成り上がり令嬢暴走日記！

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「それはそれとして……何個か買って行ってデザートにしても良いんじゃないかな？　この甘さならみんな喜ぶと思うし」
「ですね！　じゃあ……二十個ぐらい……？」

　リアーヌの発言に店員が「にっ⁉︎」と驚愕の声を上げ、ゼクスもギョッと目を剥く。
　ーーそして護衛たちは（いったい誰がその荷物を運ぶのだろう……？）と顔色を悪くしていた。

「流石に多すぎない⁉︎　一人に一つの計算になっちゃうよ⁉︎」
「でも殆どが男の人ですしーーそのぐらい食べちゃいません？」
「……若い男の平均値がザーム様だと思ってる……？」
「……それじゃ十個？」
「それでも多いと思うけどーーまぁ、船員たちに差し入れたって良いし、宿に渡すことも出来るか……」

　その呟きを拾った店員はキラリと目を輝かせながらゼクスを見つめた。

「ーーおや？　もしかしてご同業界かい？」
「……実は買い付けでこの国に」
「んじゃ、果物関係は声かけてくれよ、今は持ってきちゃいねぇが、日持ちするジャンボメロンも他の日持ちする果物も、たんと取り扱ってんだよ」
「今回は場所の問題で取引できるか分かりませんが、次回は必ずご連絡いたします」
「おう！　んじゃ次は向こうのフルーツもたんと頼むぜぇ？」
「ーー任せてください」

　満面の笑みを浮かべながら握手を交わし合う二人。

（こんな短時間で取引することが決まった、だと……？　即断即決すぎる……）

　そんな目を見張っているリアーヌに、満足げな様子の店員が声をかけた。

「嬢ちゃんの着付け、イカしてんなぁ？　特にその髪飾り！　どこで買ったんだ？」
「えっと……ここをまっすぐ行って、右手側のトコの……入り口付近の……？」

　説明しながら、基準となる建物や店の名前を全く知らないリアーヌは、首を傾げながら段々と言葉を小さくしていった。

「ーーここを真っ直ぐ行ったバザールの入り口近くの……ーーおそらく布問屋が出してる店だと」

　リアーヌを助けるように、ゼクスが説明を引き継ぐ。
　その甲斐があってなのか、少し考えた後、店員は首を傾げながら口を開いた。

「布問屋ってことは……ーーばっちゃんが店番してたか？」
「はい。　それと……お孫さんですかね？　男性の店員もいましたよ」
「あー！　分かった分かった！」
「おすすめのお店です！　行ってみてください！」

　律儀に広告塔を全うしようとしているリアーヌに、ゼクスや護衛たちはクスリと小さく微笑みを漏らす。
　そんな反応を訝しんだ店員は、少し眉をひそめながら口を開いた。

「知り合いなのか？」
「いやいや……ーー広告塔になってこのバザールを練り歩くって条件で安くしてもらったので……？」