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「この国ってちょっといびつでね?」
「歪……?」
「うんーー貴族として機能してない貴族が多いんだ」
「……貴族として機能してないってことはーー昔のボスハウト的な感じですか?」
「……それ俺的には否定せざるを得ないけど……?」

 ゼクスはリアーヌの隣に座るアンナに視線を移しながら頬を引きつらせる。

「あ……ーーえっと、周りの人間に騙されて予算とか食い物にされてる感じですか?」
「ーーそもそもお金がないんだ。 事業が失敗したとか、トラブルの賠償金が莫大すぎて支払いきれない……とかね?」
「あらら……」
「そんな貴族に金を持ってる平民が金を出してやるんだ。 さっきの店主もそんなことしてる奴の一人なんだと思う。」
「……? アウレラの貴族は商人から援助してもらえる……?」
「……そんな優しい関係じゃ無いよ? ーー金がないならくれてやる、だからうちの店が有利になるよう取り計らえよ? って後ろで操るんだよ。 ここの貴族もお抱えを作ってそれを保護してるからね」
「……保護されてる店の方が貴族を操る……?」
「――そんな貴族や商店、資産家が一定数いるんだ」
「……え、国としてはノータッチですか? そんなの階級制度の崩壊の第一歩ですよ?」
「この国の王様の考えは分からないけど……そこに手を出そうとしたら、決して無視できない数の貴族がお取り潰しになるわけで……ーーそう簡単には手が出せないんじゃないかなぁ?」
「……そういう首の回らなさっぷりも昔のうちみたいですね……?」
「ーーだから俺は絶対に同意できないんだって……!」
「あ……」

 ハッと口を押さえたリアーヌはチラリと隣のアンナに視線を走らせた。
 アンナは困ったように「昔のことでございますから……」と言いながら微笑んで見せた。

「もちろん名実ともに貴族ーー金回りのいい家も沢山あるし……ーーディスティアスにもそんな関係の貴族や商人がいないわけでもない……ーーただこの国は……そんな話がちょっと多いんだよね」
「……あの人、全力で煽ってきましたもんね?」
「俺だって男爵とはいえ現役の貴族、それに加えてラッフィナート商会の跡取りだろ? ……あんな扱い受けるとは思って無かったよねー……」
「ーー思いっきりナメられてましたね?」

(……まぁ、ナメられてたのは私も、だけどー)

 その言葉に頷きながらため息と共に肩を落とすゼクス。
 しかしすぐさま大きく息を吸い込むと、その口元をニヤリ……と大きく歪ませる。

「ーーでも! リアーヌのおかげで大満足の取引が出来て大満足だよー! ちょっとナメられたぐらいであの値段まで落とせるなら、あと二、三回ナメて欲しいぐらいだね!」
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