況、紛れもなく男は狼で乙女のピンチでSOSである。
「つばめくん…」
「は、はいっ! 何ですか? 変な事しようとしたら大声出しますよ?! て言うか、わたしも帰りたいんですけど?」
つばめは両手チョップで防御姿勢をとる。命に替えても貞操だけは守らなければならない。
「…そんなに警戒しなくてもいいよ。僕は未成年、しかも貧乳の子には絶対に手を出さないからさ」
つばめを安心させようというアンドレの微笑み。優しい気持ちから出た言葉であったが、その言葉は余計につばめを傷つけた。
そんなつばめにお構い無しにアンドレは話を続ける。
「睦美様の事だけど、もしかしてワガママで高慢ちきな人だと思ってるかい?」
アンドレに問われたものの、つばめは回答に詰まる。2人の内密な話なのか、後からそれが睦美や久子に報告されるのかが判断付かなかったからだ。
「あれでも昔はもっと輝いていてね、『清く正しく美しく』を絵に描いた様な高潔な女性だったんだよ…」
アンドレの真意が読めない以上、つばめとしてもリアクションが取りづらい。ただ、睦美の過去の逸話に関しては興味が無いわけではない。
特に『清く正しく美しく』生きていた少女が、何があったらあそこまでヤサグレてしまうのか? はとても知的好奇心を刺激する物がある。
「家臣の僕が言っても説得力無いよね? じゃあ届け物ついでにもうちょっとだけ付き合って貰えるかな…?」
アンドレにそう言われて、つばめは再び保健室の前まで連れられて来ていた。廊下に湿布その他がまだ置かれており、先程の様な男子生徒の行列は出来ていない。
「僕の言葉は胡散臭いかも知れないけど、今し方まで睦美様とケンカしていた不二子先生の言葉ならどう受け止めるかな? と思ってね」
アンドレは楽しそうに保健室の扉をノックする。中から「どうぞ」の声を待ってアンドレとつばめは中に入る。
「あらアンドレ先生、どうされました? デートのお誘いでしたら2万年先まで埋まってましてよ?」
「そりゃ残念、でも今度の日曜日辺りにキャンセルが出そうなんじゃない? 僕の予定なら空いてるよ?」
慣れた感じの大人の男女の会話に入っていけないつばめ。と言うか、アンドレは誇張無しにプレイボーイの様だ。
「週末の予定はともかく、若い女の子連れて別の女の所に遊びに来るほど野暮な人じゃないでしょ? 何の御用?」
不二子も長い付き合いの為かアンドレの事をよく知っている。つまり不二子にモーションをかけてくる時とそうでない時の見極めが出来ているのだ。
「まずは睦美様らのお願いを聞いてくれてありがとう。そして頼んでおきながら放置して行った『これ』を持ってきたのさ」
アンドレが懐から取り出したのは、つばめの魔力判定の際に用いたイチジクの葉っぱである。
「そうそうそれよ。こちらから連絡入れるのもアホらしいし面倒くさいから放置してたけど、持ってきてくれたのなら助かるわ」
「それで届け物ついでに君から彼女に睦美様の事を色々教えてあげて欲しいんだ。黄金コンビ時代のね」
『黄金コンビ』という単語に反応し、顔を少し赤らめる不二子。
「昔の事でしょ…? 楽しい話を予想しているなら御期待には応えられないわよ?」
ここまでの観察から、睦美と不二子が反目こそしている物の、口も聞きたくない程に憎み合っている訳では無い事は容易に推し量れる。
「あの、近藤先輩は以前はもっと優しい人だったと聞いたのですが…」
「…まぁ、そうねぇ。ちょっとお茶でも飲みながら話しましょうか?」
そこで見せた不二子の艶っぽい微笑みは、女のつばめですら引き込まれそうな程に美しかった。
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