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 それから数日ーー
 ラッフィナート商会への悪い噂は全くと言っていいほど聞かなくなり、リアーヌへの「泥棒」だの「権力を使って……」などと言う陰口を言う生徒たちも少しづつ少なくなっていた。
 しかしーーゼクスとリアーヌは相変わらずまともな会話をしておらず、二人の間にはギクシャクとした空気が漂っていた。
 そんな二人を見てなのか『両家は婚約の解消をしようとしている』というウワサだけは、根強く残り人々の口に登り続いていた頃ーー

 リアーヌたちはお馴染みとなったいつもの中庭のベンチで、本日はカフェテラスで買ったおしゃれなクロワッサンサンドを齧っていた。
 ーーというのも今日はリアーヌとビアンカの他にもう一人ベンチに座り、ニコニコと楽しそうにパンを食べている人物がいた。

「……レジアンナ、美味しい?」
「ええ! やっぱりクリームチーズの方にして正解だったわ」
「なら良かったわね?」

 満足そうに頷くレジアンナに、リアーヌとビアンカは顔を見合わせてホッとした様に肩をすくめ合う。
 いつもは友人たちとカフェテラスやサロンで昼食を取るレジアンナだったが、今日は、いつもビアンカとリアーヌが昼食を食べている中庭が気になった様で「私も一緒食べたいわ!」と言い出したのだ。
 ビアンカたちも、外で食事をさせて何事かあってしまったら……!と「……日差しが少しありますよ?」や「ベンチそんなに無いよ……?」と、なんとかやんわりと断ろうとしたのだが、レジアンナの意思は固く「少しの日差しは気にしないわ! 席は……私だけなら平気でしょう⁉︎」と中庭で昼食を取るのだと、一歩も譲らなかったのだ。

「……なんかカフェテラスのパン食べてると、いつもよりオシャレな空間になった気がするね?」

 リアーヌはいつもより大勢のメイドたちが並ぶ廊下に視線を走らせながら、クスリと笑ってビアンカに話しかける。

「ーー普段はなんの変哲もないサンドイッチやメロンパンなんかですものね?」
「美味しいしすぐ買えるけど、おしゃれさだけは無いもんねぇ?」
「そうね?」
「ーー普通のサンドイッチも素敵じゃ無い? ここで食べたらピクニックみたい!」

 キラキラと目を輝かせて無邪気に笑うレジアンナに向けていた視線を眩しそうに細めながら、リアーヌはビアンカに肩をすくめて見せる。

「ーー“物は言い様”ってこういうことなのかな……?」
「そう思えばそうなっていたのかもしれないけれど……ーーここで食べるようになったのは、私たちの横着が全て、みたいなところありますものね……?」

 リアーヌはビアンカの言葉にクスリと笑いながら同意するように頷いた。
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