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 ーー
 たとえどんな身分のものでも法の前では平等であり絶対ーーつまり、そんな裁判で明らかになったことは、たとえ国王が秘匿したい情報であってもにはならない。
 つまり、裁判をして先代のバルシュミーデ侯爵が「王妃である娘が、第二王子を暗殺しようとして失脚してしまったため、再起を図ろうとして今回の誘拐事件を思いついた」などと証言してしまえば、どんな権力を使ったとしてもことはおおやけになってしまうのだ。
 それは今の王家にとって少々都合が悪い。

 ーーつまり、この事件はにするしかないのだった。

「……じゃあ、アイツらは何も無し父ちゃんが気が付かなかったら姉ちゃんは誘拐されてたかもしれないのに?」

 ザームの少し怒っているような口調に、ヴァルムは苦笑いを浮かべながらオリバーと視線を交わし合う。
 もしかしたら似たような憤りを二人も感じていたのかもしれない。

「ーー裁判が行われないだけで、それなりの処罰は受けます。 ……誘拐自体は未遂なので“それなり”ではありますが……ーーボスハウト邸に対しては家宅捜索令状まで偽造していたとのことですので、内内ではありますが、決して軽くはない罰が下るかと……」

 ヴァルムの説明にリアーヌは頬を引きつらせながら呟く。

「ーー本物を準備するところが用意した『偽物』……もはや本物……」
「ーーそうでございますね。 見た目の上ではなんの違和感も無かったことでしょう……」
「ヴァルム殿のギフトに反応があれば……?」

 ゼクスが伺うようにたずねるが、ヴァルムはその言葉にキュッと眉をひそめた。

「ーーそれでも書類の真偽まで見抜けるかどうか……罪名に違和感を感じるのは当たり前ですので……」
「あー……」

 どこか悔しさを滲ませたヴァルムの言葉に、ゼクスは返す言葉がすぐには見つからず、言葉を濁しながら鼻を擦るように触れる。

「……持ってきた騎士がはっきり『この書類は本物で偽造などしていない』って宣言してくれりゃ反撃のしようもあるんでしょうけどーー……そんな書類持ってこられた段階で、目標は『お嬢様を一人にしない』や『どんな手段を使ってもすぐさま取り返す』にシフトすると思うんで……騎士とやり合うことは避けそうですよねぇ……?」
「そうですね……ーー現実的な案としては……なるべく時間を稼ぎ、オリバーを王城へ走らせ、事情を把握するーーあたりでしょうか? もちろんアンナか私の同行は必須条件として……」
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