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「うちはそっちの要望を全面的に売れ入れる用意があるーー元の騒動はうちとフォルステルのものだと思う……だから気にせず希望を言ってくれ」

 サージュのその言葉に少しだけ嬉しそうな表情を浮かべたグラントたちに、リアーヌはこの婚約が凍結される可能性がグッと高まったのを感じ取った。

(ーー凍結がどんなものなのか知らないけど……ーーそうなっちゃってもしょうがないのかなぁ……だって元々……ってか現在進行形でガチガチの政略結婚だし……しかも今回ラッフィナートが巻き込まれた原因は、私と婚約してたからーーでしょ? なら……一旦凍結ーーって言われても仕方がないのかなぁ……ーー凍結しても私の外聞には傷が付かないらしいし……ーーなら、そこまで悪いことじゃ無いーーのかも……?)

 リアーヌはズキズキとした痛みを訴える心を押し殺すように大きく息を吸い込んだ。
 そして忙しなく視線を交わし合うラッフィナートのゼクス以外の人々と、無言でそのやり取りを見つめジッとその決断を待つ両親をチラチラと見つめていた。
 ーーそんな中、それまでほとんど無言だったゼクスが真っ直ぐにリアーヌを見つめたまま口を開く。

「ーーリアーヌは……どう思ってる?」
「私は……」

 そう答えながらチラリと周囲に視線を走らると、必死に考えを巡らせているゼクスの祖父母や父親が見えーー咄嗟に「イヤだ」という言葉を読み込んだ。
 そして、無理やり笑顔を貼り付けながら口を開いた。
 リアーヌが考えるを答える為にーー

「……仕方がないと思います。 ーーだってこの婚約は……だと思うので……」

 そう答えながらも笑顔を保つことが難しくなったリアーヌは、そのまま俯き膝に乗せていた手をギュッと握りしめた。

 ーーだからこそ気が付かなかった。

 その答えを聞いたゼクスが、泣き出しそうな子供のようにその顔を歪ませたことをーー
 そしてすぐさま表情を取り繕うと、リアーヌと同じように、自分に求められているであろう言葉を口にした。

「そっかぁ……ーーそうかもね? 俺は父さんたちの決定に従うよ」

 そう答えながらゼクスはスッと立ち上がり部屋を出ようと応接室のドアまで歩く。
 ドアの前まで来るとクルリと振り返り、ニコリと笑いながら言葉を続けた。

「ーーだと思うから?」

 そう言うと、ほんの一瞬だけリアーヌを見つめるが、その表情はすぐに硬く凍りつき、そのままフイ……と部屋を出ていってしまった。
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