成り上がり令嬢暴走日記！

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「ーーつまり最初の説得の段階で、それを信じるに値する“なにか”があったってことだろう？」
「その……ーーその人はユリアのこと色々知ってて！　それに私の家族のことも色々調べてて……だから」
「ーーだから言葉だけで信用した？　あー……じゃあどんな人物だった？　服装は？　背格好ーー髪の色や目の色は？　性別は男だよね？　そのひとは馬車でやって来たのかな⁇」
「その……動揺してたのであまり……ーー黒っぽい服を着た男性だったと……」
「ーー……申し訳ないけれど、今の君を保護することはできない」
「そんな……！」
「貴族にとっては証拠が全てなんだ。　文句をつけて証明されなかったら、誹りを受けるのはこちらのほうなんだよ」
「証拠……」
「ああ。　君や君のご家族を保護して、フォルステル家がおとなしく引き下がるだけの証拠が無いと無理だ。　ーー相手は確実に王妃の力も借りようとするだろうからね？」
「……ぇ？」

　ゼクスの言葉にベッティはキョトンとした表情を浮かべる。

「ーーだって君はそう言われて脅されたんだろう？」
「ーーぁ、はい……そう、です」
「……だから証拠は必須だ。　二つ目はーーケジメだと思ってほしい」
「ケジメ……」
「ああ。　どんな理由があろうとも、君はリアーヌを悪者に仕立てた事実は変わらない。　そんな人物を『助けを求められたから』なんて理由だけで保護するわけにはいかないんだ」
「それはーー……そう、ですよね……？」

　この時になって、ようやくベッティは気まずそうな視線をリアーヌへと向けた。

「ーーけどね？　平民の君が貴族に脅されたのが証明できるのであればそれは気の毒な話だと思うんだ？　だから……少し思い出してみてくれないかな？　俺が手を貸せるように……」

　そう優しく微笑んだゼクスの瞳は、赤く怪しく輝いていたーー

（……え？　魅了を使っていらっしゃる……？　ーーは？　理由はあるにせよ私はこの子に犯人に扱いされたわけですがその辺りはどのようにお考えで？　同情するにしたってやり過ぎだと思いますけど⁉︎）

　リアーヌが笑顔を引きつらせているその隣では、ゼクスのギフトにしっかりと魅了されたベッティがうっとりとした眼差しをゼクスに向けながら甘い声を出していた。

「助けて、くれるんですね……？」
「ーー証拠があれば、ね？」
「証拠……」
「うん。　じゃあ、話の続きはそれが見つかったらってことで……」
「はい！　あ、ありがとうございました！」

　そう言いながらゼクスにだけお辞儀をして見せるベッティ。

「ーーうん。　気にしないで……？」